AIやビッグデータで激変するまちづくり~内閣府スーパーシティ構想の行方(前)
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(株)ミチクリエイティブシティデザイナーズ
代表取締役社長 河野 通長 氏AI(人工知能)やビッグデータの活用で、まちが大きく変わるといわれている、内閣府の「スーパーシティ構想」を始め、自動運転や省エネ、スマートホームなどの「スマートシティ」のプロジェクトが活発化しているが、まちづくりはどのように変わるのだろうか。スマートシティの業界で動向を見つめ続けてきた、(株)ミチクリエイティブシティデザイナーズの代表取締役社長・河野通長氏に聞いた。
失望に終わった第一次スマートシティブーム
――AIやビッグデータを活用したまちづくりが、動き出していますね。
河野 内閣府や国土交通省の主導で、スマートシティプロジェクトが活発化しています。しかし、今回の「第二次スマートシティブーム」の前に、2008年ごろからの「第一次スマートシティブーム」があり、当時の私は(株)日立製作所でスマートシティプロジェクトに携わっていました。このときは、技術ありきで使い道を考える“技術主導”で、企業は自治体に技術を提案し、ブームは一時的な盛り上がりを見せたものの、結局は失望のうちに終わりました。政府主導の下での、省エネなどの技術の実証都市止まりだったからです。
住民が省エネできる仕組みに、「ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)」があります。これは電気などの自宅のエネルギーを“見える化”するもので、最初は無駄が減るなどの効果が表れます。ところが、ある程度無駄がなくなると、今度は住民の関心が薄れてきて、次第に効果が出なくなるといわれています。さらに、マンション家賃は省エネ設備があっても高くはできず、不動産会社は省エネシステムの投資が回収できないことが課題になります。
電子政府などの行政IT化も、データ共有でコストが下がり、サービスの質が上がるといわれています。しかし、IT投資しても税収入は増えず、業務効率化しても公務員数を減らせないので、結局のところ、導入した行政側には目に見えるメリットが出ないのです。
2010年から北九州市を始め4都市で行われた、経済産業省の再生可能エネルギー発電や蓄電池などのスマートシティプロジェクトも、政府の補助金による5年の実証期間が終わると、実際のビジネスにつながらないという事業化の壁があり、止まってしまいました。今回のスーパーシティ構想や国土交通省のスマートシティプロジェクトも、同じリスクがあるといえます。
海外では最先端の技術主導のスマートシティが行き詰まり、住民主導で問題解決型のまちづくりに変わりました。AIなどの最先端技術を使って、人口減少などの課題を解決する「住民中心」が謳い文句のスーパーシティ構想ですが、中身を見ると、ほぼ住民中心の構想ではありません。「住みたいまち」は人それぞれですが、住民の声を取り入れることが必要です。住民のニーズを解決するために、行政や住民、企業、大学が話し合い、AIやビッグデータを活用しなければ、人が住みたいまち、人が集まるまちにはなりません。このままでは、限られた都市の実証実験止まりで、広がらないことも懸念されます。
(つづく)
【石井 ゆかり】
<PROFILE>
河野 通長(こうの・みちなが)
1948年、東京生まれ。72年に東京大学工学部精密機械工学科を卒業後、(株)日立製作所に入社。生産技術研究所にて産業用ロボット、自動化技術開発に従事。情報システム事業部長や都市開発事業創生プロジェクトリーダーを経て、2010年にスマートシティプロジェクト本部主管技師長に就任。13年11月に日立製作所を退社し、(株)ミチ クリエイティブシティ デザイナーズを設立。代表取締役社長に就任して現在に至る。関連記事
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