2024年04月26日( 金 )

日中関係は「君子和而不同、小人同而不和」の精神で!(1)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(一社) 日中商務促進会 会長 孔 令傑 氏

 最近は、Before Corona(BC)とAfter Corona(AC)という表現も使われるようになった。それだけ「新型コロナウイルス」が国際政治・経済、さらには、社会、文化に大きな影響を与えることが広く一般に認識されるようになった。世界は一変する。
 一方で、21世紀がアジアの世紀になることだけは揺らぎようがない。アジア団結の要は「日中友好」である。孔令傑  (一社)「日中商務促進会」会長・Think Digital(株)代表取締役社長に聞いた。孔令傑氏は孔子直系76代にあたり、元中国 清華大学 日本校友会会長である。

人類全体に対する脅威として受け止めるべきものである

 ――今回の「新型コロナウイルス」騒動をどのように見ておられますか。

孔 令傑 氏

 孔令傑氏(以下、孔) 「新型コロナウイルス」(以下、新型コロナ)感染症の発生源は当初、中国の武漢とされていました。ところが、最近の調査では、武漢発生よりさらに遡って、同じ症例が各国で見つかっています。歴史的に見ても、感染症というものは、どの国が発端ということではなく、人類全体に対する脅威として受け止めるべきものと考えています。

 中国では、武漢で発生後、全世界に対してアラームを出し、中央政府も状況が明確になった時点(1月23日)で、市中人口約900万人の武漢市をロックダウン(都市封鎖)しました。続いて、すぐに約6,000万人の人口を有する湖北省をロックダウンしています。これほど大きな規模のロックダウンは、中国史上はもちろんのこと、世界史上でも初めてのことではないでしょうか。その後、中国全土で、温度差はありますが、都市封鎖的な動きが拡がりました。

防疫対応の評価は「危機管理能力」の差によって生じた

 ――武漢市の封鎖はともかく、湖北省の封鎖など大掛かりな封鎖については、賛否両論があります。

 孔 今中国国民が関心をもっている問題が2つあります。1つ目は、それぞれの地域の行政責任者の判断が正しかったかどうか、という問題です。そして、2つ目は、はそれぞれの封鎖にともなって生じた経済的損失をどのように軽減するか、という問題です。

 行政責任者の判断に関しては難しい問題です。武漢市の初動対応には問題があったと言われております。12月31日の時点で、医師(李文亮氏)が感染症のアラームを出していたからです。
 一方で、四川省(行政責任者は医学系出身)の対応は素早かったと評価されています。行政責任者の感染症など防疫・衛生などの専門的知識の有無で差が出たことは否めません。ただし、私はこの専門知識の有無の問題はそれほど重要とは考えておりません。今回の防疫対応の差は、専門知識ではなく、「危機管理能力」の差によって生じたと思っているからです。

 行政責任者に一番求められる能力は「危機管理能力」(想定しうるトラブルが実際に発生したときに、地域住民の安全のために、その被害をできるだけ抑えて対処する能力)です。なぜかと言いますと、地域住民の安全なくして、政治や経済はもちろん、社会も文化も語ることなどできないからです。

 さらに今回は、通常の危機管理能力に加えて「未知の危険」(発生当初は「新型コロナ」の実体の把握がまったくできていませんでした)への対応という要素が加わりました。未知の危険に対する対応のポイントは「どこまで拡大解釈して措置を実行すべきか」ということになります。措置の効果がなければ、責任が問われます。一方で、過剰な措置の場合は経済が大きなダメージを受け、批判を受けます。正解は「できる範囲で、一番厳しい措置を講じる」というものですが、頭では理解できていても、いざ実行となると、難しいものです。

感染者を見つけ、隔離する以外、拡大を防ぐ方法はない

 孔  2つ目の問題「経済的損失をどのように軽減するのか」にも関係してきますが、世界の動きのなかで、韓国がとった措置は賢明であったと感じています。韓国は積極的にPCR検査を実施しました。ウイルスに対するワクチンもなく、特効薬もない状態で、唯一感染拡大を防ぐ方法は「感染者を見つけ、隔離する」以外にありません。患者がどんなに多くても、とにかく見つけなければいけません。検査にはお金がかかりますが、人口比に合わせて、その検査費用(PCR検査費用、医師、看護師費用など)の天井は容易に計算できます。ロックダウン(都市封鎖)はあくまでも、次善の措置です。日本のように、PCR検査を積極的に行うことを避けた場合は、いつまで経っても、感染者が特定できず、安全が確保できず、地域住民の不安が消えません。さらに、経済的損失がどこまで拡がっていくのかも見えてこないのです。

(つづく)

【金木 亮憲】


<プロフィール>
孔 令傑(こう・れいけつ)

 北京市生まれ。毛沢東「下放」(文化大革命期、都市青少年を農村に行かせ、労働に従事させることにより、官僚主義や主観主義などの克服を目的とした運動)世代。
 1983年に清華大学無線・電子工学部を卒業、同年に中国国家気象局衛星気象センターに入局。在学中から中国科学技術委員会のプロジェクトに参画、「科学技術進歩賞」を受賞した。それにより、卒業前に気象局への入局は決まっていた(当時は政府が就職先を決定していた)。入局後も、気象衛星システムの開発により中国国家気象局「科学技術応用進歩賞」を受賞。
 88年12月に訪日、日本テレコムクリエイト(株)勤務を経て、98年にテレコム(株)情報通信研究所の研究員となり、技術・研究開発をメインに、マーケット調査まで広範囲の分野で活躍。2004年に友人とThink Digital(株)を設立、06年に代表取締役社長に就任、現在に至る。
 (一社)日中商務促進会会長、元清華大学日本校友会会長、清華企業家協会会員。

(2)

関連記事