2024年04月27日( 土 )

日中関係は「君子和而不同、小人同而不和」の精神で!(2)

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(一社) 日中商務促進会 会長 孔 令傑 氏

 最近は、Before Corona(BC)とAfter Corona(AC)という表現も使われるようになった。それだけ「新型コロナウイルス」が国際政治・経済、さらには、社会、文化に大きな影響を与えることが広く一般に認識されるようになった。世界は一変する。
 一方で、21世紀がアジアの世紀になることだけは揺らぎようがない。アジア団結の要は「日中友好」である。孔令傑  (一社)「日中商務促進会」会長・Think Digital(株)代表取締役社長に聞いた。孔令傑氏は孔子直系76代にあたり、元中国 清華大学 日本校友会会長である。

杭州市500万人の住民に、わずか数分で商品券を配布した

 孔  経済的損失補てんに関してですが、今回中国では面白い試みが行われました。新型コロナで落ち込んだ消費を喚起するために、4月以降、アリペイやウィーチャットを通じて電子商品券が配布されました。

 たとえば、杭州市(アリババの城下町)では、アリペイを通じて総計16.8億元(約250億円)の商品券が配布されました。事前に行われた配布テストでは、杭州市の住民の500万人(杭州市の人口は約1,000万人)にわずか数分で商品券を配布し終えました。先日のテレビでは、日本の品川区における商品券、給付金などの配布処理能力は平均1日3,000人と報道されていました。もし、品川区で、アリペイなどの電子マネーで給付金を配布した場合、全区民に届くのに、1分もかからないと思います。

孔 令傑 氏

 今回配布された商品券には、ユニークな特徴があります。それは、以前日本やシンガポールで配布されたものとは異なり、現金と同じように使えるものではないということです。今回の商品券はあくまでも割引の枠を確保する(キャッシュバック)ためのものです。商品券(お金を使わなければ、恩恵は受けられません)で消費活性化を促しているのです。

 具体的には40元(約600円)払うごとに10元(約150円)がキャッシュバックされるようになっています。例として400元(約6,000円)の買い物をすれば、100元(約1,500円)のキャッシュバックが受けられます。40元に満たない少額の場合は、2人で40元を使っても構いません。また、これはあくまでも中央政府のモデルです。各省・地域ではこの政策をベース(最低基準)に、それぞれの環境に合わせ、さらなる優遇措置を展開しています。

現金は感染者を含む何万人の手を介するので一番危ない

 ――現時点では中国は峠を越え、中国の数字(感染者数、死亡者数など)を大幅に上回り、欧米先進国で感染が拡大しています。今考えると、中国は意外と早く収束した感もあります。

 孔 現段階ではその理由ははっきり申し上げることはできません。しかし、私は以下の2つの点に注目しています。

 1つ目は、今回、中国人は電子メール、電子マネー(通信販売、出前など)で他国に比べ多くの恩恵を受けました。中国の日常の売買はほとんど電子マネーで行われています。新型コロナは、空気感染はしませんが、飛沫感染、そして接触感染すると言われております。そう考えると、日常日本で私たちが使っている、現金(お札、硬貨など)は、感染者を含む何万人の手を介して流通するので一番危ないのです。中国では、大都市から地方の小さな都市に至るまで、現金はほとんど使われていません。

 今、日本でスーパーなどのレジで、現金の受け渡しがトレイで行われていることに少し違和感をもって受け止めています。まず、現金を触っている時点で、トレイに載っていようが手渡しであろうが関係ありません。また、トレイの受け渡しでは、お客さんがお店に滞在する時間が大幅に長くなるので「3密」(密閉、密集、密接)という観点からも逆効果だと思います。

配達員などは団地、マンションの敷地内に入れなかった

 孔 2つ目は、文化の差です。中国では2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)を経験しました。その記憶がまだ残っており、新型コロナがSARSを上回って対応が難しいとわかった時点で、多くの国民が心を1つにしました。今回の新型コロナでは、欧米と比較しても、中国全土で、地域、家などにおいて国民が自己管理を徹底して行いました。マスクをつけ、体温を測り、団地、マンションの出入りも厳しくチェックされました。ネット配送、デリバリーの場合、ドライバーは団地、マンションの敷地内には入ることができませんでした。

 一例ですが、デリバリーのドライバーは、配送容器の蓋をお客さんと約2m離れたところで空け、開けたら2m離れ、今度はお客さんがその場所に行き、料理などを自分の手で取り出します。お客さんが受け取った後、配達員はその蓋を閉めて、次のお客さんに向かいます。基本的にお客さんと配達員は常に2m離れて待機することが、中国全土の出前配達業者に、徹底されました。

(つづく)

【金木 亮憲】


<プロフィール>
孔 令傑(こう・れいけつ)

 北京市生まれ。毛沢東「下放」(文化大革命期、都市青少年を農村に行かせ、労働に従事させることにより、官僚主義や主観主義などの克服を目的とした運動)世代。
 1983年に清華大学無線・電子工学部を卒業、同年に中国国家気象局衛星気象センターに入局。在学中から中国科学技術委員会のプロジェクトに参画、「科学技術進歩賞」を受賞した。それにより、卒業前に気象局への入局は決まっていた(当時は政府が就職先を決定していた)。入局後も、気象衛星システムの開発により中国国家気象局「科学技術応用進歩賞」を受賞。
 88年12月に訪日、日本テレコムクリエイト(株)勤務を経て、98年にテレコム(株)情報通信研究所の研究員となり、技術・研究開発をメインに、マーケット調査まで広範囲の分野で活躍。2004年に友人とThink Digital(株)を設立、06年に代表取締役社長に就任、現在に至る。
 (一社)日中商務促進会会長、元清華大学日本校友会会長、清華企業家協会会員。

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