これからの工法・CLTパネル工法 メリットとデメリットは?(中)
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森林大国の日本では、林業の振興やCO2排出量を削減に向けて国産材の活用が期待されている。S造やRC造が主流の中大規模建築物でも利用できる、直交集成板のCLT(クロス・ラミネーティッド・ティンバー)で木造建築をつくる取り組みが進んでいる。CLTを使うと、どのようなメリットがあるのか。これから解決していくべきCLTの課題とは。その動向を見つめた。
CLT木造建築の防耐火設計
CLTパネルは大判のため、在来工法の建材よりも火が付きにくい。燃えるのに時間がかかるため、火が広がりにくいと言われている。とはいえ、地震国の日本では地震後の火災を防ぐ対策が欠かせない。どのような防耐火設計が必要だろうか。
1~3階建の一般的な建物(特殊建築物は除く)は、建築基準法の準耐火建築物で構造部は45~60分の準耐火性能があればよいため、「150mm厚のCLTパネルを露出したままで壁や壁などの構造に使用できる(※)」(日本CLT協会)。しかし、4階建以上になると一般的には耐火建築物で、構造部は1~3時間の耐火性能になるため、「石膏ボードなどを貼る必要がある」(日本CLT協会)という。
一般的な4階以上の建物の構造で使うと、燃え移りを防ぐためCLTパネルにサイディングなどが必要となり、せっかくの木目が見えなくなってしまう。「そのため柱や梁などはRC造やS造で、床や壁など見える部分をCLTパネルにする混構造が建てやすい。なかでも木を見せるために防耐火技術が必要な床より、燃えつきても安全性に影響が出にくい壁にCLTパネルは使いやすい。高層建築でCLT構造材を使う防耐火技術は、まだ研究開発が必要な段階だ」と五十田教授は話す。
※内装の法規制に関しては、室内条件などでケースバイケースのため、 個別に確認が必要。
設計・施工の課題技術開発とコスト
CLTパネル工法はRC造やS造に比べて、材料コストがまだ高いことが課題だ。だが、「国や都道府県の補助金が充実しているため、補助金を活用すればほかの材料とほぼ変わらない予算で建てられる」と日本CLT協会・坂部氏はいう。
また、工法が確立されているRC造やS造などと比べ、CLTパネル工法は経験のある建築士や施工会社がまだ少ない。さらに木造建築は、高度な構造設計ができる技術者が不足していることも課題だ。13年からCLTに取り組んできた高知県の施工現場からも、「RC造や木造軸組工法と比べてアンカーボルトを設置する際の精度の確保が難しく、技術が必要」という声も聞かれた。
五十田教授は、「CLTパネルは新しい材料で、接合工法など建て方がまだ確立されていない。データが少なく、安全性などを現場で確認しながら建てる必要があるため、資材購入量が増えて施主の想定よりコストや時間がかかりがちだ。中高層建築を合理的につくるためには、設計や施工を標準化していく段階だ」と話す。CLTパネル工法を中高層建築で活用するためには、建て方を学び、研究を重ねる必要があるというわけだ。
(つづく)
【石井 ゆかり】
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