2024年04月26日( 金 )

「Go To トラベル」から「Go To トラブル」へ

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 政府が観光支援事業「Go To トラベル」キャンペーンの対象から東京都を除外したのは、東京都の感染者が急増したことや各地から噴き出した慎重論だけが理由ではなく、背景に政府と都の対立もあったとみられている。
 「Go To」キャンペーンが注目を集めたのは、かねてから確執が指摘されていた菅義偉官房長官と、小池百合子東京都知事の応酬が発端となったといわれる。

~「Go To トラベル」が「Go To トラブル」になった経緯について~
◆7月11日の北海道千歳市の講演で東京都と23区の連携の悪さに不満を募らせていた菅官房長官は「この問題は圧倒的に『東京問題』と言っても過言ではない」と発言。
◆それに対し小池都知事は13日、菅官房長官がキャンペーンの旗振り役を務めてきたことも念頭にあったとみられることから、「むしろ『国の問題』だ」と反撃。キャンペーンをやり玉に挙げ、「(感染拡大防止と)整合性をどう取るのか。冷房と暖房を両方かけるにはどう対応すればいいのか」と記者団を前に痛烈に皮肉ったという。
◆2人のやりとりは結果的にキャンペーンへの世論の関心を高め、各地の自治体から「いきなり全国で開始することには反対」(大阪府の吉村洋文知事)などと懸念する声が相次ぐ事態となった。
◆コロナ対応での政府と都の不協和音は初めてではなく、4月に休業要請の進め方で足並みが乱れた。7月4日、小池都知事は「他県への不要不急の外出遠慮」を都民に要請。県をまたいだ移動を妨げない政府との食い違いがあらわになった。しかし翌日の都知事選で自主投票を決めた自民党に配慮し、政府に合わせるかたちで発言を修正した経緯がある。

政府と小池都知事の対立が表面化
◆圧倒的な支持を得て再選をはたした小池都知事は、15日の記者会見で発言を元に戻し、「不要不急の都からの外出はできるだけ控えてほしい」と都民に再び呼び掛けた。小池都知事の呼び掛けは政府のキャンペーンと相いれないことから、政府は「東京外し」を決断したとみられる。
◆政府は7月16日、専門家委員の意見を受け入れ、「「Go To トラベル」から東京都を除外し、予定通り、4連休前の7月22日からスタートすることを決定した。
◆西村康稔経済再生担当相は17日、観光支援事業「Go To トラベル」キャンペーンの対象から東京発着の旅行を除外した政府の判断について、「苦渋の選択だ」として理解を求めた。
・また1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の新規感染者数が全国の約7割を占めていると指摘。「高い水準で推移しており、危機感を強めている。もう一歩踏み込んだ対策を検討する段階にきている」と述べ、1都3県で足並みをそろえる必要性も強調した。
◆その決定に対し17日午前、都庁で記者団の取材に応じた小池都知事は、「突然の変更で現場が混乱している」と苦言を呈した。
・都除外の連絡は16日夕方に西村経済再生担当相からあったとしながら、「なぜ東京を外すのかという詳細な説明は受けておりません」。また「納得のいく説明は依然として今も受けていません」と政府への不満を隠さなかった。
・一方、与党幹部も東京都を除外したことに対して、「小池氏がキャンペーンを批判するからだ」と言い切った。小池氏が不満を漏らしていると聞いた政府関係者も「キャンペーンを止めてほしいと言ったのは小池氏だ」と突き放したという。 

<まとめ>
 埼玉県の大野元裕知事はイベント開催の制限緩和に懸念を表明。神奈川県の黒岩祐治、千葉県の森田健作両知事も首都圏での感染拡大に危機感を示し、独自に対策強化を進めていく方針を打ち出した。
 今回の決定が政府と東京都の亀裂をさらに深め、二転三転したキャンセル料の問題などもあり、安倍政権は今後の新型コロナウイルスへの対応次第如何で、崩壊の危機に直面することになりそうだ。

<参考>
新型コロナウイルスの感染拡大が続いている(【表1】、【表2】参照)。福岡市で感染者が7月16日から5日連続して大幅に増加している。

▲クリックで拡大▲
▲クリックで拡大▲

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

関連記事