2022年05月24日( 火 )
by データ・マックス

「ウォーカブル」なまちづくりで神戸市は復活できるか?(2)

 神戸市の中心、三宮駅周辺が変わりつつある。神戸市は震災から20年が経過した2015年、歩行者優先のまちづくり(ウォーカブル)を志向した三宮駅周辺地区の「再整備基本構想」を策定。18年には、構想に基づく『神戸三宮「えき≈まち空間」基本計画』をとりまとめた。また、20年7月から「タワーマンション規制(容積率規制)」がスタート。居住機能を抑制する一方、オフィスや商業施設の優遇に踏み切った。阪神淡路大震災から20年間、“攻め”のまちづくりができなかった神戸・三宮だが、総事業費7,440億円(官民合計)を投じるプロジェクトによって、かつての存在感を取り戻すことができるのか――。

駅周辺をウォーカブルに

 15年、神戸市はようやく重い腰を上げた。同年、三宮駅周辺地区の再整備基本構想を策定し、18年には構想に基づいて『神戸三宮「えき≈まち空間」基本計画』をとりまとめ、駅周辺のまちづくりに動き出した。

 ウォーカブルなまちづくりは、国が誘導する政策でもある。国土交通省は、都市再生整備計画事業の拡充という位置づけで、まちなかウォーカブル推進事業として、車から人中心の空間に転換する事業を対象に補助メニューを設置している。街路の広場化や沿道施設のリノベーションなど、環境整備の費用を半分負担する。ウォーカブル推進都市には、神戸市を含め、全国260(20年6月時点)の区市町村が名を連ねている。

 神戸市はすでに、ウォーカブルなまちづくりに取り組んでいた。16年には、2車線あった市道葺合南54号線を1車線に減らして、代わりに歩道を拡幅する工事を実施し、一部を供用開始した。道路の線形も見直し、車両がスピードを出せないようスラローム状にした。この結果、歩行者が増え、歩道上のベンチで憩う姿が散見されるようになったという。

 16年以降、三宮中央通りや市立博物館前など4カ所に「神戸パークレット」を設置。パークレットとは、道路上の余剰空間にウッドデッキやベンチなどの休憩スペースを設置したもの。米国サンフランシスコが発祥とされ、日本での導入は神戸市が初。パークレット設置区間は利用者からも好評で、歩行者が増えたことで協賛企業の広告も掲示している。この成功体験が、三宮駅周辺全体をウォーカブルにするという発想につながったようだ。

まちづくりの方針図

 再整備基本構想では「まちづくりの5つの方針」として、「(1)歩くことが楽しく巡りたくなるまちへ」「(2)誰にでもわかりやすい交通結節点へ」「(3)いつ来てもときめく出会いと発見を」「(4)人を惹きつけ心に残るまちへ」「(5)地域がまちを成長させる」を掲げている。

 これらのベースには「ウォーカブル」があるのは明らかだ。対象となるのは三宮駅周辺を中心に、北野、旧居留地、南京町といった神戸市の主要な観光スポットが含まれるエリア。車ではなく、電車で三宮に訪れ、徒歩で回遊してもらい、その途中にある商店街などでショッピングしてもらうことで、まちの活性化、成長につなげたいという、市サイドの意図が読み取れる。

 基本計画では構想実現のため、「えき≈まち空間」というスローガンの下、施策として「(1)三宮の6つの駅があたかも1つの大きな『えき』となるような空間」「(2)『えき』と『まち』が行き来しやすく、より便利で回遊性を高める空間」「(3)美しき港町・神戸の玄関口にふさわしい象徴となる空間」の3つを掲げた。

 基本計画で核となる施策が「三宮クロススクエア」の整備だ。山と海をつなぐ南北軸(フラワーロード)と、三宮と元町をつなぐ中央幹線や鉄道の結節点に位置づけられ、人と公共交通優先の空間を創出し、地上レベルの歩行アクセスを強化する。そのうえで、駅南北にまたがるエリアを5つにゾーニングし、それぞれの特性を活かしながら、沿道建築物と一体となった歩きやすい空間を段階的に整備する。

(つづく)

【大石 恭正】

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