2024年03月19日( 火 )

「ウォーカブル」なまちづくりで神戸市は復活できるか?(3)

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 神戸市の中心、三宮駅周辺が変わりつつある。神戸市は震災から20年が経過した2015年、歩行者優先のまちづくり(ウォーカブル)を志向した三宮駅周辺地区の「再整備基本構想」を策定。18年には、構想に基づく『神戸三宮「えき≈まち空間」基本計画』をとりまとめた。また、20年7月から「タワーマンション規制(容積率規制)」がスタート。居住機能を抑制する一方、オフィスや商業施設の優遇に踏み切った。阪神淡路大震災から20年間、“攻め”のまちづくりができなかった神戸・三宮だが、総事業費7,440億円(官民合計)を投じるプロジェクトによって、かつての存在感を取り戻すことができるのか――。

巨大バスターミナル建設へ

雲井通5丁目の周辺エリアを含めた将来的なイメージ
(三菱地所プレスリリースより)

 基本計画のもう1つの目玉が、都市再生事業(雲井通5丁目再開発)として進めるバスターミナルビルの建設だ。三宮駅周辺からは1日約1,700便(19年4月時点)のバスが発着しているが、バス乗降場は現在、6カ所に分散しており、発着場所がわかりづらい、スペースが狭いなどの課題があった。そこで「神戸三宮雲井通5丁目地区第一種市街地再開発事業」として、約1.3haの用地を確保し、高速バスターミナル機能を備えた新たなビルを整備することを決めた。5丁目には現在、中央区役所、商業施設、ホテル、都市公園などが立地している。

 バスターミナルを含む新たな再開発ビルは、高さ約165m、延床面積約10万m2。バスターミナルのほか、大ホール、図書館、オフィス、ホテルなどを備える。事業主体は神戸市などが出資する雲井通5丁目再開発(株)で、事業協力者には三菱地所を代表とする企業グループ(三菱倉庫、神鋼不動産、東畑建築事務所、再開発評価)が選ばれた。事業費は約1,000億円。22年度以降に着工、26年度頃竣工の見込みだ。
 隣接する6丁目エリアの再開発は、II期事業として実施を計画している。「バスタ新宿の西日本版をイメージしている」(神戸市役所担当者)という。なお、雲井通5丁目のバスターミナルについては、20年3月に直轄道路事業によって整備することを含めた事業計画を神戸市と近畿地方整備局がとりまとめた 。

 この雲井通5丁目エリアは、10車線ある国道2号に面している。神戸市では、三宮クロススクエアの段階整備として、まず三宮交差点の東側の車線を減らし、駅前に新たな広場を整備する計画だ。広場の面積は未定だが、3,000m2程度の見込みだ。25年頃をメドに6車線化し、30年頃には3車線まで減らす。19年7月には、6車線に規制する社会実験を実施。実験結果を踏まえ、外周道路への迂回促進策の検討を重ねている。

三宮クロススクエアのイメージ(神戸市HPより)

 当然といえば当然だが、自動車利用者からは、車線減少についてネガティブな意見も少なからずある。この点、神戸市役所の担当者は「新しくできる歩行者空間が三宮のまちにとっていかに良いものかについて、理解を深めてもらえるよう努力していく」としている。

 神戸市は、建設から約60年が経過した神戸市役所本庁舎2号館の建替えも進めている。新たな建物(新庁舎・にぎわい施設)には、行政機能のほか、音楽ホールや集客、商業機能も配置。連絡ロビー・エネルギー施設も整備する。施設規模は総延床面積約6万m2。事業手法は、定期借地権方式を採用。行政機能、音楽ホールは市が所有(賃貸)し、集客、商業フロアは民間事業者が所有する。概算事業費は約460億円。連絡ロビー・エネルギー施設は23年度、新庁舎・にぎわい施設は25年度以降にそれぞれ完成予定だ。

 本庁舎2号館の道路向かいにある本庁舎3号館跡地にも、中央区総合庁舎を建設中だ。高さ53m(地上12階)、延床面積約1万9,300m2。区役所機能のほか、多目的ホールなどの文化施設機能も備える。総事業費は約108億円で、施工は大林組・神鋼興産建設JV。22年の完成予定だ。

(つづく)

【大石 恭正】

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