傾斜マンション問題、ベルヴィ香椎の建替えに立ちはだかる壁(前)
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福岡東区の分譲マンション「ベルヴィ香椎 六番館」(以下、六番館)の施工ミスに関して、販売会社である若築建設(株)・JR九州・福岡商事(株)の3社が「改修」「解体・建替え」「買い取り」の3つの案を示したことを受けて、六番館の管理組合は「一団地認定(※)」に関する調査を開始した。六番館の建替えを見据えた調査と考えられるが、六番館以外の棟の問題を残したまま、建替えが進められていくのか。さらに、六番館以外の棟の安全性・適法性は担保されるのか。構造設計一級建築士の仲盛昭二氏に意見を聞いた。
一団地申請のための調査が開始
―マンションの傾斜が問題になっている六番館について、「改修=杭の補修」「建替え」「買い取り」の3つの案が販売会社から提示され、建替えを見据えて、「一団地申請」のための調査が開始されたそうです。
仲盛 区分所有法の定めにより、団地型集合住宅のうち1棟の建替えを行う場合には、建て替える棟の区分所有者の5分の4以上の決議に加えて、団地全体の区分所有者の4分の3以上の承認決議が必要であることは、前回にお話しました。
建築基準法第86条に定められている「一団地認定」では、1つの敷地に複数の建物を建設する場合、接道義務や建ぺい率・容積率、日影規制の緩和などが認められます。
―六番館の建替えをする場合、他の棟の4分の3以上の承認決議が必要ですが、ベルヴィ香椎の六番館以外の区分所有者は承認するでしょうか。
仲盛 六番館以外の構造スリットの未施工が、大きな問題となるでしょう。五番館以降に建てられた棟では、 図面や構造計算書に明記された構造スリットが施工されていないことが明らかになっています。構造スリットの未施工という問題を積み残したままで、六番館だけを建て替えることに同意する方は少ないのではないでしょうか。
「六番館以外の棟については今後、対処する」などといった販売会社側の「空手形」を信じると、期待を裏切られる結果となることは、これまでの20年以上におよぶ販売会社(若築建設・JR九州・福岡商事)の対応を振り返れば明らかです。
―六番館を建て替える場合、他の棟が「構造スリットが施工されていない違法状態」のままであれば、「一団地の認定」は成立しますか。
仲盛 難しい問題だと思います。私は構造技術者のため「一団地認定」については専門外ですが、一般論として、1つの団地のなかに違法建築物が存在している場合には、これを1つの団地として緩和規定を適用することは不適切です。
たとえば、とくに旧耐震建物の場合などの既存の建物に隣接して増築を行う場合は、既存の建物の安全性を確認するために、耐震診断による安全確認などが義務付けられています。同じ用途に供する複数の建物という点では、同様の考え方になると感じます。
※ 一団地認定
建築基準法第86条および第86条の2の規定による「一の敷地とみなすこと等による制限の緩和(一団地認定制度および連担建築物設計制度)」は、一定の基準に従い総合的見地から設計された用途上可分の複数建築物について、同一の敷地内にあるものとみなすことにより、接道・容積率・斜線制限等の一定の建築制限を一体的に適用する制度。(福岡市ホームページより)(つづく)
【桑野 健介】
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