2021年12月09日( 木 )
by データ・マックス

【川辺川ダムを追う】川辺川ダム建設予定地〜現地レポート(中)

 建設中止に追い込まれてから12年。川辺川ダム建設予定地は、今どうなっているのか――。熊本県五木村、相良村などのダムゆかりの場所を回り、現地で感じたことなどをレポートする。

頭地大橋から水没予定地を眺める

 川辺川ダム建設予定地を発見したところで、次はダム水没予定地へと向かう。五木村役場で「水没予定地がよく見える場所はどこか」と尋ねると、「頭地大橋に行けばよく見える」とにこやかに教えてくれた。

川辺川ダム水没予定地。手前を流れるのが川辺川の源流である五木川。
五木小川と合流(写真中央右付近)し、その下流から川辺川となる(頭地大橋から下流を望む)

 頭地大橋の全長は487m、最大高さは約70mで、ダムにともなう五木村の生活再建対策として2013年に供用を開始した橋だ。橋を中ほどまで行くと、歩道の途中に眺望用のちょっとしたスペースがある。そこからだと、たしかに眼下に川辺川、水没予定地などがよく見えた。村役場などは、左岸側の高台にすでに移転している。当初はダム推進のために架けられた橋から、再開発された水没予定地を眺めるのは、不思議な気持ちがした。

 それでも川沿いには、いくつかの建造物がポコポコ立地しているのが見えた。左河岸には宿泊施設「渓流ヴィラITSUKI」が見える。今、五木村でイチオシの観光施設らしい。ヴィラの対岸には、公園施設「五木源パーク」などが整備されている。ただ、どちらの施設も河岸ギリギリにつくられているのが妙に気になった。

「ワイルドとラグジュアリーを楽しむ渓流リゾート」がコンセプトの宿泊施設「渓流ヴィラITSUKI」

 そのほかには、空き地やら現場工事事務所ぐらいしか見えなかったが、これらのスペースもいずれ何らかの施設が立地するのかなとぼんやりと思いながら、しばらく眺めていた。ところが、いろいろ調べてみると、このダム水没予定地の利活用は、あくまで暫定的な措置として、特例的に実施されていることがわかった。「なるほどそういうカラクリか」と、ストンと腹に落ちるところがあった。

 頭地大橋からの景色は、一見平和な印象を受けたが、山肌や川岸を見ると、土砂崩れによって道路が閉塞しているような箇所が散見された。五木村でも7月上旬に400mm以上の大雨が降ったわけだから、当然無傷とはいかなかったわけだ。近くまで行って見てみようと思ったが、全面通行止めのために行けなかった。

崩壊した五木小川沿いの道路

 この場所に来て、「ここにダムができていれば、どうなったか」ということに思いを馳せないわけにはいかない。ダムが溜めることができる水は、五木村から上流に降る雨だけなので、下流域や球磨川に降った雨をすべて食い止めることはできないのは当然だ。だが、治水の目的は、流入する土砂をすべて防ぐことではなく、少しでも流入量をカットして、河川などのオーバーフローのリスクを減らすことにある。やはり、仮に1億m3の土砂を食い止めていれば、下流の氾濫リスクは確実に低減されたはずだという思いを禁じ得なかった。

 私の心情などはどうでもいいが、川辺川ダム周辺の住民が、そのことについてどう思っているのだろうかは重要だろう。コロナ対策の関係で、あちこち聞いて回ることはしなかったし、できなかったが、たまたま地元住民と世間話をするチャンスに恵まれた。取材と告げずに水を向けると、「やっぱりダムはあった方が良かったのかねえ」という言葉が返ってきた。非常に正直な言葉だと思った。「常識をもっていることは、心が健康状態にあるのと同じこと」という言葉を思い出した。

(つづく)

【大石 恭正】

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