【国交省答申】激甚化する災害~港湾の防災・減災対策はソフト面でも
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2020年10月02日 07:00

【国交省答申】激甚化する災害~港湾の防災・減災対策はソフト面でも

施設などのかさ上げ・補強と多重防護(出典:国土交通省 答申(概要))

激甚化する災害への対応

 国土交通省交通政策審議会は8月、「今後の港湾におけるハード・ソフト一体となった総合的な防災・減災対策のあり方(答申)」(以下、答申)を発表した。

 国土交通省はこれまでの港湾の防災・減災対策として、東日本大震災の教訓を踏まえ、物流機能を維持し、安全性を確保できるよう地震・津波対策を実施してきた。しかし近年では、台風被害が頻発かつ激甚化しており、将来の災害リスク増も懸念されるため、同省ではハードとソフトが一体化した施策を行い、臨海部のさらなる安全性向上や海上交通ネットワークの維持を図るなど、社会経済への影響を極力抑制することを目指すこととした。本対策の方針を以下に紹介する。

災害課題とリスク

使用中の水位上昇を加味した設計イメージ
(出典:国土交通省 答申(概要))

 今後30年間で70~80%の確率で起こると予想されている南海トラフ地震などで、主要な港湾が被災すると、産業活動や物流機能に大きな影響が出ることが懸念されている。また、2100年の世界平均海面水位は最大1.1m上昇すると予測(IPCC特別報告書より)されており、大型船舶の災害派遣時に延長や水深が不足する耐震強化岸壁がある。さらに、房総半島台風などで計画波を大きく上回る高波により施設の破損、倒壊が起きたため、防災・減災対策が課題となっている。

 そこで、災害時の復旧・復興拠点としての機能を強化し、大規模地震・津波への対策のために、国内外の代替輸送ルートやバックアップ体制を確立し、災害に強い海上交通ネットワークの構築が必要となる。高潮、高波、防風被害が頻発かつ激甚化しているため、早急に対策を講じるべきであり、長期間を要するハード対策とともにソフト面で可能な対策を講じ、早期に計画的な対応をすべきとしている。

施策方針

(1)頻発化・激甚化する台風被害対策

 最新の知見を基に、設計沖波などを見直して耐波性能を照査し、重要かつ緊急性の高い施設の補強やかさ上げを行い、胸壁の設置や臨港道路のかさ上げなど多重防護を導入する。走錨対策として、船舶衝突による被害軽減のため、橋梁への杭式防衝工などを設置し、避難水域を確保する。港湾計画などの地盤高さの表記を検討し、コンテナ飛散防止策として、ベルトによる空コンテナの固縛など優良事例の共有、技術検討を続ける。

(2)気候変動による海面水位上昇対策

 将来の海面水位の上昇などを考慮した港湾計画を立て、施設の更新時期までに予想される平均海面水位の上昇量を設計などに反映することを基本として、技術基準などの整備を検討する。潮位偏差や波浪の極値の増加などは、一定の技術的な知見が得られた時点で設計への反映を検討する。また、国はモニタリング結果から高潮や高波の影響を予測し、港湾管理者などに情報を提供する。

(3)災害に強い海上交通ネットワークの構築

港湾

 陸上交通が被害を受けた場合でも対応できるよう、フェリーやRORO船などの代替輸送を用意するなど、物流ネットワークの多重化による予備の手段を確保。さらに海上交通ネットワークを意識して岸壁、臨港道路、橋梁などを耐震化する。老朽化した耐震強化岸壁の性能を調べ、必要に応じて埠頭再編成や船舶の大型化を考慮して再配置する。

 津波来襲時の船舶の岸壁への乗り上げや漂流船舶の荷役機械への衝突などを防ぐため、船舶の沖合への避難や係留強化とともに、背後地の安全性確保を考慮したうえで、港湾事業を中断させず短期間で復旧するための事業継続計画(港湾BCP)、港湾施設の機能や整備配置を検討する。また、地域の重要湾港に整備された耐震強化岸壁を中心として、地域湾港などへの小型船による二次輸送体制の構築を検討する。

(4)臨海部の安全性と災害対応力の向上

 

フェリー・RORO船などによる代替輸送のイメージ
(出典:国土交通省 答申(概要))

ハード・ソフト一体となった総合的な津波対策として、粘り強い構造の防波堤の整備とともに、陸閘の常時閉鎖、臨港道路のかさ上げ、既存ビルの避難施設としての活用などによる避難対策などを行う。

 災害時には監視カメラやドローン、IoTを活用して迅速に被災状況を把握し、情報収集するとともに、被災した港湾管理者に対する国の業務支援をさらに充実させる。港湾BCPの実効性を確保するために、計画を策定する官民の協議会を法的な枠組みに位置付けることなどを検討する。また、緊急物資輸送や生活支援に対応した港湾BCPを策定し、複合災害や巨大災害も視野に入れた広域的な港湾BCPに基づき、代替輸送の機上訓練や被災状況の点検訓練、航路啓開訓練などを行い、対応能力を高める。感染症が発生した場合も、災害対策を講じる。

 災害時に災害復旧資材の積み出しや救援物資の荷さばき、災害派遣部隊の拠点などに対応できる「みなとオアシス」をネットワーク化し、港湾の防災機能をさらに向上させる。

災害対応型「みなとオアシス」(出典:国土交通省 答申(概要))

【石井 ゆかり】

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