2024年04月19日( 金 )

リモートワーク化で利用増クラウド契約・クラウドサイン(後)

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他社とも相互補完し使いやすさで普及図る

 オンライン契約サービスの導入にあたっては、自社では問題がなくても契約の相手先は商習慣から紙書面での契約を望む場合も多く、慣れていないことが課題となりやすい。新しいサービスならではの良さがわかっていても、今までの習慣を変えることに抵抗を感じてしまう場合も多いものだ。そのため、「クラウドサインでは、普段は紙書面での契約書でやり取りしていてオンラインでの契約に慣れていない人でも直観的に操作できるように、シンプルな操作画面を採用している」(田口氏)という。

 また、オンライン契約では、書面での契約締結に必要な総務・法務部門の印鑑管理とは運用フローが異なるため、電子契約での電子署名者、承認者などの組織の権限を明確にして運用フローを構築し、社内規定を変更する必要がある。

 契約書は情報漏洩が懸念されがちだが、セキュリティ対策として2段階認証を使用しており、契約書データの送受信は金融機関で使用されているSSL方式による暗号化、外部送信は承認が必要となる仕組みなどで対応している。また、クラウドサインはクラウドサービスのため、締結した契約書のデータはパソコンではなく外部サーバに保存されるが、クラウドサインはAmazonが運営するアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の国内データセンターのサーバを複数箇所で利用しているという。

 クラウドサインは、弁護士検索や法律相談の情報サイト「弁護士ドットコム」を運営している同社取締役クラウドサイン事業部長・橘大地氏が弁護士として契約交渉をサポートするなかで、多くの時間がかかる契約締結業務の効率を改善するために15年に立ち上げた事業だ。そのため、クラウドサインが担う契約書の「締結」から「データ保管」の前後の業務効率化を進めるべく、50以上の他社サービスと提携している。

 たとえば契約書の草稿チェックでは、法律文書作成支援サービス「LAWGUE」(ローグ)と提携しており、自社で保管している過去の契約書データを基に、契約書の草稿段階で必要であるにも関わらず、記載されていない条文や抜けている条文をAIでチェックできる。

 また、営業支援システムの「Sales force」(セールスフォース)、業務改善プラットフォームの「kintone」(キントーン)、クラウド名刺管理サービスの「Sansan」(サンサン)で管理している企業名や住所などの取引先情報を、クラウドサインで契約書に直接反映することも可能だ。8月には、すでに締結して紙書面で保管している契約書も、SansanのAIによるOCRの自動読み取りサービスにより、契約の有効期限などの書面情報をクラウドサインに読み込んでパソコン上で管理できる「クラウドサイン AI」を発表した。また、契約書の社内稟議も「ジョブカンワークフロー」でオンライン化できるほか、オンラインストレージサービスの「Box」(ボックス)で契約書の一元管理が可能となるため、業務の透明性が向上しやすい。

オンラインでの契約書の送受信方法

 クラウドサインの今後の展開として、田口氏は「契約書はデリケートなデータのため、新サービス開発にあたっては細心の注意を払う必要があるが、たとえば総務・法務部などの管理部門はコストセンターのため、誰がどのくらいの量の契約を締結しているかという成果の見える化など、さまざまなデータ活用の可能性がある。そのデータ活用によって、契約が不利になっていないかなど、法務部門は事業活動に直接的に貢献する、より価値のある業務に時間を投資できる」と語る。

 将来はAIの活用がどこまで広がるのかは未知数だが、契約書の締結のオンライン化がどこまで進んでも、現在は契約書の法律チェックができるのは“人”のみということに変わりはないようだ。

(了)

【石井 ゆかり】

(中)

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