川辺川ダム建設中止は蒲島知事の判断“今さら民意をタテにするな!”(4)
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前熊本市長 幸山 政史 氏
球磨川流域の治水対策をめぐる、蒲島郁夫・熊本県知事の発言がブレまくっている。発災直後は「ダムによらない治水を極限まで追求したい」と従来の立場を踏襲するそぶりを見せていたが、その後、「新たなダムの在り方も含め検討する必要がある」「ダムも選択肢の1つ」「あらゆる可能性を排除せず検討する」と発言内容が変わってきているのだ。ダム建設の方向へと徐々にすり寄りつつある印象を与えるが、それを察知したのか、一方で「現時点でダムに方向転換したわけではない」とクギを刺した。政治家が意見をコロコロ変えるのは必要なスキルでさえあるが、水害に見舞われた自治体の首長、県民のなかには、いつまでも「蒲島流の政治的駆け引き」につき合っていられないという者も少なくないだろう。そんな蒲島県政に危機感を募らせているのが、前熊本市長・幸山政史氏だ。過去に2回、蒲島氏と熊本県知事選を争った経験をもつ。川辺川ダムをめぐる蒲島的政治手法の問題点などについて、話を聞いた。
保身ではなく、治水対策は「命がけ」で
――今後の蒲島県政はどうなると思っていますか。
幸山 「ダムによらない治水」は引き続き検討していくようですが、「新しいダムの在り方についても考える」とも言っているようです。いろいろ反発があったので、ダムの可能性もちらつかせるという、まさにリアリストとしての本領発揮というところでしょう。ただ、蒲島知事は言葉が軽過ぎます。
――ダムによらない治水を進めるにしても、ダムに逆戻りするにしても、いずれも政治家としてリスキーですよね。
幸山 そんなリスクなんかはすべて捨てて、とにかく住民の命を守ることを最優先に取り組むべきです。政治家としての保身を考えている場合ではないです。蒲島知事には命がけでやってほしい。「それがあなたの責任ですよ」と言いたいです。残念ながら今のところ、その責任感や覚悟があるようには見えません。ダムを止めたときには自分を前面に出して演出していましたが、これからはなるべく自分を引っ込めて、民意に委ねていくつもりなのかもしれません。ただ、それでは知事としての責任をはたしたことにはならないと思います。
――幸山さんご自身の今後の活動は。
幸山 過去に2回知事選に敗れましたので、「もう一回」というのはいろいろな意味でハードルが高いです。前回敗れた直後には、「政治活動に区切りをつけなければならない」という言い方をしました。今後の活動については未定です。ただ、県民の1人として、今回の水害を受けて、いろいろと考えるところもあります。蒲島県政に対しては、依然さまざまな問題があると感じています。2回知事選を戦った者の責任として、しっかりと発言していくことは続けていくつもりです。
(了)
【大石 恭正】
<PROFILE>
幸山 政史(こうやま・せいし)
1989年3月、九州大学経済学部卒業。同年4月日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)入社。95年4月熊本県議会議員に当選(2期)。2002年11月熊本市長に当選(3期)。16年3月熊本県知事選に出馬するも、蒲島氏に敗北。20年3月熊本県知事選に挑むも、再び蒲島氏の後塵を拝した。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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