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2020年10月17日 07:00

内藤工務店の内藤建三社長を偲ぶ~企業価値40億円を積み上げた経営者(4)

 (株)内藤工務店の内藤建三社長が10月1日に逝去した。75歳だった。葬儀は3日、しめやかに執り行われた。故人・建三氏は1978年3月に初代・内藤正治社長の後を受け継ぎ、陣頭指揮を執ってきた。32歳から75歳まで最前線を走ってきたのである。
 建三氏の経営の特徴はトップセールス力であろう(詳細については後述する)。建三氏はその努力の結果、地元ゼネコン業界の中堅として内藤工務店の地位を確立させた。

 建三氏は一見すると、頑丈な体格を有する印象だが、近年は白血病に侵され、ハードな治療を余儀なくされていたという。今春からは、九州大学病院で入退院を繰り返していた。寿命が長い現代における75歳での逝去は「短い人生だ」と惜しまれる。本人もやり残していたことがまだたくさんあったはずである。

建設業界が天下を握る時代到来 職人不足を理由にもうけ放題

 内藤工務店の20年間の業績推移を詳しく見ていくが、まずは触れるべき時代背景から説明していこう。建設業界は長期にわたる屈辱を受け、バブル期には翻弄され続けた。結果、建設業界から足を洗う人たちが続出した。とくに人並みの生活ができない職人たちの転職が相次いだのである。筆者は、この職人クラスが安心した収入を得ることこそが社会の安定につながると考えている。

 風向きが完全に変わったのは2013年からだろう。どこも「職人の手が足りない、足りない」と騒ぎだしたのだ。当然、建設業者も施主と(1)単価競争(2)工事期間の長期化を粘り強く交渉して条件を勝ち取った。たしかに下請・職人単価が上がったことは間違いない。しかし、現実は元請=建設業者がよりもうかったことも事実で、要するに上前をピンハネしたということである。これは内藤工務店ばかりではない。どの同業者も然りである。

 あえて批判を恐れずにいえば「元請業者にとって“取り放題の時代”が到来した」といえる。見解を変えていえば、建設業界が『職人不足』を盾に主導権を握る「逆転時代の到来」となったのだ。「痛快、痛快」となるが、建設業者が交渉権を握れた経済的な背景もある。施主側が多少、いや、かなりの単価アップの強要があろうとも工事を遂行するビジネス上のメリットがあるからこそ、建設業者のわがままがまかり通ったといえる。格好良くいえば社会のニーズのおかげなのであろう。

同社施工のネストピア薬院(左)とネストピア天神東III(右)

建設需要増大の根拠

 まず挙げられるのは地震・台風・水害が毎年、定期的に発生していることである。11年3月の東日本大震災により、これまでにない広範囲な被災地区での復興工事が続いた。そのため、現場作業員たちが全国から集められた。地震被害であれば16年4月の熊本地震も記憶に新しい。台風被害においても甚大なケースが毎年2件は生じている。梅雨末期の大水害は20年7月の球磨川水害のように必ずと言っていいほど発生する。厳しい自然環境が建設業界の需要を底上げしている。

 2点目の要因は日本の都市づくりというか『大都市構造』プログラムという時代要請があったからである。東京大改造は永遠に続行される勢いだった(三菱地所(株)の丸の内への投資金額は今後3年間で4,500億円という数字が上げられていた)。ところが、このコロナ蔓延で「オフィス需要が減るのではないか」という悲観論が高まるなか、福岡・天神再開発が本格化されている。どうであれ大都市再開発への投資効果は絶大な貢献をなしてきた。

 3点目は日本国民の根強いマイホーム志向があげられる。また親との同居を敬遠して別居する生活が主流になってきているというライフスタイルの変化にも助けられている。18年10月現在、空き家総件数はおよそ846万戸に上るそうだ(総住宅件数の13.6%を占める)。空き家が社会問題になっても新築需要が減らないことがマンション・戸建業者の繁栄につながっているという「いびつな繁栄条件」である。

 日本の人口減少が明瞭になってきた。50年の人口は9,515万人と現在より3,300万人減ると予測されている。それなのにどうして賃貸マンション経営が成り立つのか?前述したように「個のライフスタイル」を求める者が大多数なので、所帯数は減るどころか増えており、需要が膨らんでいるのだ。だが冷静に今後の見通しを立てれば、これらの永続化を期待するのは「超楽天的な人種」しかいないであろう。

 4点目は社会インフラの充実という観点から建設投資が膨張したことだ。この領域において内藤工務店も受注を伸ばした。(1)まずは老人ホームの建設ラッシュが生じた。高齢化時代がなせる業である。(2)医療建設投資の急増という流れもある。(3)若い夫婦は共稼ぎしなければ豊かな生活を送れない。そのため子どもたちを預かる保育施設のスペース拡大が求められた。だからこそ、この分野の建設投資が拡大していったのである。

 5点目はホテルラッシュと物流拠点投資の貢献である。「インバウンド6,000万人」の国策に乗じてホテルの新築ラッシュが発生した。ところが新型コロナウイルスの蔓延で突如としてインバウンドがゼロになったのである。今後、「ホテルバブル崩壊」によるドラマが始まることだろう。一方、物流拠点改造投資は手堅く増えている。この分野の建設投資は今後もまだまだ期待できる。長くなったが、以上の5点が「建設業界が天下を取った」受注環境要因なのである。

 「この建設業界が天下を取った」13年以降に便乗して建三氏も中小建設会社としては革命的な組織充実を実現させたのである。01年4月期の内藤工務店の純資産は3億1,047万円だった。会社設立は1960年5月なので、41年かけて3億円強の純資産を貯めた。本当に涙ぐましい努力の結晶だったことはわかる。ところがどうだ!その後の20年間の推移は。20年3月期(11年に決算期を4月から3月期変更)、純資産は28億8,851万円と9倍にまで膨張させた。

 この業績達成は個人の力だけでは不可能である。時の利に上手に乗れたことで実現できたのだ。ここで、先に登場した東洋建設工業の足谷氏の言葉を紹介しよう。「一生懸命に事業計画を作成してもフォローの後押しがないと達成不能なり」。さぁ「建設業界の天下取り」はいつまで持続するのか!大半は先行きに警戒心を抱いているというのが本音だろう。

(つづく)

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