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2020年10月30日 13:00

【新自由主義の波】タネは誰のもの? 菅首相は種苗法改定で日本の農家を殺すのか

柴咲コウさんも反対表明の「種苗法改定」

 11月1日投開票の大阪都構想の住民投票は、維新と蜜月関係にある菅義偉首相の政権運営にも影響を与えるのは確実だ。野党のふりをしながら与党に協力する「ゆ党」こと維新は、与野党対決法案で最後は賛成に回る政権補完路線を突き進んできた。都構想で維新が勢いづくか失速するのかは、今後の国会審議や次期総選挙をも左右すると見られている。

種苗法改定に反対する緊急集会(26日)

 10月26日招集の臨時国会で注目法案は、女優の柴咲コウさんが「このままでは日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます」(4月30日のTwitter。現在は削除)と警告を発した種苗法改定だ。この投稿も話題になったことで慎重論が広がり通常国会で継続審議となったが、自民党の森山裕国対委員長(元農水大臣)は18日に早期成立の考えを表明。これに対して反対派は、菅首相が初めて所信表明をした26日に審議入り前の緊急集会を開催。多くの野党国会議員が駆け付けて挨拶、成立阻止に向けた意気込みを語った。しかし案の定、そこに維新の国会議員は1人もいなかった。

松井維新代表は菅首相を絶賛も、農家は危機感あらわ

 維新代表の松井一郎・大阪市長に22日の会見で種苗法改定について聞くと、「法案の1つひとつ、僕は今まだ承知しているわけではない。種苗法が対決法案になるところもまだすべて承知しているわけではないので、国会議員団の政調会長、幹事長に一度意見を聞いてください」と答えた。

 しかし菅首相と松井氏は定期的に会食をするなど親密な関係だ。そこで「『新自由主義的な農政を進めている』と見られている菅総理と、農政、種苗法改定や(安倍政権時代に廃止された)種子法廃止について意見交換をしたことはないのか」と聞くと、菅首相を高く評価する回答が返ってきた。

 「菅総理は秋田の農家出身ですよ。農家が生き残るためにさまざまなことを、これまで何度も会う中で、地方の農業、どうやって生き残るのかずっと考えて、いろいろなことをやられている、官房長官時代もやっていました。だから安倍内閣になってから日本の農産品は輸出額めちゃくちゃ増えていますよ。それで今、農業に新自由主義を取り入れる。農業の負担を上げるような考え方ではやっておられません。秋田の農家出身なので」「だから農家をどうやって守るかを考えて、競争力を強化するのは必要です。だから農家を守るためにさまざまな提案をされていると捉えています」(松井・維新代表)。

 これに対して、山田正彦・元農水大臣は正反対の見方をしていた。

山田正彦・元農水大臣

 「TPP協定締結と種子法廃止に続くのが今回の種苗法改定です。今までは農家が自家増殖(採種)できたのに、改定されると、米国巨大企業『モンサント』などグローバル企業からタネを買わないといけない事態になりかねない。コスト高で採算が取れなくなり、廃業に追い込まれる農家が続出するのは確実です」。

 山田氏は、危機的状況にある農家の生の声を紹介したドキュメンタリー映画『タネは誰のもの』(現在上映中)の制作にも関わった。種苗法改定の問題点をわかってもらうには、農家の生の声を映像にするしかないと思い、原村政樹監督に相談。2人で全国各地の農家を回って、映画をつくり上げたのだ。

先の緊急集会でもこの映画が上映され、イチゴ農家の夫妻が登場する場面があった。現場を訪れた山田氏に対して、夫は「勢いがあって形が良いイチゴを“子ども”として残し、来年の“親”にする。これを何年か繰り返すことで良いものが揃うようになる」と、自家採取(増殖)の重要な役割を説明した。しかし種苗法改定で一律禁止となっているため、毎年苗を購入する事態に追い込まれる。

 山田氏が「これ(苗購入)でやっていけますか」と聞くと、夫は「できません」と即答。隣にいた妻も、「(苗の購入費は)売上に近い。働いている意味がなくなってしまう」と窮状を打ち明け、「(今まで通り)自家増殖でつくらせていただきたい」と訴えたのだ。

種苗法改定で日本の農家に壊滅的打撃

 何という皮肉なことだろうか。実家がイチゴ農家の菅首相が、イチゴ農家を含む全国各地の農家に壊滅的打撃を与えようとしているのだ。秋田の雪深き農村から上京した「叩き上げ」「庶民派」「苦労人」であるかのようにアピールする菅首相だが、化けの皮をはぐと、「米国益第一、日本国民二の次」のアベ政治を継承する冷酷非情な“売国奴的素顔”が露わになってくる。山田氏はこんな補足説明もしてくれた。

 「農業分野でも菅首相は、TPPや種子法廃止、農業競争力強化支援法など大企業がますます富む新自由主義的な農業政策をゴリ押しして来ました。第二次安倍政権の官房長官時代、TPPに反対した全農(全国農業協同組合中央会)の万歳章会長を辞任に追い込んだのは、菅首相と森山国対委員長と見られている。『政府の方針に逆らうものは排除する』という姿勢は、日本学術会議の任命拒否問題だけでなく、農業政策でも同じといえます」

 菅政権(首相)の売国奴的姿勢は、海外比較をすると一目瞭然だ。海外では保護されている農家の自家増殖の権利が消滅すると、日本の農家に壊滅的打撃を与えることになる。山田氏が種苗法改定阻止に向けて「最後まで闘う」と意気込むのはこのためだ。

 「EUもアメリカも自家増殖一律禁止ではなく、例外があります。主要農産物、コメ・麦・大豆は自家採取している。それなのに(今回の種苗法改定で)日本は一律禁止で刑罰まである。農業生産法人には3億円の罰金で、共謀罪の対象にもなるのです。少なくとも主要農産物と営業増殖のものはEUやアメリカのように例外とし、各地域の特産品、岡山のブドウとか長野県のリンゴとかは地方自治体が条例で定めて例外とするなど例外規定を盛り込まないと大変なことになる。最後まであきらめずに闘う」(山田氏)。

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11月1日は「ゆ党」維新の今後を左右する決戦の日

 所信表明演説でも「地方重視」の姿勢をアピールした菅首相は、地方の農家に壊滅的打撃を与える一方、「種を制するものは世界を制する」を企業戦略とするグローバル種子企業ボロ儲けの政策を進めようとしているのだ。

 臨時国会で種苗法改定が与野党対決法案となるのは確実だ。通常国会では検察庁法改正案と同様、ネット上で反対の声が広がって種苗法改定が成立断念に追い込まれたが、この時も維新の立場は不明瞭だった。主要野党が反対した検察庁法改正案に対して、維新は条件付き賛成で修正案を取りまとめようする「ゆ党」的な対応をしていたのだ。

 新自由主義的農政を進める菅首相を絶賛する松井代表率いる維新が、種苗法改定で反対を貫く可能性は皆無に近い。そんな維新の命運をかけた都構想の結果が、臨時国会での政権運営にも大きな影響を与えるのは間違いない。

【ジャーナリスト/横田 一】

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