2024年03月28日( 木 )

地域の特性生かし官民連携で実現へ「福岡モデル」の地域包括ケアシステム

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福岡市の現状

 少子高齢化に対応するために、国が進める政策の柱の1つが「地域包括ケアシステム()」だ。2005年6月の介護保険法改正で「地域包括ケアシステム」という用語が使われ始め、11年の同法改正では「自治体が地域包括ケアシステム推進の義務を担う」と明記され、地方自治体におけるシステムの構築が義務化された。団塊の世代(約800万人)が75歳以上となり、医療・介護・年金の危機に拍車がかかる2025年をメドに、その実現を目指している。

※地域包括ケアシステム
 高齢者の尊厳の保持と自立生活を支援する目的で、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」の5つのサービスを一体的に提供できるケア体制。 ^

 日本の高齢化の進展状況には大きな地域差があるが、福岡市はこれから高齢化が急速に進む都市の1つである。市の「福岡市地域包括ケアアクションプラン(2018~2020)」によると、福岡市は13年5月に人口150万人を突破し、人口増加が続く全国でも数少ない都市である一方、高齢者数の増加は生産年齢人口(15~64歳)の増加を大きく上回っている。

 なかでも伸びが大きいのは後期高齢者人口(75歳以上)で、15年に14万3,000人だったのが25年には22万8,000人(約1.6倍)になると予測され、この数は、17年9月末時点の博多区人口(21万8,000人)や早良区人口(21万5,000人)を上回る規模だ【表】。また、福岡市の特徴の1つとして、政令市で最も高い割合となっている単身世帯の多さが挙げられ、後期高齢者の単身世帯は、15年に3万8,000世帯、25年には7万4,000世帯(約1.9倍)、40年には11万1,000世帯(約2.9倍)と急激に増加することが予測されている。

資料:福岡市地域包括ケアアクションプラン(2018~2020)より

 こうした背景からも、福岡市における地域包括ケアシステムの構築は急務であることがわかる。福岡市は地域ケア会議を中心として、専門職と行政が議論し、市レベルの課題解決を図るとともに、地域への働きかけや支援の拡充などの取り組みを進めている。しかし、地域の特性に応じたシステムの発展・定着のためには、地域の自主性や主体性による連携も必要とされる。地域包括ケア推進に取り組む自主的な集まりである、(一社)地域包括ケアを支える会福岡事務局の木村敦彦氏に話を聞いた。

地域包括ケアを支える会インタビュー

地域に寄り添い現場の声を届ける

 ――「地域包括ケアを支える会」発足の経緯は。

 木村 2014年6月に発足した当会は、医療保険・介護保険事業者を中心とした民間団体で、福岡市と連携して活動しています。地域包括ケアにおいて福岡市の官民連携を強めるために同じ志をもつ企業を集め、民を代表した組織をつくろうという話になりました。当初は6社11名からのスタートでしたが、同志の声掛けから当会の活動に賛同してくださる企業が、6年間で143法人に増えました。

 ――活動内容は。

 木村 当会員は高齢者を顧客とする企業が多いのですが、日々の仕事を通じたコミュニティの場で聞こえてくる高齢者の生の声に耳を傾けることから始まります。高齢者が生活するなかで抱えるお悩みや心配ごとに対し、介護や法律、住まいを専門的に扱う企業が連携して対応することで、地域包括ケアにつなげています。そして、そうした個々の活動をもとに、年4回行われる例会などで意見交換を行い、整理した課題を年に一度「提言書」というかたちで市へ提出しています。

 例会では、顧問である国会議員・県議会議員・市議会議員や、市の担当職員にも参加していただくこともあります。提言書を通して一緒に協力し合い、地域包括ケアシステム「福岡モデル」の推進に貢献できるよう努めています。

 事務局では、日頃からも会員企業の発信する情報を全会員にメールで案内するなど、会内の“協助”にも努めています。また、厚労省をはじめ行政の動向を随時メール配信し、情報共有しています。行政とのパイプ役として、地域貢献ができる機会を提供できればと考えています。

 ――「提言書」の内容は。

 木村 会員間の意見交換のなかで、地域づくりにおけるさまざまな課題の抽出を行っており、今年8月の提言書では、(1)「人材確保と体制崩壊の防止について」、(2)「地域の担い手の維持などの都市デザインについて」、(3)「次期介護報酬改定」を踏まえた意見をまとめました。

 ――今後の展望は。

 木村 当会は10月より一般社団法人化し、より精力的に活動していきます。今後も、会員企業の拡大を図るうえでエリア分けを始めており、エリア会議などの地域に密着した活動を行うことで、それぞれの地域性を生かした連携が広がっていってほしいと思っています。そして、会員企業のそれぞれの視点を集約・提言し、地域包括ケアシステム「福岡モデル」の実現に向けた具体策、推進力として、当会が一助となるよう、福岡市のサポーターとして活動してまいります。

【松本 悠子】


(一社)地域包括ケアを支える会福岡
理事長 白水 誓一(宝満グループ会長)

 地域包括ケアを支える会が発足して7年目になりました。この会は地域包括ケアに関する活動を行い、地域福祉に寄与することを目的とし、行政との連携を図りながら地域包括ケアシステムの福岡モデルの構築を実践する団体で、業種や職域にとらわれることなく意見を交換し、目的に向かった活動をしています。医療・介護の事業者を中心に、高齢社会において志を同じくするさまざまな事業者の方々が参加しておられます。本年はコロナ禍において一堂に会する活動はできていませんが、例年通り福岡市におかれましては、本会からの「提言書」を受け取っていただきました。
 昨年の臨時総会におきまして法人化が提案され、本年、「一般社団法人地域包括ケアを支える会福岡」として新たに活動を継続していくところです。

地域包括ケアを支える会HP:http://chc-s.ace-cms.jp

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