2024年03月29日( 金 )

ブラウザ戦争の行方~インターネット検索のかなめ(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

スマホやパソコンでさまざまなウェブサイトを閲覧できるのは、「ウェブブラウザ(インターネットブラウザ)」というソフトウェアのおかげだ。Googleのクローム(Chrome)、Appleのサファリ(Safari)17.7%、モジラ(Mozilla)のファイアフォックス(Firefox)などが席捲するウェブブラウザ市場では、激しいシェア争いが繰り広げられている。

第1次ウェブブラウザ戦争の勃発

 このような状況下で、マイクロソフトはスパイグラス(Spyglass)という会社と、ブラウザ技術のライセンス契約を結び、ブラウザ戦争に参入した。マイクロソフトはスパイグラスのモザイクのライセンス契約を締結した後、それを基にしてインターネットエクスプローラー(IE)の開発に乗り出した。

 マイクロソフトは、1995年発売のWindows95の後継である「Windows95プラス」にIEを付けて発表した。IEは97年当時、ネットスケープ・ナビゲーターに圧倒されていたが、IEを無料とし、Windowsとセット販売する「抱き合わせ販売戦略」により、急速な勢いでシェアを伸ばした。Windowsが搭載されたパソコンを買うと、初期設定としてIEが付いていたため、当時ブラウザを有料販売していたネットスケープ社には不利な形勢となった。IEは2002年には96%もの大きなシェアを占めるようになった。

第2次ウェブブラウザ戦争の勃発

 04年頃に、オペラ(Opera)、サファリ、クローム、ファイアフォックスなどの次世代ブラウザが登場し、IEと競合するようになった。第2次ブラウザ戦争の始まりだ。

 アップル社が開発したサファリが03年に登場し、ナビゲーターを継承・発展させたファイアフォックスが04年に登場した。新しい機能をもつファイアフォックスは、セキュリティ、スピードなどで優位性を保ちながらシェアを伸ばし、IEを脅かす存在になった。

 Googleのクロームが普及するまでは、このファイアフォックスが主流であった。08年に登場したクロームは、通信速度の速さと動作の軽さを武器にして、シェアを急激に伸ばした。

 クロームがシェアを伸ばした大きな要因の1つは、GoogleがスマホのOSであるアンドロイドを開発したことだ。iPhone以外のスマホのOSはすべてアンドロイドであるため、アンドロイドのスマホにはデフォルトのブラウザとしてクロームが付くようになった。

 その結果、クロームは14年以降、ブラウザのトップの地位を完全に占めている。マイクロソフトのIEは、WindowsというOSが普及したことで市場を制覇したが、Googleはスマホが普及したことで市場を制覇したのだ。

 インタネットサービスを利用するためには、ブラウザが必須である。加えて、ブラウザを立ち上げて検索をするため、Googleのように広告業が主要ビジネスである会社は、検索エンジンとブラウザを制覇することが大切である。Googleはブラウザ、スマホ、広告を制覇することで、「Google帝国」を築いている。

 なお、ブラウザでは個人のインターネット上の活動履歴をすべて把握でき、それらのデータ情報をさまざまに活用することができる。ID、パスワードなどの個人情報が大量に販売されているというニュースにより、ユーザーが個人情報の取り扱いに敏感になっている。ブレイブ(Brave)というブラウザが個人情報の取り扱いを徹底し、広告をシャットアウトする機能により人気を呼んだが、この企業も個人情報をこっそり販売したことが判明し、ユーザーを失望させた。

 技術の発達により、インターネットはますます便利になっており、ブラウザをめぐる競争はこれからも激しさを増すだろう。

(了)

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