2024年04月20日( 土 )

中心市街地の活性化策がカギ 鍋島藩のDNAを受け継ぐ県都・佐賀市(前)

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佐賀市の中心市街地

佐賀藩城下町として発展

 佐賀県の県庁所在地である佐賀市。人口23万1,692人(2020年10月末現在)を擁する県下最大の都市ではあるが、九州7県の県庁所在地のなかでは最少で、緩やかな人口減少局面にある。“昭和の大合併”や“平成の大合併”の際に近隣の町村との合併を繰り返した結果、南北に長い県下2位の面積(約430km2)となった市域は、北は福岡市や糸島市に接しているほか、南は有明海に面しており、長崎自動車道付近を境とした北側が脊振山地に、南側が佐賀平野に属している。佐賀県における政治・経済の中心地である同市はこれまでどのような歴史を歩み、そして今後はどのような発展を遂げていくのか――。

  

 現在の佐賀市中心部の原型となる佐賀城の城郭と城下町は、1608(慶長13)年から11年にかけての総普請によって形成。藩祖・鍋島直茂、初代藩主・鍋島勝茂の父子による佐賀藩(鍋島藩)体制の確立後、藩内の総検地が行われ、道路や水路によって区画された。

 城下は武家地と町人地とに分かれるかたちで、城の周囲の城内エリアに武家地が、その周りに町人地が配され、その北側には長崎街道が折れ曲がりながら東西に貫くかたちで整備されている。このようなかたちで江戸期の佐賀は、佐賀藩の城下町として、また長崎街道の宿場町である「佐賀宿」としても栄えた。

 ただし、これら城下町の町割は城の周囲のそう広くない範囲にとどまっており、佐賀城の外堀にあたる十間堀川より北側は、唐人町などの一部を除いては、そのほとんどは田畑が広がっていたとされている。なお、江戸期の佐賀藩は全国屈指の教育先進地だったとされ、文武両道の教育を行う「弘道館」をはじめとした多種多様な教育機関を設置。幕末期には、十代藩主・鍋島直正や大隈重信などの“佐賀の七賢人”といわれる日本の近代化に貢献した有能な人材を多数輩出した。

佐賀城の本丸御殿を復元した「佐賀城本丸歴史館」

 明治期に入ってしばらくの間、佐賀市を含めた佐賀県は、数奇な変遷をたどることになる。1871(明治4)年7月に廃藩置県が行われると、佐賀藩は佐賀県となった。だが、同年9月に佐賀県は厳原県と合併して「伊万里県」となり、県庁は現在の伊万里市に置かれた。そして翌72年5月に伊万里県は佐賀県へと改称され、県庁は現在の佐賀市に移転された。

 74年2月、明治政府に対する士族反乱である「佐賀の乱(佐賀戦争)」が勃発。激戦の末に佐賀軍は明治政府に鎮圧されたが、このときに佐賀城は焼失した。また、この佐賀の乱への懲罰として76年4月には佐賀県が廃され、筑後の三潴県に併合。同年8月には三潴県が廃され、旧佐賀県は長崎県に移管された。そして政府への独立陳情などを経て83年5月、長崎県の10郡(佐賀郡、小城郡、神埼郡、基肄郡、養父郡、三根郡、杵島郡、藤津郡、東松浦郡、西松浦郡)が分離独立。これが現在の佐賀県だ。

 また、89年4月には市町村制の施行によって、現在の佐賀市中心部を市域とする佐賀市が誕生した。このときの市の面積は約4.8km2、人口はわずか約2万5,000人ほどだった。

 91年8月には、九州鉄道(後の国鉄およびJR)長崎線(現・JR長崎本線)の鳥栖~佐賀間の開通にともない、佐賀駅が開業。1935年5月には佐賀駅を起点とした国鉄佐賀線の佐賀~筑後大川間が開通したほか、翌36年10月には佐賀市営バスが開業するなど、交通インフラの整備も進んでいった。また、22年10月に神野村を佐賀市へ編入したことで、市域は約9km2に拡大。33年12月には九州で5番目の百貨店として「佐賀玉屋」が開業するなど、佐賀市は県都として栄えていった。

 その後、日本は第二次世界大戦に突入したが、佐賀市の中心部近郊には軍事施設や大工場もなかったことで、空襲への警戒感は低かった。だが、45年8月5日に諸富町から北川副町、水ケ江町一帯に空襲を受け、焼夷弾によって民家約500戸が罹災した。ただし、県庁や佐賀駅などの中心市街地については、大きな被害は出ていない。

(つづく)

【坂田 憲治】

(中)

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