2024年04月18日( 木 )

中心市街地の活性化策がカギ 鍋島藩のDNAを受け継ぐ県都・佐賀市(中)

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市町村合併で市域拡大

 空襲による中心市街地の大規模な焼失がなかったことで、戦後の開発は、江戸期からの城下町の町割を残すかたちで進められていった。現在も巨大な堀で囲まれた佐賀県庁などを含めた場内エリアなどが、そのわかりやすい名残である。

 戦後に行われたいわゆる“昭和の大合併”では、54年4月に西与賀村、嘉瀬村、巨勢村、兵庫村、高木瀬村が、同年10月には北川副村、本庄村、鍋島村、金立村、久保泉村が佐賀市に編入。10村が加わったことで、市域は約9km2→約103.7km2と10倍以上に拡大した。

 71年12月に佐賀南部バイパスが全面開通し、74年4月には国道34号北部バイパスが全面開通するなど、市中心部を取り囲むかたちの環状線が整備されていったことで、市中心部の渋滞緩和に寄与。75年5月には、現在地に佐賀市役所が移転開庁した。なお、旧庁舎があったのは佐賀県庁の堀を挟んで北側の対岸の場所で、今は「くすかぜ広場」として利用されているが、今後、県によって再整備が進められていく見込みとなっている。

 76年2月には国鉄佐賀駅が高架化完了にともない、約100m北側の現在地に移転開業。85年3月に長崎自動車道の鳥栖IC~佐賀大和ICが開通したほか、86年7月には三瀬峠のバイパスとして三瀬トンネルが開通、98年7月には川副町の有明海に面した場所に佐賀空港が開港するなど、交通インフラの整備が進んでいった。しかし、一方でモータリゼーションの進行とともに乗客数が減少したことで、87年3月に佐賀線が廃止。廃線跡は都市計画道路やサイクルロードとして転用されていった。

 2000年9月に、市内における初の郊外型大型商業施設として「ジャスコ佐賀大和店」(現・イオンモール 佐賀大和)が開業。03年3月には「モラージュ佐賀」、06年12月には「ゆめタウン佐賀」が開業し、市内に3つの大型商業施設ができた。しかし、これら郊外型の大型商業施設に人が集まる一方で、中心部の商業施設・店舗からは人のにぎわいが失われるなどの弊害も起きている。

 いわゆる“平成の大合併”では、05年10月に諸富町、大和町、富士町、三瀬村の3町1村が、07年10月には川副町、東与賀町、久保田町の3町が佐賀市に合併。これにより佐賀市の面積は4倍以上の約430㎢に拡大して唐津市に次いで県下2番目となり、現在に至っている。

安心&快適のゆとりあるまちへ

 合併を繰り返しながら市域を拡大してきた佐賀市だが、その結果、旧市町を統合したかたちでの全市的な基本構想・基本計画は白紙状態となっていた。そこで佐賀市は05年10月の合併によって新市が誕生したことにともない、行政経営における最上位計画である「佐賀市総合計画」を策定。旧市町のそれぞれで策定されていた都市計画マスタープランを統一するかたちで、新市の「佐賀市都市計画マスタープラン」を07年3月に策定した。

 さらに、策定後の07年10月に新たに3町が合併したことで、佐賀市総合計画を改定し、それにともない都市計画マスタープランも10年3月に改訂。現在、07年度からの概ね20年後を目標として、安心と快適性を兼ね備えたゆとりが感じられる住みよいまちづくりを目指している。

 都市計画マスタープランにおけるまちづくりの基本方針は「都市機能集約型のまちづくり」と「地域拠点連携型のまちづくり」の2つ。既存の都市機能の有効活用を図りつつ、中心市街地や地域拠点に都市機能を集約していくとともに、生活利便性に資する機能を地域拠点に集約させて中心部以外に複数の核を形成することで、それらが相互に連携・補完するまちづくりを目指していくとしている。

 将来的な都市構造は、まず佐賀駅周辺や城内エリアなどの主要な都市機能が集約する「まちなかゾーン」を設け、その周りや地域拠点などに住宅市街地の「住居ゾーン」をゾーニング。さらにそれ以外の市街化調整区域のエリアについては、用途や立地に応じて「田園集落ゾーン」「山村集落ゾーン」「有明海沿岸ゾーン」に分け、各ゾーン間を交流軸で結ぶことで、人・モノ・情報などの交流の活性化を促していく方針だ。

 また、主要な都市計画では、計画的な土地利用推進や美しい景観形成、交通体系整備、防災対策のまちづくりなどの複数の方針を提示。行政だけでなく市民の主体的な参画も促しつつ、地域資源を磨いてまちの魅力を向上させ、次世代に継承する“将来にわたって住み続けることができるまち”をつくりあげていく予定だ。

(つづく)

【坂田 憲治】

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