2022年08月10日( 水 )
by データ・マックス

【天神ビッグバン2020】さらなる容積率緩和や期間延長も コロナ禍で新設オフィス需要に暗雲(4)

クレーン転倒事故で作業員死亡「旧大名小学校跡地活用事業」

 天神ビッグバンにおける“西のゲート”と位置付けられている「旧大名小学校跡地活用事業」。同事業においては、事業者となった積水ハウス(株)、西鉄、西部ガス(株)、(株)西日本新聞社、福岡商事(株)の5社が「大名プロジェクト特定目的会社」を設立し、九州初進出のラグジュアリーホテル「ザ・リッツ・カールトン」を核とする地上25階・地下1階の高さ約111mのオフィス・ホテル棟を中心にした開発を進めている。本体工事は19年12月に着工し、竣工および全体供用開始は22年12月を、ホテル開業は23年3月を予定している。

「(仮称)旧大名小学校跡地活用事業」
「(仮称)旧大名小学校跡地活用事業」

 計画では、約3,000m2の広場を囲むように、北側に地上24階建ての「オフィス・ホテル棟」を、西側に公民館などの公共施設などが入る地上18階建ての「コミュニティ棟」を整備するほか、イベントホールや立体駐車場なども整備される。

 オフィス・ホテル棟の3階と17~24階に配置されるホテルは、世界各国で多種多様なラグジュアリーホテルを展開するマリオット・インターナショナルによる「ザ・リッツ・カールトン福岡」で、全162室の客室では、50m2以上の広々としたスペースを確保。ホテル内に6つのレストランやバーを備えるほか、ビジネス向けの会議室や特別なイベントに向けたボールルームや会議室、ウェディングなどで利用するチャペル、室内プールやジム、「ザ・リッツ・カールトン スパ」などを備える。

 オフィス・ホテル棟の3階と5~16階に配置されるオフィスは、ワンフロアの最大貸付面積を約2,500m2に設定。高度なセキュリティ機能と十分なBCP性能、耐震性を備えた安全・安心のハイグレードオフィスとなる予定で、MICE機能を備え、グローバルビジネスを呼び込むことも可能となっている。また、旧大名小学校南校舎に入るスタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」との連携も想定されている。1・2階の低層階には、日本初や福岡初進出の商業店舗の誘致が計画されているほか、コミュニティ棟では、低層階に公民館や保育施設などが配置。さらに4~18階には、国際水準のレジデンス(住居)が入る予定となっている。

 ところが、20年9月12日、建設作業中の大型クレーン車1台が転倒し、約7m下に落下する事故が発生。クレーンのアーム部分の長さは約40mで、隣接するビルにアーム部分がぶつかる被害も出たという。運転していた現場作業員の男性が意識不明の重体で福岡市内の病院に搬送されたが、その後に死亡したとされる。事故原因は、死亡した男性がクレーンを操作中に心筋梗塞で意識不明となったため。事故によって既設の鉄骨部分に歪みも発生した。なお、転倒したクレーンはすでに撤去され、工事も再開しており、工期に大きな影響は生じていないとされる。

北別館はMMTと一体開発か?定期借地で民間に貸し出す方針

 前出の天神BCの南側に位置する大型ビル「メディアモール天神(MMT)」も、隣接する複数のビルと併せて再開発される予定となっている。

 MMTは地上9階・地下3階建ての大型ビルで、敷地面積は約2,300m2。もともと1979年に「天神東急プラザ」として開業したもので、97年に天神ビブレの別館「天神ビブレ2」となったが、01年2月に閉店し、その後01年11月にMMTとして開業。16年には福岡地所がMMTを取得した。キーテナントのジュンク堂書店をはじめ、スターバックスコーヒー、サイゼリヤなどが入居していたが、天神ビッグバンを活用した再開発を決定。地上19階・地下2階建ての耐震性やデザイン性に優れた複合ビルに建て替える計画となっている。

解体が進む「メディアモール天神(MMT)」
解体が進む「メディアモール天神(MMT)」

 これにともない、20年6月末のジュンク堂書店福岡店の一時閉店をはじめとした入居テナントの退去が行われ、すでに退去が完了してMMTビルは閉鎖。建替えに向けた解体工事に入っている。新たな複合ビルは、24年末の開業予定とされている。

 MMTの西側に隣接する「市役所北別館」も21年12月以降に閉鎖予定で、その後は民間事業者による再開発を検討している。

 北別館は市役所本庁舎の道路を挟んで北側に位置し、地上9階・地下2階建てで敷地面積は約1,500m2。76年の竣工からすでに40年以上が経過し、老朽化が進んでいることから、入居する市の部署などを別の庁舎に移転させた後、建物を解体する。その後の跡地については、都心部にある貴重な市有地であり、将来の状況に合わせた土地の有効活用が可能なことや、長期にわたる財源が確保できることから、売却ではなく貸し出すことを決定。10~60年の定期借地として民間事業者に貸し出す方針としている。21年3月までに跡地活用事業者の公募を開始し、21年度以降に公募型プロポーザル方式によって事業者を選定したうえで、北別館の解体工事を実施する方針となっている。

 今後、一帯の天神BCとMMTとで天神ビッグバンを活用した再開発を進める福岡地所が、北別館についても事業者公募に応じる可能性は高いと見られ、事業者選定の結果によっては、MMTと北別館との一体開発も現実味を帯びてくるだろう。

(つづく)

【坂田 憲治】

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