コロナ禍のオフィス市場トレンド 空室率はやや上昇、21年の動向予想は?(前)
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オフィス市場動向・東京
「東京の賃貸オフィスのオールグレード(※1)空室率は、2020年3月(Q1)に過去最低水準の0.6%となったが、9月(Q3)は0.9%(対前期比+0.1ポイント)と6月から2四半期連続で上昇。コロナ禍で先行きが見えないことから、移転や解約、縮小のタイミングをうかがう企業が多く、本格的に動くのはこれからと見られる。経済の先行きへの懸念から、オフィスの拡張・新設などの投資に慎重な企業も増えている」。
こう話すのは、事業用不動産サービス会社・CBREグループ日本法人で、不動産賃貸・売買仲介、アドバイザリー、ファシリティマネジメント(FM)などを行うバリュエーション・アドバイザリー&コンサルティング・サービス本部 西日本カバレッジ部 福岡ディレクターに21年に就任する永松真吾氏だ。
オールグレード賃料は、コロナ前は上昇傾向だったが、テナント企業のコスト削減意識やビルオーナーの空室増加への懸念などから、Q3は2万3,270円/坪(Q2比▲0.9%)と2四半期連続で下落した。
17~19年の新規契約は新設・拡張によるものが7割を占めたが、20年は6割に低下し、その一方で縮小が1割まで増加。また、希望面積はコロナ前と比較して、中小規模ニーズがやや増加した(CBREに寄せられたオフィステナントからの問い合わせにおける移転理由)。
永松氏は、「リモートワークなど働き方の見直しにより、利用頻度の低い区画の解約や、新設・拡張移転の中止・延期も見られる。これまで大規模フロアの需要が高かったが、都心の一等地に拠点を置く部署と、リモートワークや郊外に移転できる部署の見極めが行われ、フロア規模の縮小や拠点の分散化が予想される」という。
オフィスグレード別賃料は、大規模ビルのグレードA(※2)のQ2比▲0.4%、グレードAマイナス(※3)の同▲0.9%に比べ、中規模ビルのグレードB(※4)では同▲1.3%と、下落幅が大きくなった。一方、空室率ではグレードBが0.7%と最も低く、「中規模ビルでは賃料を下げ、企業のコスト削減の受け皿となり、入居企業を確保する動きがある」(永松氏)という。
IT系スタートアップ企業が多い渋谷では、フルリモートワーク化でオフィス解約の動きが早く、すでに空室率が上昇して賃料は低下。航空、観光、アパレルなどのコロナ禍の影響が大きい業界を中心に、今後はオフィススペースの見直しが図られる可能性がある。また、一部の大企業ではリモートワーク導入やコスト削減にともない、オフィス面積の大幅削減の計画が発表されており、大型解約は徐々に増えていく可能性も小さくないと見られている。
※1:CBREが独自に設定した全国13都市のオフィスエリア内延床面積1,000坪以上のオフィス。新耐震基準準拠。 ^
※2:東京都千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区中心。貸室総面積6,500坪以上、延床面積1万坪以上、基準階面積500坪以上、築年数11年未満。 ^
※3:東京23区オフィスエリア内。貸室総面積4,500坪以上、延床面積7,000坪以上、基準階面積250坪以上(グレードA除く)。新耐震基準準拠。 ^
※4:延床面積2,000~7,000坪未満、基準階面積200坪以上(グレードA、Aマイナス除く)。新耐震基準準拠。^(つづく)
【石井 ゆかり】
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