2024年05月09日( 木 )

2009年再現する必要十分条件とは

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は「コロナ感染拡大は、菅首相Go Toトラベル推進が原因。コロナウイルスの変異も進行し、海外からの人の流入も制限せざるを得ず、東京五輪は中止に大きく傾き始めた。2021年に09年同様の政権交代が再現される必要条件が整いつつある」と訴えた12月25日付の記事を紹介する。


安倍晋三強制起訴劇場の幕が開いた。
パンドラの箱を開けてしまった。
自公は年内で幕引きすることを狙っているが、開演早々の終幕はあり得ない。

テレビ中継のある議院運営委員会での質疑だったが、安倍晋三氏に反省の色はまったく見えなかった。
「心からお詫びします」という言葉自体がウソなのだ。

ウソが衣装をまとっているのが、安倍晋三氏。
桜疑惑で安倍晋三氏は118の虚偽答弁を繰り返した。
昨年の除夜の鐘は107しか鳴らなかった。

除夜の鐘を突き始める前に、日産元トップが国外逃亡した。
ゴーンが1つ抜けて107になった。

自公は年内幕引きを狙っているが安倍氏の虚偽発言は118。
除夜の鐘で1つずつ消しても10のウソが残る。
自公は落胆するだろうが、10のウソが越年になる。

2021年、通常国会の最重要焦点が安倍晋三氏の証人喚問になる。
議院運営委員会の質疑では、お話にならない。

各議員の持ち時間のなかに安倍氏の答弁時間が含まれてしまうと、安倍氏が聞かれてもいないことをだらだらと答弁して、あっという間に時間がなくなる。
衆参両院でそれぞれ1日の時間をかけて、十分な質疑応答を行うべきだ。

年明け後、最初の課題が安倍元首相問題になる。
安倍事務所がパーティー費用の不足分を補てんしていた。
会費は1人5,000円だったが、実費は1人8,000円だった。
選挙区の有権者に対する利益供与は公選法違反の疑いが強い。

安倍氏は検察が不起訴としたから潔白だと主張したが、検察の捜査が正しい保証など存在しない。
検察と自公政治権力が癒着していることは公然の秘密。

8,000円会費のところ5,000円に割り引いてもらい、3年継続してパーティーに出席すれば利益供与の金額は1人1万円に近くなる。

これまで自民党国会議員が紙製のうちわを配った、観劇付きの団体旅行で利益を供与した、線香を配った、秘書が香典を持参したなどで大臣辞任や議員辞職などに追い込まれてきた。

安倍晋三氏の後援会ならびに政治資金管理団体の行為は極めて悪質かつ重大。
まずは秘書を逮捕して取り調べる必要がある。
ところが、検察は秘書に対しても公判を請求せず、略式起訴で幕引きを図った。

簡易裁判所が略式起訴を認めず公判を請求すれば、きちんと裁判が開かれた。
これもなかった。
権力と検察、裁判所の癒着が悲劇的だ。

繰り返すが、09年3月3日発生の西松事件、10年1月15日発生の陸山会事件と比較すべきだ。

こちらの事件は、小沢一郎氏の資金管理団体が政治資金の収支を事実通りに正確に記載して報告した行為が「虚偽記載」だとされて、現職衆議院議員を含めて元秘書が突然、逮捕、勾留、起訴されたもの。

どうして事実を事実通りに正確に記載して報告した行為が逮捕、勾留、起訴で、選挙区有権者に利益供与し、政治資金収支報告書に不記載であった事案で秘書が略式起訴の罰金処理、資金管理団体責任者が不起訴なのか。

検察が機能不全に陥る場合、市民は検察審査会に検察による処分を不服として審査を申し立てることができる。
元東京高検検事長の黒川弘務氏の常習賭博容疑について、検察は不起訴にしたが、検察審査会は12月24日、黒川氏に対して「起訴相当」議決を示した。

検察が再捜査して再び不起訴にしても、検察審査会が2度目の起訴相当議決をすれば、黒川弘務氏は起訴され、公判が開かれることになる。
安倍晋三氏を公選法違反、政治資金規正法違反で強制起訴すべきだ。

12月25日の議院運営委員会での質疑に際して、安倍晋三氏は安倍事務所がホテルから受け取った明細書も領収書も確認せずに質疑に応じた。
国民に対してガラス張りの状態で説明責任をはたすという言葉も虚偽。

今日の議運は21年の安倍氏強制起訴・議員辞職劇場の予告編。
本編が年明け後に開幕する。
安倍氏が強制起訴され、議員辞職して、最後に「希望」が残るのかどうか。

会社の社長が118回もうそをついて、「社員にだまされた」と説明して通用するか、と安倍氏は辻元清美議員に追及された。
日本共産党の田村智子議員も切れ味鋭い質問をぶつけた。
女性議員の追及が光る議運の質疑だった。

しかし、時間不足は鮮明。
安倍氏の答弁姿勢は国会で虚偽答弁を繰り返した頃と何も変わらない。
「心からお詫びします」の言葉があまりにも空虚だ。

国会で前夜祭参加費5,000円が少なすぎると追及を受けた。
明細書があればすべてが直ちにわかるとも追及を受けていた。
実費は5,000円よりも高く、安倍事務所が不足分を補てんしていたのではないかとも指摘された。

これらが国会質疑での焦点だった。

当然のことながら、議員が事実関係を明確な書類によって確認するのが常識。
秘書が独断で違法行為を行う理由がない。
秘書が独断で違法行為を行っていたのなら、安倍氏が秘書に対して告訴等の措置を取るのが当然だ。

秘書が何のために、独断で違法行為を行い、独断で内閣総理大臣に国会でうその答弁を繰り返させたのか。
合理的な理由が存在しない。
安倍晋三氏が事実関係を知らなかったわけがない。

国民に対してすべてをガラス張りにして説明責任をはたすというなら、ホテルが発行した明細書、領収書などを国会に提出して詳細を説明すべきだ。
ホテルが「営業上の秘密」するなら、国会は国政調査権を活用して国会法に基づく資料提出要求を行うべきだ。

安倍氏が明細書や領収書の国会への提出を拒絶する合理的理由がない。
本年2月17日の衆院予算委員会で立憲民主党の辻元清美衆院議員は安倍晋三首相に対して、「事実でなければ責任を取る覚悟でそこに座っているか」と質問した。

安倍氏は「総理大臣として答弁している。総理大臣として答弁していることはすべての発言が責任をともなう」と答弁した。

しかし、安倍氏の答弁は虚偽だった。
安倍氏は責任を取る必要がある。

菅義偉氏も官房長官として安倍氏の虚偽答弁を事実だとして答弁し続けた。
その責任も重大だ。

議運の茶番で幕引きできると思うなら大間違い。
内閣支持率は一段と急落する。
コロナの感染拡大にも歯止めがかからない。

11月3連休の前にGo Toトラブルを一時停止すべきだった。
菅義偉氏は連休が終わるまで意図して動かなかった。
12月11日にはニコ動で「ガースー」と自己紹介して、Go To一時停止について、「今は考えていない」と言い切った。

菅氏がGo To全国一時停止を表明したのは、わずか3日後の12月14日。
しかし、実施は12月28日。

東京都、大阪、札幌のGo To一時停止が前倒しで決められたが、停止されたのは、これら地域を目的地とするGo Toだけ。
これら地域を出発地とするGo Toは停止対象から除外された。
12月27日まで東京発のGo Toトラベルが駆け込みで大賑わいになっている。

感染拡大は菅首相が原因。
コロナウイルスの変異も進行している。
海外からの人の流入も制限せざるを得ない。
東京五輪は中止に大きく傾き始めた。

21年に09年同様の政権交代が再現される必要条件が整いつつある。

残るは、反自公陣営の候補者一本化調整。
連合の神津里季生氏を排除して共産党を含む野党共闘体制を構築する必要がある。
この十分条件が整えば、21年の政治刷新が必ず実現する。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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