バーチャル3D都市モデル「PLATEAU」国交省が整備(前)
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約50の3D都市モデル公開
国土交通省は、全国の都市を3D都市モデルとして仮想的な空間(サイバー空間)に再現するリーディングプロジェクト「Project “PLATEAU”(プラトー)」を2020年12月から公開している。3D都市モデルとは、都市の建物や街路、橋梁などの対象物に名称や用途、建設年、行政計画などの都市活動情報を付け加えることで、都市空間そのものを再現するものだ。PLATEAUは、この3D都市モデルを、誰もが自由に入手して活用できる3D都市空間情報プラットフォームとなる。
国交省は、PLATEAUのプロジェクトで東京都23区をはじめとする全国約50都市の3D都市モデルを3月末までに整備し、これらを活用して都市計画・まちづくり、防災、都市サービスの創出など「まちづくりのDX(デジタル・トランスフォーメーション)」を推進する。これに先立って、企業や国民に興味を深めてもらうためのティザー版のPLATEAUウェブサイトを20年12月に公開し、本プロジェクトの成果を情報発信している。
ティザー版では、東京23区を網羅した3D都市モデルなどを、ウェブブラウザアプリ「PLATEAU VIEW」で公開している。PLATEAU VIEWは、最先端の都市モデルをウェブブラウザ(※1)で体感できるものだ。サイバー空間に再現された都市をあらゆる角度から観察でき、都市空間に重ねるかたちで洪水時の浸水想定区域図や避難施設、都市のランドマーク、駅名などの情報を見ることも可能だ。
※1:PLATEAU VIEWは、最新のデスクトップ版のウェブブラウザChrome(クローム)、Safari(サファリ)、Edge(エッジ) 上で動作する。
1~3月にかけて、全国約50都市の3D都市モデルや人流データなどの都市活動データをPLATEAU VIEWで追加公開し、3D都市モデルのユースケース(使用事例)や実証実験の結果などを、ウェブサイトやSNSで順次公開していく。また、3D都市モデルを活用した新しい機能、商品、サービスのアイデアをチームでつくり出す「東京23区から新しい世界を創るアイデアソン/ハッカソン」が、1月16日と2月13日の両日でオンライン開催されている。
国交省は4月に、PLATEAUのオープンデータ化を予定しており、これらのデータは都市計画の立案や、都市活動のシミュレーション、分析に用いることができるようになる。3D都市モデルを活用することにより、都市計画や都市開発を最適化・科学化させ、市民が参加できて、何かが起こったときに素早く対応できるまちづくりを目指すという。
3D都市モデルの作成
都市の建物や地形を表す3Dモデルは、「都市計画基本図」などの建物、道路、公園など外形の2次元情報と、航空測量によって得られた建物・地形の高さ、建物のかたちのデータを掛け合わせてつくられる。3D都市モデルは、これらに「都市計画基礎調査」などから得られた、建物の現況や土地利用状況などの属性情報を付け加えたものだ。
3D都市モデルの特徴は、(1)都市空間を立体的に認識できる「ビジュアライズ(視覚性)」と、(2)立体情報をもった都市モデルを幅広く、精密にサイバー空間で再現できる「シミュレーション(再現性)」、(3)実世界の空間とサイバー空間が相互に情報を交換する「インタラクティブ(双方向性)」だ。
今回のプロジェクトでは、3D都市モデルをさまざまな都市活動データと組み合わせて、多くの分野で相互に利用できるよう地理空間情報分野の国際標準化団体「OGC(Open Geospatial Consortium)」が国際標準として定めたデータフォーマット「CityGML 2.0」を採用している。
CityGMLは、データの利用計画に応じて、建物などをどこまで詳細に再現するかを表すLOD(Level of Details)という概念があり、都市の建物や街路などの対象物に関する、形状や名称、種類、建築年など、空間・時間・主題に関するすべての情報を一元的に管理・蓄積・利用できるようになる(図1参照)。
たとえば、建物の「LOD1」では、建物を高さのある立体的な「箱」として再現する。「LOD2」では、屋根の形状を表現でき、都市計画や建築規制の検討に利用できる。さらに「LOD3」では、門や堀、車庫、庭など建物の外にある構造物(外構)、窓やドア(開口部)を再現でき、建築計画の検討や自動運転、ドローン配送に用いられる。最終的な「LOD4」では、BIM/CIMなどの室内の各フロアの状況までモデル化し、屋内外を隔たりなくサイバー空間で再現できる。国交省は、約50都市の3D都市モデルをLOD1・2、今後は必要に応じて都市の中心部など一部のエリアをLOD3・4で公開する予定だ。
また、PLATEAUで整備する3D都市モデルは、CityGMLの拡張形式(ADE:Application Domain Extension)である「i-都市再生技術仕様案(i-UR)」を採用し、都市計画や都市活動を見える化しやすくしている。たとえば、建物や土地利用の現状などの都市計画に必要な情報を、建物や土地の属性として追加し、行政区域や統計グリッドなどを地形に追加している(図2参照)。
(つづく)
【石井 ゆかり】
Project “PLATEAU”
ウェブサイト :www.mlit.go.jp/plateau/
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