2024年04月16日( 火 )

バーチャル3D都市モデル「PLATEAU」国交省が整備(後)

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都市データ活用の可能性

 国交省は、全国約50都市で整備した3D都市モデルを参考に、データ整備に関する標準的な仕様書や作業手順書、利活用マニュアル、活用事例集などを、4月に公開する。21年度以降はこれらの事例を参考にして、各地の地方公共団体が民間企業と提携して3D都市モデルを作成し、活用する取り組みを全国に展開することを目指している。

 国土の地形や地価、地盤などの情報は、これまで国交省や国土地理院を中心に管理されてきた。その一方で、その場所が「どう使われて」「何が起こっているのか」という都市活動のデータは、各地方自治体に分散して管理されている。そのため国交省は、これまで別々に管理されてきた現実の都市の地上部分の情報と、仮想空間のデジタルデータを3D都市モデルとして組み合わせることを目指す。国交省が進める「まちづくりのDX」計画では、国土とそのうえにある都市を3D都市モデルとして集積して、各種データを組み合わせることで、人の流れや気候、交通などの解析や複雑なシミュレーションを行うこともできるという。

 国交省は、PLATEAUを誰もが自由にダウンロードして利用できるオープンデータとして整備することとしており、将来的にはAPI連携により、データの流通や活用がさらに広がることを見込む。

3D都市モデルの利用事例

 ユースケース(利用事例)の実証実験(※2)として、人やモノの動きを俯瞰で見る(1)「都市活動モニタリング」、洪水被害などを見える化し、緻密な避難計画を考える(2)「防災」、都市開発のシミュレーションやビジョンを共有する(3)「まちづくり」のほか、新しいサービスを生む「民間サービス開発」などがパートナー企業との提携により、全国で実施されている。今後、一般公開されるデータはPLATEAUから入手できるが、公開データ以外を利用するときは実施企業への問い合わせが必要となる。

※2:企業が民間サービスとしての実用化に向けて、実際の場面で使用して検証すること。

(1)都市活動モニタリング
ソーシャルディスタンシング判定技術

 日本電気(株)が宇都宮市で実施。まちなかの固定カメラの映像を個人情報保護に配慮したかたちで解析。繁忙期(21年1月)に、ソーシャルディスタンシング(たとえば2m)の確保状況の可視化し、混雑度を統計データ化する技術を検証している。これらは、イベント開催や都市内回遊性、感染拡大防止などの推進に活かされる。

(2)防災
洪水浸水想定区域図の3D化

 アジア航測(株)が東京都23区で実施。3D都市モデルの立体的な都市構造を用いて、災害リスクを直感的にわかるよう見える化し、「ハザードマップ」のように利用して防災意識の向上に役立てる。東京都23区の洪水の浸水想定区域図を、3D都市モデルと重ね合わせて3次元化した。

(3)まちづくり
都市開発にともなう、歩行者量の変化の可視化

 ウォーカブルな拠点整備を目指し、パナソニック(株)が大阪市で実施。将来的にリニア中央新幹線の乗り入れや周辺地域の再開発が検討されている新大阪駅で、歩行者の動き(回遊・滞留状況)や整備方針を、3D都市モデルを活用して見える化し、周辺地域や駅施設のあるべき姿を議論するツールとして用いる。

出典:国土交通省「Project-“PLATEAU”」ホームページ

(了)

【石井 ゆかり】


Project “PLATEAU” 
ウェブサイト :www.mlit.go.jp/plateau/
Twitter:@ProjectPlateau

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