2024年04月25日( 木 )

足立区江北地区の都有地を活用、木密地域を移転し共同住宅を整備(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

東京の木密地域とは

 木密地域とは、戦後から高度経済成長期にかけて東京に人口が集中するなかで、道路などの都市基盤が十分に整備されないまま木造住宅が建てられ、市街地化が進行した地域を指す。主にJR山手線外周部の広範囲にわたる。

 東京都は、「防災都市づくり推進計画」により、災害に強い都市を目指し、震災時にとくに甚大な被害が想定される地域として指定される「整備地域」を対象に、安全で良質な市街地を形成するため、防災生活道路等の基盤整備、建築物の不燃化・耐震化、共同化などに取り組んでいる。

 今回の整備事業の移転対象地域である「西新井駅西口一帯地域」は、昭和初期までは農地が広がる田園地帯であったが、戦後の復興期である55年ごろから急速に都市化が進んだ。65年ごろに環状7号線が整備されるのにともない、駅周辺や農村集落などを中心にして市街地が拡大。移転対象地域の南部にあたる荒川沿いは、中小規模の工場と低層住宅が混在する、人口密度が高い準工業地域となっている。

 「整備地域」に指定されている「西新井駅西口一帯地域」は、狭小地、未接道など法規制により同規模の建替えが困難であることや、借地であるケースが多く、土地の権利関係が複雑であることなどによって、建替えが進みにくいことが指摘されていた。また、住居の移転に関しても、地域に根強いコミュニティがあり、高齢化が進んでいるため、住み慣れた地域に住み続けたいと要望する住民が多く、希望に合う移転先の確保が難しいことが整備における課題となってきた。

 本事業の移転対象者は、移転対象地域に住んでいて、「防災都市づくり推進計画」に基づいて、道路や公園の整備、老朽住宅の除却や建替えなど東京都や足立区が行う事業で移転が必要な人や、1981年5月31日以前に建築されたいわゆる“旧耐震”の建築物に住んでいて経済的理由などで移転先の確保が困難な人、住宅の接道状況などで建替えが困難な人となっている。

事業用住宅のイメージ

「路地風」空間の整備

事業用地

 今回の整備事業で移転先の住宅が整備される足立区江北地区は、東京の北東部に位置し、東京駅から電車で30分程度の、埼玉県との県境にやや近い場所だ。低層住宅が大半を占め、駅周辺には飲食店舗などの商業施設が並ぶ。都有地は、都営日暮里・舎人ライナー江北駅から西に徒歩10~15分の住宅地にある。緑が多く大きな広場がある「足立区立江北平成公園」に一部で隣接し、東側は都営江北4丁目アパートなどが並ぶ地域だ。規模の大きな公園や幅員の広い道路があり、木密地域のように路地や幅員の狭い道路は少ない。

 本事業では、「移転先住宅は安全性を確保しつつ温かみのあるデザインの木造準耐火建築物をつくり、路地空間などを配置して交流を生み出すことで、温かさを感じる木造住宅が並ぶ木密地域の良さを継承する」(東京都都市づくり公社)といい、木密地域の共同建替えを促進するためのモデル住宅として、都は活用していきたい考えだ。

(つづく)

【石井 ゆかり】

(前)
(後)

関連記事