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2021年02月08日 11:04

所有者不明の土地、空き家問題~公共工事で発覚する深い闇(前)

大阪経済法科大学 経済学部教授 米山 秀隆 氏

 道路の幅を広げる公共工事などで判明する持ち主がわからない「所有者不明の土地」は増え続け、その面積は全国で830km2と九州を超える広さとなっている。所有者不明の空き家は老朽化して近隣に危険がおよぶが、解体する際に自治体が費用を回収することもできないなど問題となっている事例も多い。その実態とどのように対策すべきかを見つめた。

増加する所有者不明の土地

大阪経済法科大学 経済学部教授 米山 秀隆 氏
大阪経済法科大学 経済学部教授 
米山 秀隆 氏

 土地の登記簿などからすぐに所有者を見つけられない「所有者不明の土地」は増え続け、その割合は20.3%、全国で830㎞2と九州の面積を上回る(2016年度総務省の所有者不明土地問題研究会推計)。

 親から子へと相続される土地の引き継ぎ手がおらず、管理する人がいない土地も増えている。所有者が亡くなった場合の相続登記は義務ではないため、土地の固定資産税や管理費用などが不動産価値を上回る場合は相続登記がされないケースも多い。先祖代々の土地でも所有者が高齢で身寄りがない、子どもが遠方在住やおらずに相続できないケースでは、亡くなった後に所有者不明となる。相続放棄された場合も、次の管理者が見つかっていないケースがほとんどだという。

 そのため、道路の幅を広げる公共工事などの際に、自治体が土地の所有者が不明という実態に直面して探索することになるが、3代も相続登記されてない土地を遡ると、所有者(故人)の子孫は数十人以上にのぼることもあり、膨大なコストがかる所有者の探索には手を付けられなくなる。

 住宅・土地政策、空き家問題に取り組む大阪経済法科大学経済学部教授・米山秀隆氏は、「不動産価値が高く、デベロッパーが土地を集約してマンションを建設するなど利益が生まれる土地であれば、多額のコストをかけても所有者の調査が行われるだろう。しかし、そうでない場合は自治体の負担が大きすぎて調査が追い付いておらず、崖の上の所有者不明の竹林から折れた竹が民家に落下、豪雨で崖崩れの危険など地域住民への大きな問題が起きたときに、自治体が介入して所有者を探索するのが実情だ」と語る。

最終的には自治体が管理?

空き家 人口が減少している鳥取県日南町では、所有者が管理できずに不要となった山林を、死亡後に相続がなされず所有者が不明となる前に町に無償で寄付し、町が所有する取り組みが進む。災害・トラブルの未然防止などもあるが、所有者不明となった場合の多大な探索コストは自治体の負担となるため、所有放棄を先に認めて町で所有した方がはるかにトータルコストは低いと見込んだという。

 山形県鶴岡市のNPO法人「つるおかランド・バンク」では、空き家や空き地をNPOに低価格で売却し、補助金を活用して土地を使いたい人に斡旋している。米山氏は、「ランド・バンクは国も支援しているが、土地価格による収益性の低さなどからうまく運営されているものは一部にとどまるといわれ、町中以外の市場需要が低い土地は流通させにくい。財務省は、相続人がいない土地を国有化しやすくする仕組みを検討しているが、不動産価値があって売却しやすい物件に限られるため、どこまでこの問題を解決できるかは疑問だ」という。

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 また、米山氏は「相続登記コストを下げたりペナルティ(過料)で義務化すると、相続登記されない土地は減るだろう。法務省の法制審議会では、どうしても持ち続けられない土地は、管理が容易にできることを条件に放棄を認める案も検討されている。その先には、放棄料支払い(固定資産税や管理費相当の数年分など)を条件として放棄を認める方向性も考えられ、その場合、最終的には自治体が管理せざるを得なくなる。また、自治体が管理できない土地を寄付として受け入れる道もあるが、いずれにしろ自治体が多くの土地を抱えることになる。自治体単独でその管理費は負いきれず、国が負担する必要が出てくるのではないか」と話す。

(つづく)

【石井 ゆかり】


<PROFILE>
米山 秀隆
(よねやま・ひでたか)
大阪経済法科大学経済学部教授。1963年生まれ。86年、筑波大学第三学群社会工学類卒業。 89年、筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了後、(株)野村総合研究所、(株)富士総合研究所、(株)富士通総研経済研究所を経て現職。住宅・土地政策、空き家問題を専門としている。主な著書に『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『世界の空き家対策』(学芸出版社、編著)、『限界マンション』『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社)などがある。

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