2022年06月29日( 水 )
by データ・マックス

“オール古賀”の取り組みで持続可能な明るい未来に向けて(前)

古賀市長 田辺 一城 氏

コロナ対策に腐心しながら市として着実に前進

 ――2020年は全世界的に激動の年でしたが、振り返っていかがでしたか。

古賀市長 田辺 一城 氏
古賀市長 田辺 一城 氏

 田辺 まず何といっても、新型コロナウイルス感染症にしっかりと対応し、市民の命を守る観点からスピード感をもってさまざまな対策に取り組んできた1年だったと思います。本市では、市民の皆さまがどのような状況下に置かれているかの実情把握に努め、それに沿ったかたちで、大きく3つの柱を立てて対策を講じてきました。1つ目が「チルドレンファースト」で、これは子育てや教育などについて、子どもたちへの悪影響を最小限に止めること。2つ目がひとり親家庭への支援など、経済的困窮に対する対策。そして3つ目が事業者支援で、飲食店に代表される小規模事業者を対象にした緊急支援金など、本市独自の対策を講じてきました。

 こうした新型コロナとひたすら対峙していくことを前提としながらも、その一方で“コロナ後”を見据えたさまざまな取り組み―たとえば本市の「一丁目一番地」に位置付けている古賀駅周辺再開発を含めた中心市街地活性化への取り組みであったり、新たな産業団地の開発検討や企業誘致の取り組みであったり、デジタル化の推進に向けた動き―など、市として進めなければならないことについてはコロナ禍であっても着実に進めることができた、そうした1年だったと思います。

 なお11月には、国の史跡である「船原古墳」から出土した金銅製の馬具「二連三葉文心葉形杏葉」が、玉虫(タマムシ)の翅(はね)で装飾されていることが明らかになりました。玉虫装飾の品物自体が、今回のものを含めてもこれまでに法隆寺の国宝「玉虫厨子」など国内で5例しか見つかっていない貴重なものであることに加え、玉虫装飾の馬具としては国内で初の事例だと聞いています。市内で“国宝級”の品物が出土したというのは、本市にとっての2020年の嬉しいニュースの1つでした。

 ――コロナ禍で休業となった薬王寺温泉の温泉旅館施設を、インキュベーション施設としてリノベーションされるとお聞きしています。こちらの進捗状況はいかがでしょうか。

 田辺 コロナ禍の影響を強く受けて、本市の大切な観光資源であり地域資源である天然温泉を有する旅館「快生館」さんが、5月ごろに事実上の閉館となってしまいました。やはり天然温泉という地域資源はまちづくりにおいても非常に重要ですから、何としても失ってはならない。そのために、市としてどのようなことをできるかを考えました。

 そこで旅館だった施設をリノベーションし、天然温泉付きのシェアオフィスやコワーキングスペース、サテライトオフィスなどのインキュベーション施設として、さまざまな“業”を起こせる場へと再生することを考えました。これは“ウィズコロナ”や“アフターコロナ”を見据えた「温泉×新ビジネス」という新たな挑戦であり、働き方の変容への対応によって大都市などからの移住・定住を促すことにより、持続可能な都市の形成を図ろうという狙いもあります。20年9月議会での予算の提案および承認を経て、すでに公募型プロポーザル方式で事業者の選定を実施しており、実現に向けて走り出しています。

インキュベーション施設へと改修される薬王寺温泉の「快生館」
インキュベーション施設へと改修される薬王寺温泉の「快生館」

古賀駅を起点に中心市街地を活性化

 ――「一丁目一番地」とする古賀駅周辺再開発に向けてはいかがですか。

 田辺 古賀市は大きく分けて、市の東部に位置する小野地域(旧・小野村)、南部に位置する青柳地域(旧・青柳村)、そして北西部に位置する古賀駅周辺を含めた市街地と、3つのエリアで構成されています。本市では、これら3つのエリアをそれぞれ元気にしながら、「コンパクト+ネットワーク」というかたちで結んで連携させることで、まち全体を活性化させていく――というまちづくりを現在進めており、私が市長就任後はとくに傾注して取り組んでいます。

 古賀駅周辺は、古くからの商店街などが広がる西口と、ニビシ醤油(株)さまをはじめとした工場が立地し、「リーパスプラザこが(古賀市生涯学習センター)」などの公共施設も近くに集積する東口の2つのエリアに分かれてていますが、駅を中心とした回遊性の向上および賑わい創出を図るための東口の再開発が、本市の長年の悲願となっていました。それが19年11月に東口の最大地権者であるニビシ醤油さまと開発に向けた協力協定を締結することができ、現在は21年度中の都市計画決定に向けた準備を順調に進めています。そしてその後、東口でどのような開発を進めていくか――たとえば商機能をいかに付与していくか、駅前一等地の立地を生かした住環境をどう整備するか、先に述べた市の交流拠点と駅東口とをどうつなげて回遊性のある空間をつくっていくかなどを念頭に置きながら、22年度末までに用途地域の変更を行ったうえで、具体的なハード整備の段階に入っていく予定です。

JR古賀駅東口
JR古賀駅東口

 一方の西口は、昔からの商店街が広がるエリアですから、東口のように面的なハード整備を行うというわけにはいきません。そこで、既存の商店街の“本質的な再生”に向けた活性化策に20年度から着手しています。具体的には、油津商店街(宮崎県日南市)を再生させた実績があるほか、本市の女性起業家「コガジョ塾」のプロジェクトにもご協力いただいた木藤亮太氏((株)ホーホゥ代表取締役)からエリアマネジメントの支援・指導を受けながら、市民と行政が一体となって、ともに考え、アイデアを出し合って、商店街の再生に取り組んでいきます。やはりまちづくりにおいては、一過性の浮揚策ではなく、持続的に賑わいを創出していける仕組みづくりが重要になります。木藤氏のようなプロフェッショナルの方々の力も借りながら、まずは3年間で新たなまちづくり組織を立ち上げるところまで漕ぎ着け、その後は市民が主体となってまちづくり組織の運営に携わっていく――。そうした活性化に向けたソフト事業を進めていきます。

 それぞれアプローチは違いますが、東口の再開発や西口の商店街再生の取り組みが進んでくれば、さまざまな“業”が生まれ、そこに人が行き来し、住む人が増え、すると商機能の重要性も高まっていくでしょう。まずは先行して西口におけるソフト事業から進んでいきますが、その機運を東口にも波及させ、やがては東口と西口とが一体となって相乗効果を発揮しながら、古賀駅を起点として中心市街地を盛り上げていきたいと考えています。

(つづく)

【坂田 憲治】


<プロフィール>
田辺 一城(たなべ・かずき)
1980年5月、古賀市出身。福岡県立福岡高等学校、慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、2003年に毎日新聞社入社。11年4月に福岡県議会議員に初当選し、2期務める。18年12月に古賀市長に就任。現在1期目。

(後)

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