2021年12月02日( 木 )
by データ・マックス

中国が狙うイランの原油と天然ガス~支払いはデジタル人民元で(中)

国際政治経済学者 浜田 和幸

デジタル人民元による支払い、アメリカにとっては悪夢

 中国にとっては、アメリカに取って代わるまさに千載一遇のチャンス到来というわけだ。中国の習近平国家主席はイランの最高指導者ハメネイ師と直談判を繰り返し、「中国イラン総合戦略パートナーシップ」協定を結んだ。両国間の長期的な通商、軍事協力を加速させる内容である。この合意を受け、中国はイランに対し、今後25年の間に4,000億ドルの投資を行うと表明。

 具体的には、イラン国内の銀行・通信・港湾・鉄道などの広範なインフラ整備に中国が全面的に支援体制を組むことになる。その見返りに、中国はイラン産の原油を国際価格と比較して大幅に下回る金額で調達できるという仕掛けである。すでに、イランにとって中国は最大の貿易通商相手であり、とくにイラン産原油の最大のバイヤーになっている。しかも、支払いはデジタル人民元でOKという。

 これらはアメリカにとって悪夢といっても過言ではないだろう。イラン封じ込めを意図していたアメリカの対中東政策を根底から覆す動きを中国が演じているからだ。国内の課題を優先するはずのバイデン政権であっても、この状況が続けば、アメリカと中国がイランをめぐって激突する可能性も否定できない。なぜなら、「戦争ほど儲かるビジネスはない」というのがアメリカの隠された本音であるからだ。

 イラン政府はアメリカに対して、核合意復活への交渉を示唆している。しかし、バイデン政権はB‐52戦略爆撃機を36時間で湾岸地域との間を往復する即応体制を強化。加えて、空母をこれまで以上の頻度で中東に派遣する方針も打ち出している。実は、バイデン大統領はトランプ前大統領よりもはるかに軍需産業と緊密な関係を維持してきた政治家である。
その点を見誤ってはならない。既存の大国と新興の大国との覇権争いが引き起こす経済、軍事的な対立は歴史上避けられない。イラン情勢をめぐって、アメリカと中国との間で歴史が繰り返される可能性は日に日に高まっている。

マイニング業者の 注目を集めるイラン

 最近、日本でもビットコインの取引価格が急騰し、投資家の間で大きな関心を呼んでいる。実は、ビル・ゲイツを抜き去り、世界1の大富豪の座を手にしたテスラやスペースXの創業社長であるイーロン・マスクも「ビットコイン信奉者」である。将来、宇宙旅行ビジネスや火星に理想の都市を建設するとの構想を語っているが、そこで流通するのは「ビットコインがふさわしい」とまで断言するほどの入れ込みようである。 

 そうしたビットコインの普及にとって欠かせないのが「採掘(マイニング)」である。マイニングとは、ビットコインの取引記録を取引台帳に正確に記録する作業のこと。膨大な計算量が必要になるため、有志のコンピューターを借りて、皆で共有し監視できる大きな取引台帳へ追記している。追記処理を成功させた人にはビットコインが報酬として支払われる仕組みである。その報酬を求めて、個人の有志だけではなく、ビジネスとして参加する専門業者も雨後のたけのこのように急増した。 

 とはいえ、数多くのコンピューターを稼働させるため、使用する電力量は半端でない。そのため、マイニングの専門業者は電気料金の安い国を求めて設備を急拡大させている。そこで注目を集めているのがイランである。豊富な石油や天然ガスの恩恵で、イランの電気料金は他国と比べて非常に安価。kWhが0.006ドルと、ほぼただ同然と言っても過言ではないだろう。 

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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