2024年04月24日( 水 )

50年、100年先を見据え“市民力”を核としたまちづくりを(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

大野城市長 井本 宗司 氏

100年先を見据えながら高架下活用でにぎわい創出

 ――総合計画の重点目標の1つとして、「西鉄連続立体交差事業の推進と高架下空間の活用」を掲げていらっしゃいます。この方向性や事業計画、期待される効果などについてお聞かせください。

高架下利用基本計画のイメージ
(※現時点でのイメージであり、
実際とは異なる場合があります)

 井本 福岡県と西日本鉄道(株)によって春日原~下大利区間で進められている「西鉄天神大牟田線連続立体交差事業」――いわゆる“高架化”は、慢性化する交通渋滞の解消や市街地の分断の解消を目的に、2003年度から行われている事業です。22年度に高架化が完了する見通しですが、本市ではこれによって生まれる高架下の大きな空間とその周辺を活用し、人のにぎわいと回遊を創出する事業を進めています。そして、その基本となる「高架下利用基本計画」を20年9月に策定しました。

 本計画に基づいて、高架切替後に下大利駅から白木原駅の高架沿いに幅10m超の広い歩道をつくり、木々のみどりやベンチ、歩行者用の屋根の設置、電柱の地中化など、質の高い歩行空間を形成していきます。また、下大利駅と白木原駅の中間にある県立高校前の高架下と周辺は、駅間のにぎわいの創出とともに、高校との連続性を考慮した多目的広場、ならびに広場と広幅員歩道を一体的に利用するための大きな屋根を整備し、多目的広場の両側には、多世代が交流できる複合型交流施設を整備します。白木原駅から春日原駅の高架下は、日常的な歩道や散歩道として利用できる散策路を整備するほか、途中にある牛頸川に架かる鉄橋はそのまま活用し、かつての線路が感じられるような広場にすることで、散策時の休憩場所としても利用していただきたいと考えています。

 下大利駅から春日原駅までの高架下には、鉄道による分断が解消されることから、交流と憩いの場として新たに4つの広場と、駅利用者の利便性向上のため、各駅に隣接して駐輪場を整備します。すでに、連立事業に併せて下大利駅東土地区画整理事業や、白木原駅前線、春日原駅前線整備や駅前広場整備などの街路事業も進めており、側道も再整備していきます。

 現在の西鉄天神大牟田線は、1924年に九州鉄道として開業したのが始まりで、まもなく100年が経とうとしています。大野城市は前身の大野村や大野町のころから、この鉄道路線の沿線という立地を生かしながら発展を遂げてきました。現在の大野城市の姿があるのは、1つはこの鉄道路線の恩恵によるところ大といっても過言ではありません。先人が築き上げてくれた鉄道インフラを、新たなかたちにしながら次の時代にどう受け継いでいくか――。本市の50年先、100年先を見据え、次世代の方々にも喜んでもらえるまちづくりを展開していきたいと思います。

市民が誇りを感じられる魅力あふれるまちに

 ――隣接する春日市とは、西鉄の高架化事業をともに連携しながら進めておられますが、市街地が連続して市役所同士が約1kmと近距離にあるなど、経済面でも市民生活の面でも密接なつながりがあるように思われます。

大野城市長 井本宗司 氏

 井本 おっしゃるように、春日市とは市役所同士の距離が近いだけでなく、まちの特性や取り巻く環境なども類似している点が多くあります。大野城市役所の最寄り駅は春日市にある西鉄春日原駅ですし、両市の中心部は市街地がほぼ連続しているなど、密接につながっています。そのため、これまで行政運営上のさまざまな点において連携し、情報共有などを図ってきました。とくに、現在のコロナ禍においては、春日市を含めた筑紫地区の他自治体とも情報交換などを図りながら、市独自の支援策にもつなげてきたところです。実は大野城市は春日市だけでなく、太宰府市、筑紫野市、那珂川市の旧・筑紫郡のすべての市と隣接しています。“筑紫は1つ”の思いの下、今後も近隣との連携を深めながら、さまざまな政策を進めていきたいと考えています。

 ――最後に、大野城市が将来的にどのようなまちになっていってほしいか、していきたいか、井本市長の“夢”を語ってください。

 井本 大野城市は来年、市制施行から50年という記念すべき年を迎えます。この記念すべき節目において、これまでのまちの歴史を振り返りつつ、これからの50年を見据えた、新たなまちづくりについても挑戦していかなければなりません。本市の強みである“市民力”を核に、先人たちが築き上げてきた歴史の重みを大切にしながら、市民のため、そして次の時代を担う世代のために、市の未来を切り拓いていく取り組みを力強く進めていきたいと考えています。そして、ここで生まれ育った市民だけでなく、移り住んで来られた市民にも、大野城市のことを“誇り”に感じてもらえるようなまちづくりを進め、進学や就職、転勤などでたとえ大野城市から一度転出したとしても、「いつかは心のふるさと・大野城に戻りたい」と多くの人に思ってもらえるような、そんな魅力あふれるまちにしていきたいと思います。

(了)

【坂田 憲治】


<プロフィール>
井本 宗司
(いもと・むねじ)
1952年4月、大野城市出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、77年に財団法人九州生産性本部に入社。91年に福岡県議会議員に初当選して同議員を4期・14年務める一方、2003年5月には第56代福岡県議会議長に就任。05年7月に福岡県議会議員を辞職し、同年9月に大野城市長に初当選。現在、4期目。
 

(中)

関連記事