2024年04月26日( 金 )

日本でも無視できなくなったESG投資、環境性能が不動産市場に与える影響(後)

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レンドリース・ジャパン(株)
建設部プロジェクト
マネジャー 宮本 順子 氏

 米国で誕生したグリーンビルディング認証制度「LEED」は、建築や都市の環境性能を評価するシステム。2020年時点のLEED認証件数は、世界で累計8万6,000件以上に拡大しており、LEED認証取得ビルは、外資系企業にとってベンチマークとなっている。コンサルタントやプロジェクト・マネジャーとして、建築設計と近隣開発のプロジェクトに携わり、LEEDやオフィスのウェルビーイング認証・WELL認定の評価員を務める、レンドリース・ジャパン(株)の建設部プロジェクト・マネジャー・宮本順子氏に聞いた。

大都市以外への普及、単体ではコスト課題

 日本国内のLEED認証取得件数166件(21年2月現在)のうち、東京85件、神奈川13件、千葉8件に対し、大阪7件、福岡3件、愛知2件と、多くが首都圏に集中していることがわかる。

レンドリースオフィスビルの内観

 宮本氏は、「東京都心、神奈川といった場所でグリーンビルディングが選ばれやすいのは、土地が高い都心部において、とくにハイグレードのオフィスビルの場合は坪単価がもともと高いため、グリーンビルディング認証にかかる追加のコストが発生しても建設費用に対する割合を低く保つことができるからだ。ESG投資、環境建築が良いことは誰でも知っているが、現実にはそれにかかる費用の問題が、計画当初で断念する理由の1つとなっている」という。

 一方、郊外や東京以外の都市でも環境認証の需要が高まり、ビルだけでなく、周辺一帯、街全体をサステナブルにする取り組みが増えている。札幌では街全体で「LEED for Cities and Communities(LEED都市・コミュニティ認証)」、関西では2つの大学が「LEED Neighborhood Development(LEEDエリア開発認証)」を取得している。

 「街全体での取り組みは、土地所有者が複雑に絡み合った都心よりも、郊外や東京以外の街のほうが有利になることも多い。ある程度の広い土地が確保できて交通の便が良く、自然も豊かな地域であれば、都心よりも認証取得が有利になることも多く、福岡においてもLEED for Cities and Communitiesや、LEED Neighborhood Developmentなどを実現できる可能性は非常に高い」(宮本氏)。

 日本も脱炭素にシフトしており、これら基準はもはや、環境に厳しい諸外国だけのものではなくなるだろう。宮本氏は「企業にとって、CO₂排出や排出削減にかかるコストを把握し、低減することも重要な検討材料だ。加えて、人々の生活をより健康で豊かにするために、ビルとして何ができるかを考えていく必要がある。エネルギーに頼らない、働きやすく、人に優しい、健康に配慮した建築物をつくることが不動産価値を高め、投資に値するものになる」と語る。

※非公表のプロジェクトを除く。再認証を受けていないプロジェクトを含む。
((一社)グリーンビルディングジャパンHPより引用。2021年2月24日現在)

(了)

【石井 ゆかり】

(中)

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