2024年04月24日( 水 )

【マンション管理を考える】改正で何が変わる?マンション管理適正化法(中)

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 2020年6月、約20年ぶりの改正となるマンション管理適正化法が公布された。施行は2年後。全国の都市圏を中心に建築されたマンションストックが年々老朽化していくなか、大規模修繕や建替えといったマンション管理が適切に実施されていない実状がある。「タワマン」に代表される大型マンションも増え続けており、マンション管理の高度化、複雑化という問題も拡大しつつある。マンション管理の実態はどうなっているのか。管理スキームに問題はないのか。法改正によって、マンション管理の何が改善されるのか。

建替え実績はわずか244件

 マンションの適切なメンテナンスが行われない原因としては、所有者の高齢化や空き家化、管理組合のマンパワー不足、所有者間の合意形成(総会での決議)の難航、そして修繕積立金の不足―などが考えられる。マンションが大型化すればするほど、合意形成は難しくなる傾向がある。アンケート、説明会、意見交換、個別面談などを繰り返し、異論や反対意見を懐柔したうえで、議決を得るという合意形成プロセスを踏む必要があるが、区分所有者の費用負担がネックになるケースが少なくない。

 12年周期での実施が推奨される大規模修繕を例にとると、3~10階建の比較的低層なマンションの場合、大規模修繕にかかる費用が4,000万円~6,000万円台。11~19階建では1億6,000万円台、20階建以上になると3億3,000万円台という具合に、階数に応じて工事費も増加する。50階以上のいわゆるタワーマンションになると、数十億円に上るといわれる。区分所有者ごとの工事費用負担額は、いずれも100万円前後で推移している。

 12年に100万円の負担を多いと見るか少ないと見るかは、人によってさまざまだろうが、マンションの資産価値が年々目減りする一方、修繕費用は延々発生し続けるという状況を考えると、多くの区分所有者にとって、軽い負担ではないだろう。「終の住処」としてそこにずっと居住する所有者にとっては、支払い続けざるを得ないだろうが、売却前提で購入した投資目的の所有者にとっては、ムダな出費としか考えないだろう。

国交省資料より
国交省資料より

 マンション建替えとなると、さらにハードルは高くなる。建替えの実績は、累計で244件、約1万9,200戸(19年4月時点)にとどまっている。よほど条件の良い物件でない限り、各所有者の負担は、修繕に比べ10倍以上に跳ね上がるからだ。マンションが廃墟化して、当の住民が頭を抱えていたり、周辺が迷惑していたとしても、原則的には管理組合がすべての責任を負うことになる。ただ、廃墟化したマンションは、周辺の景観を著しく損なうし、割れ窓理論に照らせば、治安にも悪影響をおよぼす。剥離した外壁が通行人の頭の上に落ちたりすると、人の生命を損なう可能性もある。

 あまりにひどい場合は、行政としては各種法令に従い、所有者に対して自主解体を命令したり、行政代執行で解体する場合もある。ただ、行政がそこまでやるのは、廃墟化しただけではなく、居住の実態がなく、周囲の安全に明確な危険をおよぼすなど、解体すべきなのが明らかなケースに限られる。見た目がいくらボロボロだからといって、個人財産である以上、すぐに解体できるわけではない。

 行政が強制的に解体に乗り出せない状況のなか、毎年のように老朽化したマンションが増え続けている。そこまで管理組合の自主管理にこだわるなら、「ちゃんとメンテナンスしないと売って(買って)はいけない」という仕組みにしておけば、かなり効果があると思うのだが・・・。

(つづく)

【フリーランスライター・大石 恭正】

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