2024年03月29日( 金 )

【マンション管理を考える】新制度検討会、ウェブ総会も認容

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検討会資料より
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ZOOM上で開かれた検討会の様子
ZOOM上で開かれた検討会の様子

 国土交通省は、2020年7月に「マンション管理の新制度に関する検討会(座長:齊藤広子・横浜市立大学国際教養学部教授)」を設置。22年6月の改正マンション管理適正化法の全面施行に向け、基本方針(管理適正化指針)やマンション管理計画の認定基準、マンション標準管理規約の改正、デジタル化への対応(オンライン総会など)などのとりまとめに関する議論を重ねている。

 21年3月17日、ZOOM上で行われた会合では、基本方針、管理規約、認定基準制度の素案を基に、文言の妥当性などに関する議論が交わされた。基本方針(骨子案)では、管理組合と区分所有者、国、自治体、マンション管理士・マンション管理業者などのそれぞれの役割を明記している。その基本的な事項は次の通り。

<管理組合・区分所有者の役割>
・マンション管理の主体は管理組合であること
・区分所有者などは、修繕等の必要性を十分認識するとともに、管理組合の運営に積極的に参加する等の役割をはたすよう努めること
・管理組合は、管理適正化の推進に関する施策へ協力すること

<国の役割>
・マンションの管理水準の維持向上と管理状況が市場において評価される環境整備を図るためにマンションの管理の適正化の推進に関する施策を講じること
・標準管理規約および各種ガイドライン等の策定・見直し、長寿命化に係る先進的な事例の収集・普及や技術開発
・管理組合などからの求めに応じ、マンション管理適正化推進センターと連携しながら、必要な情報提供などに努めること

<地方公共団体の役割>
・区域内のマンションの管理状況などを踏まえた計画的な施策の実行
・実態把握を踏まえた管理適正化推進計画の作成や管理計画認定制度の運用、相談体制の充実
・管理組合などからの求めに応じ、必要な情報提供などに努めること

<マンション管理士・マンション管理業者など>
マンション管理士・マンション管理業者
・管理組合から相談や管理事務の委託があった場合には、誠実な業務遂行が必要
・地方公共団体などからの求めに応じた施策協力
分譲会社
・管理組合の立ち上げ
・運営の円滑化に向けた、分譲時の適切な管理規約や長期修繕計画(案)等の作成および購入予定者に対して説明し理解を得るよう努めること

   基本方針(案)で注目されるのは、分譲会社にも一定の努力義務を課そうとしている点だ。ただ、どこまで実効性をともなうかどうかは不透明だ。認定基準(案)で示された主なポイントは次の通り。

<修繕その他の管理の方法>
・長期修繕計画が集会にて決議されること
・長期修繕計画の作成日または見直し日が7年以内であること
・長期修繕計画の計画期間が30年以上、かつ残存期間内に2回以上の大規模修繕工事を含むものであること

<修繕その他の管理に係る資金計画>
・計画期間30年以上、かつ残存期間内に2回以上の大規模修繕工事を含む長期修繕計画に基づき修繕積立金の額が設定されていること
・長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額(m²あたりの月額単価)が著しく低額でないこと
・長期修繕計画上、将来の一時的な修繕積立金の徴収予定がないこと(新築後初年度の修繕積立基金分は除く)
・直前の事業年度の終了の日時点において、修繕積立金の3カ月以上の滞納額が全体の1割以内であること

<管理組合の運営状況>
・管理者などが選任されていること
・集会が年1回以上開催されていること
・組合員および居住者の名簿を備えており、各名簿について年1回以上、内容の確認が行われていること

   標準管理規約改正の主なポイントは、管理組合の総会・理事会で、ウェブ会議システムの実施を可能とする点だ。ウェブ会議上で議決権を行使することも可能になる。新型コロナウイルスへの対応という位置づけになっているが、組合員の参加率向上などのメリットも期待できる。ウェブ会議に馴染みのない組合員にとっては、逆に阻害要因となるリスクもあるため、通常の対面による会議との併用という立て付けとなっている。

 席上、ある委員から「管理適正化を進めるには、何らかの補助制度が必要」との意見が出されたが、事務局からは何ら回答はなかった。国としては、財政的な支援をすることなく、管理適正化を何とか進めたいハラらしい。

 東京都、神戸市、戸田市(埼玉県)の担当者からは、それぞれマンション管理適正化に関する取り組み事例の紹介もあり、東京都からは管理状況に関する届出の実施状況などに関する報告があった。

 東京都は19年3月にマンション適正管理の促進に関す条例(マンション管理条例)を制定。都、管理組合、区分所有者、マンション管理士、管理業者、分譲会社の責務を明確化したうえで、管理状況を把握し、管理組合に対して助言、支援などを実施することを盛り込んでいる。20年4月から管理状況に関する届出制度(義務)をスタート。届出の対象は、1983年12月31日以前に新築された約1万4,000棟(6戸以上)。直近の届出の状況は約8,200件で、届出率は6割超となっている。25年度末までに届出率80%を目標として設定している。届出された内容を見ると、管理不全の兆候を示す7つの項目について、いずれかが「ない」と回答したマンションは約12%となっており、今後の助言、支援の対象となる。

 検討会の開催は今回が最終。4月以降にそれぞれパブリックコメントを実施したうえで、本案としてとりまとめられる。標準管理規約については、21年夏にとりまとめられる見通しだ。

検討会資料より
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【フリーランスライター・大石 恭正】

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