八女木材産業の未来のために、資源としての山林を次世代へ(後)
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2021年05月01日 07:00

八女木材産業の未来のために、資源としての山林を次世代へ(後)

八女木材協同組合 理事長/八女林産協同組合 代表理事 諸冨 一文 氏

地産地消の背景に官民の取り組み(つづき)

 ――国産木材と海外産木材の特徴や、市場における利用状況などはいかがですか。

八女木材協同組合 理事長/八女林産協同組合 代表理事 諸冨 一文 氏
八女木材協同組合 理事長
八女林産協同組合 代表理事
諸冨 一文 氏

 諸冨 まず市場における利用状況ですが、現在は国産木材のほうが安価なこともあり、利用は増加傾向にあります。昔はスギよりも米松(ダグラスファー)のほうが安価でしたが、昨今の船運賃の高騰などを受け、価格が上昇し一般的に外材のほうが高価になっています。背景には、中国市場における木材需要の拡大があります。

 国産木材もこの需要に対応できれば良いのですが、スギは乾燥が難しい樹種で、出荷までに相応の時間を必要とします。対して、米松は成長も早いため、広大な山林で大量生産されており、突発的な需要にも対応しやすいといえます。両木材の特徴が、市場での利用状況に反映されているのだと思います。

 ――量と質のバランスが非常に難しいですね。

 諸冨 当社の「葉枯らし乾燥材」は、秋口から冬場にかけて伐採し、山林で枝葉をつけたまま乾燥させる「葉枯らし乾燥」を徹底しています。製品として出荷できるようになるまで10カ月ほどかかりますので、「100棟単位でお願いします」といわれても対応が難しいですが、評判が次につながることを考えれば、精度を落とすわけにはいきません。木材を本来の価値に見合った価格で市場に供給するためにも、1つひとつの工程を徹底することが大切だと思います。

八女産木材の魅力再発見

 ――八女産木材の特徴などについてお聞かせください。

 諸冨 八女の山林面積は約3万1,000haで、福岡県内ではトップの広さを誇ります。月に2回、木材市が開かれるのですが、そこには大分や熊本の木材業者も参加され、八女産木材を購入されていきます。同業者の目から見ても良質だと判断されていることは、嬉しい限りです。

 「品種の八女林業」と呼ばれるほど多くの品種があるのも、八女産木材の特徴です。昔は満州鉄道の電柱(木柱)として八女産木材は重宝されました。とくに電柱工事が全国的に展開されていたころは、八女産木材産業の最盛期といえる状況で、電柱用に品種改良を行うなど、さまざまな試みがなされました。これを可能としたのが、挿し木苗で、この方法であれば実生苗よりも簡易に苗を増産できますので、需要を満たしながら新品種の育成にも挑戦できたのです。

 当時は30年未満の木を伐採することもあったようですが、今伐採できるのは45年以上の木。長い年月をかけて育てた木が、1m3あたり1万円以下の場合もあり、こうなると間伐や伐採にかかる人件費のほうが多く、赤字になってしまいます。厳密に分ければ100種類を優に超える八女産木材も、現在流通しているのは10種類程度です。

 ――根本的に、木そのものの価値を見直す必要があるように思います。

 諸冨 木そのものの価値を伝えるためにも、後継者の育成がやはり重要です。また、八女産の天然乾燥材はたしかに高品質のブランド木材なのですが、量産が難しいこともあり、大量生産には向きません。その代わり、自然乾燥させるため、色・ツヤの良い、粘りのある木材を生産できます。

 八女産の天然乾燥材に関しては、とくに目の詰まった良質材を利用した、さまざまな取り組みが各方面でなされ始めています。

 大径材(直径が30cm以上の丸太)の利用法など、木材、そして山林に関する解消すべき課題は、少なくありません。所有者が市外に居住されているような、いわゆる不在村地主の山林を購入し、伐採して植林する。これだけでも、山林の手入れ、八女産木材の市場への流通が促進されると思います。

 自然相手のことなので、解決には多大な労力と時間を費やすことになりますが、八女の林業を後世に遺していくためにも、率先して、新たな行動を起こしていきたいと考えています。

八女里山賃貸住宅
八女里山賃貸住宅

【八女里山賃貸住宅】
 八女杉がふんだんに使われた賃貸住宅。木材は、八女木材協同組合より天然乾燥材を共同出荷した。地縁のない移住者でも里山暮らしを始めやすい長屋形式の木造集合住宅で、地域コミュニティとの交流を促し、将来的には地域の空き家などへ定住する機会の創出につなげる。管理は、八女里山賃貸(株)が手がけている。

(了)

【聞き手:内山義之/文:代源太朗】

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