2024年03月29日( 金 )

大西一史・熊本市長に聞く、ポスト震災まちづくりの進捗(4)

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熊本市長 大西 一史 氏

 2016年4月に発生した熊本地震から5年が経過した。震災からの復興は、1つの大きな節目を迎えている。復興のシンボルである熊本城は、天守閣の復旧工事が完了し、4月26日から内部公開がスタートした。JR熊本駅周辺では、同じく4月23日には「アミュプラザくまもと」が開業。駅前のさらなる賑わいへの期待が高まっている。熊本市内を見渡すと、商業施設、バスターミナルなどからなる複合施設「SAKURA MACHI Kumamoto」が19年9月にオープン。街中に防災機能を併せもった新たな拠点が生まれた。熊本市はすでに、震災復興に転じたといえるのか。この節目を機に、今後どのようなまちづくりを進めていくのか。大西一史・熊本市長に話を聞いた。

駅周辺の再開発を起爆剤に

 ――熊本駅の再開発についてはどうですか。

熊本市長 大西 一史 氏
熊本市長 大西 一史 氏

 大西 昔の熊本駅周辺は、線路によって東西に分断されていたエリアでした。とくに新幹線口周辺は、人の行き来がない住宅地でした。県が事業主体となった連続立体交差事業が18年に完了し、市の方で街路整備を行った結果、東西の行き来がかなりスムーズになりました。

 新幹線開業と相まって、駅周辺は地価がかなり上がっており、市内で最も地価の伸びが高いエリアになっています。駅周辺では、JR九州が最大の地権者ですが、タワーマンションや九州フィナンシャルグループの本社などオフィスビルがどんどん立地しており、現在再開発が進んでいるところです。駅周辺は高さ規制がないので、今後も民間投資が続いていくと見ています。

 一方で、タワーマンションが次々と建つことによって、住民が増え、子育て環境が不足することが考えられます。そこで、本市としては21年度、駅前に子育て支援の拠点を整備することにしています。すでに託児スペースや子ども図書館を備えた市の施設があるのですが、これをさらに機能拡充していくことにしています。また、学生をはじめとする起業志望の若者のために、スタートアップ支援拠点も駅前に整備することにしています。

 熊本駅のメリットは、九州の南北の都市に素早くアクセスできる点にあります。博多まで30分、鹿児島まで40分で行き来できます。熊本市にとって、熊本駅の再開発は大きな起爆剤になると思っています。

再開発が進む熊本駅白川口周辺。右に見えるのがアミュプラザくまもと(3月下旬撮影)
再開発が進む熊本駅白川口周辺。右に見えるのがアミュプラザくまもと(3月下旬撮影)

 ――駅周辺のタワーマンションの立地を規制する都市もありますが・・・。

 大西 熊本駅周辺の地形は、西側を万日山・花岡山、東側を白川に挟まれており、平野部が比較的少ないんです。限られた土地を有効に活用しようとすると、建物の高度化を図っていくしかありません。逆に、今の街中は厳しい高さ規制があるので、タワーマンションは絶対に建てられません。

 駅周辺で地震が発生した場合のリスクについては我々も検討しましたが、今のタワーマンションは耐震性、免震性が十分に確保されており、災害時の対応についてもきちんと考えられています。博多駅周辺に比べれば、コスト的にも低いので、オール九州の拠点として居を構えるには、かなり有望だと考えています。

【フリーランスライター・大石 恭正】

(つづく)


<プロフィール>
大西 一史
(おおにし・かずふみ)
1967年12月、熊本市生まれ。92年に日本大学文理学部心理学科卒業後、日商岩井メカトロニクス(株)に入社し、94年に退職。内閣官房副長官秘書を経て、97年に熊本県議に就任(5期)。2014年12月に熊本市長に就任し、現在2期目。

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