2024年04月20日( 土 )

【熊本】まちなか再生プロジェクトで熊本市中心市街地は生まれ変わるのか?(後)

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容積率900%、高さ70m(つづき)

 評価項目には、従来からあった「公開空地の確保(誰もが自由に通行・利用できる空地の整備など)」(最大200%)に加え、「防災機能の強化(建物の耐震性能向上、一時避難スペースや備蓄倉庫の整備など)」(最大200%)、「まちづくり取り組み(敷地内などへのバス・タクシー乗車場の設置、屋内貫通通路など)」(最大200%)、「誘導用途の確保(高機能オフィス、ハイグレードホテルの整備など)」(最大100%)も設定し、容積率を最大900%まで割増する。10年間特別限定措置(20年度~29年度)して、最大1,000%まで割増するオプションも設定する。

 高さ基準の特例承認の対象区域は、熊本城周辺地域のうち、熊本城特別地区を除く一般地区、京町台地地区。現行の高さ上限は一律海抜55mだが、熊本城天守閣からの眺望や周辺の景観形成などに支障がない範囲で、55m以上のビルの建築を認める。審査は景観審議会が行う。一律で最大何mまでOKという数字はないが、「熊本城天守閣から周囲の山並みへの眺望を考えると70m程度が限界」(熊本市担当者)らしい。

 財政支援は、中心市街地全域が対象。基本要件として、用途が商業施設、オフィス、ホテルで、敷地面積が200m2、地上3階建以上である新築ビルを対象に、固定資産税相当額などを10年間限定で補助する。拡充要件として、2以上の敷地を統合して新築または、建物を共同化して新築する場合なども補助対象とする。補助額の上限は1.1億円。

容積率割増となる事例のイメージ(パンフレットより)
容積率割増となる事例のイメージ(パンフレットより)

10年間で100件建替え目標

 これら3つのインセンティブが本格的にスタートしたのは20年4月。容積率割増については、これまでに1件の採択実績が生まれている。適用第1号は、辛島町の「日本生命熊本ビル」(9階建)。新たなビルは、地上13階建、建築面積1,597m2、延床面積1万9,174m2で、免震構造を採用し、防災備蓄倉庫なども備える。工期は未定だ。

 熊本市担当者によれば、「これまでの3階以上のビルの建替えペースは、年5件程度。今回のプロジェクトによって、これを倍の年10件にするのが目標。10年間で計100件の建替えを目指す」としている。21年3月時点で、「日本生命熊本ビルを含め、6件の適用申請があった」(同)という。

 まちなか再生プロジェクトによって、熊本市の中心市街地がどう生まれ変わるのか。素直に期待したいところではあるが、コロナ禍の影響は無視できない。この点、熊本市担当者は、「コロナ禍による社会構造の変化によって、建替え意欲に変化が起こる可能性はある。このことを踏まえ、21年4月から財政支援メニューを拡充し、感染症対応設備等の整備に対する上乗せ補助を制度化する。今後も、社会のニーズを的確に捉え、臨機応変に対応していきたい」と話す。

(了)

【フリーランスライター・大石 恭正】

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