2024年05月08日( 水 )

日本初、常設都市型ロープウェイ「横浜エアキャビン」

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JR桜木町駅と新港地区の運河パークを結ぶ「横浜エアキャビン」
JR桜木町駅と新港地区の運河パークを結ぶ「横浜エアキャビン」

観光アクセス強化に630mのロープウェイ

 日本初の常設都市型ロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」(横浜エアキャビン、事業主体:泉陽興業(株))が4月22日に運行を開始した。

 横浜エアキャビンは、横浜市臨海部の観光やビジネス・産業を活性化し、都市としての魅力を高めるために、市が2015年に定めた「横浜市都心臨海部再生マスタープラン」(以下、再生マスタープラン)のテーマとなる、移動だけにとどまらずに街を楽しめる交通の1つ。17年にプロジェクトの民間公募を行い、横浜港に面する「みなとみらい21」地区で観覧車を運営する泉陽興業の都市型ロープウェイの提案が実現することとなった。横浜エアキャビンは、JR桜木町駅から市街地の上を通り、海を隔てた新港地区の運河パークまでの片道630mを、所要時間5分で結ぶ。

赤レンガ倉庫
赤レンガ倉庫

 本事業に携わる横浜市都市整備局企画課長・黒田崇氏は、「多くの観光客にとって、横浜エアキャビンは移動自体が楽しめる乗り物だ。市が観光に力を入れているみなとみらい21に新しい魅力をつくることで、遠方からの『ロープウェイに乗るため、横浜に観光に行ってみたい』という気持ちを促し、これまでみなとみらい21を日帰りで訪れている首都圏の人々も、今までにない視点で観光の楽しみを見つけてもらえるのではないか」と話す。

 横浜市臨海部には、JRやみなとみらい線、市営地下鉄などの鉄道が通っているが、これらの駅から商業施設や客船ターミナルなどがある海沿いまでは離れている。そのため、横浜エアキャビンは、みなとみらい21のなかでも桜木町駅から歩くと距離がある新港地区の商業施設「赤レンガ倉庫」「ワールドポーターズ」、客船ターミナルと商業施設を備えた「ハンマーヘッド」へのアクセスの弱さを改善して気軽に行けるようにすることで、ロープウェイ終点の港の施設を楽しんでもらい、横浜の魅力を知ってもらうことが目的だ。電車やバスなどの公共交通からは見ることができない、横浜の港の景色や夜景を、最高で高さ40mの視点から体験できることも特徴だ。大人1,000円、子ども500円という移動距離に比して高めの運賃設定からも、観光要素を重視していることがわかる。

ロープウェイの運行ルート
ロープウェイの運行ルート

マスタープランではさらなるアクセス強化も

横浜市都市整備局企画課長 黒田 崇 氏
横浜市都市整備局企画課長 黒田 崇 氏

 運行開始以来、横浜エアキャビンには多くの人が訪れており、「休日には、乗り場で40~80分待つこともあると聞いている」(黒田氏)。利用者は若い世代からシニア層まで幅広く、「車椅子の人も利用しやすいように乗り場の段差をなくすなどバリアフリー対応をしているため、年齢を問わず、また足の不自由な人なども楽しんでもらえる」(黒田氏)という。

 横浜の臨海部では、横浜ランドマークタワーをはじめ大規模ビルが並ぶ「みなとみらい21地区」、主要ターミナル・横浜駅を中心とする「横浜駅周辺地区」、横浜スタジアムがあり歴史的な建物が多い「関内・関外地区」、IR(統合型リゾート)など再開発を推進する「山下ふ頭周辺地区」、中央卸売市場が立地し、面的な開発も検討されている「東神奈川臨港部周辺地区」と、ビジネス・産業や観光における主要エリアが分散している。そのため、再生マスタープランでは、各エリアの特色を引き出して街の個性を前面に打ち出すほか、これら5地区を連携して回遊性を高める構想として、横浜エアキャビンのほか、現実とバーチャルを融合して市内の観光名所をめぐる「XR(※1)オープントップバス」(京浜急行電鉄)、横浜駅からみなとみらい21を経て、IR誘致を目指す山下ふ頭が終点となる連節バス「BAYSIDE BLUE」(ベイサイドブルー)、鉄道などの整備も進めている。

横浜市都心臨海部の5地区
横浜市都心臨海部の5地区

 みなとみらい21地区では、市の観光・MICE(※2)強化策として、「ぴあアリーナ」(20年竣工)、「K-アリーナプロジェクト」(23年竣工予定)などの大型集客施設を整備して賑わいをつくり、観光集客を目指すほか、街の回遊性やアクセスを高めるために交通網を充実させて、歩行者ネットワークを形成するための歩行者デッキなどの整備も進めている。

 「横浜」と聞くと多くの人が思い浮かべる、観覧車や近代的なビルが立ち並ぶウォーターフロントのみなとみらい21地区。市は横浜エアキャビンの運行により、アフターコロナの観光を見据え、街の活性化を目指しているという。

※瑞穂ふ頭地区については、都心臨海部に隣接し広大な面積を有しますが、米軍と返還合意されていないため、返還後の活用について、今後検討します。

※1:VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)といった、実と仮想空間の融合体験を可能にする技術の総称 ^
※2:企業などの会議(Meeting)、報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、国際会議・学会(Convention)、展示会・イベント(Exhibition/Event)の総称 ^

【石井 ゆかり】

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