2024年05月16日( 木 )

ノジマとスルガ銀行が提携解消~地銀の経営統合が加速する前兆か

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 家電量販店の(株)ノジマ(横浜市西区)は1日、資本提携している静岡県の地方銀行、スルガ銀行との間で、「経営に関する考え方に違いが生じたため」として、野島廣司社長がスルガ銀行の取締役副会長(非常勤/社外)を6月の任期満了を待たずに1日付で辞任したと発表した。これにともない、スルガ銀はノジマの持ち分法適用会社から外れた。

野島社長が副会長を辞任した経緯
◆スルガ銀行は2018年、シェアハウスの「『かぼちゃの馬車』を販売していた(株)スマートデイズが破綻」したことにより、投資用不動産などの不正融資問題から経営危機に陥った。そのため19年5月にノジマと業務提携し、同年10月に18.5%の議決権をもつ筆頭株主となったノジマの支援を受けて、経営再建を進めてきた。
◆20年6月の株主総会で野島社長はスルガ銀副会長に就いた。 ノジマが筆頭株主となったのは、家電量販店と銀行という異色の提携関係によって、金融サービスとITを融合したフィンテック分野での連携することが目的だったという。
 しかし、野島社長が副会長に就任して1年近く経っても具体的な成果を出せず、また、再建の進め方に関しても、「見ている方向が違う」(金融関係者)との指摘も出ていたという。
◆経営方針や意思決定のスピードなどをめぐって両社の溝が深まり、ノジマ側は協議を申し入れていたが、進展はなかったという。
 そのため、ノジマ側は、5月14日開催の臨時決算取締役会議で、6月26日の株主総会に向け、嵯峨社長を含む過半数の取締役を代える独自の人事案を提出していたが、退けられた。
 関係者によると、スルガ銀行は野島氏に会長就任を打診したが、不信感を募らせていた野島氏は拒否して退任を選んだという。

 【表1】を見ていただきたい。スルガ銀行の経営成績推移表である。
~この表から見えるもの~
◆19年3月期の当期純利益は、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社のスマートデイズが資金繰りの悪化で18年4月に経営破綻。それをきっかけに不正融資事件が発覚し、971億円の赤字を計上。経営は厳しい状況に陥った。
◆20年3月期の当期純利益は253億2、400万円、21年月期の当期純利益は214億3,300万円の黒字となっている。22年月期の当期純利益予想は70億円と大きく減益となっているものの、黒字を確保している。
◆21年3月期のスルガ銀行の純資産は2,857億7,000万円。一方ノジマは1,442億9,600万円。スルガ銀行はその2倍となっており、ノジマの傘下から離れたいとの思いが読み取れる。

 【表2】スルガ銀行と静岡銀行の貸倒引当金比率比較表である。
~この表から見えるもの~
◆スルガ銀行の貸出金は毎期減少しており、厳しい状況にあることがわかる。21年月期の貸出金は前期比▲ 1,832億7,800万円の2兆3,195億6,000万円(前期比-7.3%)となっており、未だに厳しい状況にあることがわかる。

<まとめ>
 【表3】はスルガ銀行とノジマの株価推移表である。野島氏がスルガ銀行の副会長辞任を発表した6月1日の株価と比較するとスルガ銀行は+5円の364円。一方、ノジマは▲48円の2,957円となっている。この株価の推移を見ると、スルガ銀行がノジマの傘下から外れることを好感しているように見える。

 それとともに、スルガ銀行がノジマの傘下から離れることは、「金融庁の指示に従うことができる」と読み替えることができる。これは金融庁が今後、厳しい経営の続く地銀の金融再編を思い通りに進める前兆ではないだろうか。

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【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】

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