2022年06月27日( 月 )
by データ・マックス

アジアの人々との共生・共修を目指す「吉塚市場リトルアジアマーケット」

 2020年12月1日にリニューアルした「吉塚市場リトルアジアマーケット」(旧・吉塚商店街/福岡市博多区)。今年3月には、ミャンマーの釈迦像を安置した「吉塚御堂(よしづかみどう)」を建立し、同13日にグランドオープンした。商店街のこれまでの歩みと、再生に至った経緯について、吉塚御堂の代表世話人である西林寺住職・安武義修氏に聞いた。

吉塚市場リトルアジアマーケット

リトルアジアの由来

 「吉塚市場」は戦後間もない1950年、現在の福岡市博多区吉塚で、2軒の魚屋と1軒の八百屋のたった3軒から始まった。その後、商店が増えていき、57年ごろにはアーケードが設けられ、それが今に残る佇まいとなっている。全盛期には150以上の店が軒を連ね、肩が触れ合うほど多くの買い物客で賑わっていたという。

 しかし近年、商店街は後継者不足などにより、最盛期の5分の1となる30店舗にまで減少。周辺では、大型商業施設やマンションなどの開発が進む一方、吉塚市場は置き去りにされたような格好となっていた。

 そこで、吉塚市場の全盛期を幼いころに経験していた安武住職は、「住み慣れた商店街へ恩返しをしたい」「あのころの活気を取り戻したい」という思いで、3年ほど前から商店街や地域住民に声をかけ、再生に向けた話し合いを重ねていった。

 なかでも、設置から60年を経たアーケードは老朽化し、空き家が目立つ細道は暗い印象があった。「このままではどんどん人が寄り付かない商店街になる」と感じた安武住職は、メインストリートで一番目立っていた黒いトタン板を、少しでも商店街が明るくなるようにペイントすることを思いつく。そして2019年7月、「吉塚商店街・景観再生プロジェクト」を立ち上げ、地域の子どもたちや外国人留学生と一緒にウォールアートを完成させた。

 吉塚市場が位置する博多区は、福岡7区で2番目に多い外国人(約1万人)が居住している。さらに、吉塚近郊には愛和外語学院((学)愛和学園)などの外国人留学生向けの専門学校があり、外国人との交流が自然に生まれる土壌があった。前出のウォールアートにも、愛和外語学院の学生たちが積極的に参加したようだ。

メインストリートのウォールアート
メインストリートのウォールアート

 安武住職は、「吉塚周辺に居住する多くのアジアの人の文化には、オールドマーケット(※)のような市場を日常的に利用する習慣がある。吉塚市場に彼らの母国料理を扱う店を誘致し、彼らが普段使いしやすい環境にすることで新たな需要が生まれ、そして共生した『リトルアジア』というかたちに、商店街が立ち上がる可能性があるのではないか」と考えた。

 狭い通路、密集する商店街という吉塚市場の特徴が、かつて何度も訪れた「カンボジアのオールドマーケットを思い出させた」と安武住職は述懐する。

※オールドマーケットは、カンボジア北西部の都市・シェムリアップを代表する市場。八百屋や魚屋をはじめ、スイーツや軽食を売る屋台が並ぶ

アジアの人々の心の故郷

 19年末ごろから、商店街再生に向けての具体的な話し合いの場が設けられた。河津善博組合長(トリゼンフーズ(株)会長)を筆頭に、事務局・魚住昌彦氏((株)シーアンドイー代表)と安武住職が中心となり、事業計画を策定。20年9月3日、経済産業省の「商店街活性化・観光消費創出事業」に採択され、そこからわずか3カ月後の12月1日に「吉塚市場リトルアジアマーケット」としてリニューアルオープンした。

 外国人居住者の暮らしやすさと、市場の活性化をコンセプトに、再生プロジェクトの柱には「食」「繋がり」「安心」が掲げられた。マーケットには全41店舗が並び、「食」に関しては、既存のベトナム食材店に加え、中国や韓国、ベトナム、ミャンマー、タイ、カンボジアの計6カ国の本場アジア料理が味わえる8店舗を誘致。今後はネパール、スリランカの料理店を出店する計画もある。「繋がり」に関しては、多目的スペース「アジアンプラザ」を開設し、常時開放している。コロナ禍の現在、イベントは自粛しているが、今後も地域住民と外国人居住者との交流イベントを実施していくという。

2021年3月13日グランドオープン同日に行われた開眼行列

 「安心」に関しては、吉塚御堂の存在が欠かせない。21年3月、河津組合長が長年にわたりミャンマーの支援をしている縁から、福岡市の姉妹都市・ヤンゴン市の釈迦像を迎えた。13日のグランドオープンには、釈迦像を安置した「吉塚御堂」の代表世話人である安武住職が開眼法要を実施。「お釈迦さまのお参りにおいては、国や様式に偏らず、近隣のアジアの人々がいつでも手を合わせ、心の故郷として安らげる吉塚御堂でありたい」(安武住職)と願う。

 昭和の古き良き風情を残しつつ、アジアのエッセンスが加わった「吉塚市場リトルアジアマーケット」は、商業の活性と多様な地域コミュニティの創出が期待される商店街となった。

 「20年以上衰退する一方だった商店街が、たった3カ月で生まれ変わることができました。地域住民の方々へ虚心坦懐に耳を傾け、商店街が同じ方向を向けるようになったことで、前向きなエネルギーを実現することができています。また、この先5年、10年が経ったときに、本当の意味を感じることができると思います。『アジアの人々に優しいまち』にしたいという思いを吉塚市場リトルアジアマーケットから発信し、外国人居住者と地域の人々との『共生と共修』のまちとなることを目指していきます」(安武住職)。

【松本 悠子】

『吉塚御堂』ご寄付のお願い

吉塚リトルアジアプロジェクトの一貫として、外国人が手を合わせる場所を商店街が創設するという、全国初の取り組みを実施しています。
皆さまからお預かりしたご寄付は、
(1) 吉塚御堂の建立費
(2) 吉塚御堂およびお釈迦さまの維持費
(3) 今後外国人の「食」をサポートする「外国人食堂」などの開催事業費として使わせていただきます。
ご寄付は、吉塚御堂内の受付窓口か、吉塚市場内アジアンプラザ(TEL: 092-409-3209)にて受け付けております。
あたたかなご支援をよろしくお願いいたします。

吉塚御堂にて開眼法要を行う安武住職
吉塚御堂にて開眼法要を行う安武住職

吉塚御堂 代表世話人 安武 義修


<INFORMATION>
吉塚市場リトルアジアマーケット

所在地:福岡市博多区吉塚1-20-3


<プロフィール>
安武  義修
(やすたけ・よしのぶ)
西林寺住職/吉塚御堂・代表世話人
1976年生まれ、福岡市出身。龍谷大学文学部卒。西林寺住職、浄土真宗本願寺派特別法務員。2003年よりカンボジア支援活動を行う。08年より西林寺で立ち上げたカンボジア・チャリティーイベント『CANDLE NIGHT LIVE』は秋の恒例行事となっている。

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