2022年06月25日( 土 )
by データ・マックス

【コロナ禍で明暗分かれるラーメン業界(4)】21年3月期は巣ごもり需要で過去最高益 2度の転機を乗り越えたブランド力

(株)マルタイ

 西日本を中心に「棒ラーメン」で高い知名度を誇る(株)マルタイ。創業一族から福岡銀行、西部ガスホールディングス(株)(以下、西部ガス)へと経営が受け継がれてきた。かつては経営危機に陥った時期もあったが、2007年の西部ガスグループ入り後は安定した業績を残している。20年4月にコロナ禍により初めて緊急事態宣言が発出され、外食が抑制されたことで巣ごもり需要が拡大。内食、中食の広がりは同社に追い風となっている。

即席麺のパイオニア

 1947年に藤田泰一郎氏が製麺業を目的に創業したのが同社の始まり。59年に中華麺の即席化に成功し、「即席マルタイラーメン」(通称:棒ラーメン)の製造販売を開始した。翌年、(株)泰明堂として法人化。同年に福岡市西区に新工場を竣工、61年に東京、62年には大阪へと営業網を広げながら業績を伸ばした。そして、泰明堂の販売部門を分離独立するかたちで(株)マルタイが設立された。

 「棒ラーメン」は世代を超えて愛されているロングセラー商品だが、当時は即席ラーメン業界の勃興期。大手が商品開発に積極的に取り組んだことで競争は激化し、同社も値下げ競争を余儀なくされたことで採算性が低下した。

創業者一族の経営に終止符

 2代目社長として創業者の息子である藤田明氏が経営の舵を取ってきたが、それも80年に限界に達し、創業一族は経営から退いた。これが最初の大きな転機だ。

 その後はメインバンクの福岡銀行主導で再建に取り組み、3代目社長には同行出身者が就いた。同行の経営改善策が奏功し、業績が回復基調となったことで、4代目、5代目と同行出身者が代表を務めることになる。

 2度目の転機は2006年に訪れた。マルタイに敵対的買収の噂が流れたのだ。福銀はメインバンクだったことから経営に参画し、再建に取り組んできたが、銀行の経営支配には限界がある。そこで同行は西部ガスに支援を求めた。07年、マルタイは西部ガスに対し第三者割当増資(総額7億4,600万円)を実施。西部ガスが筆頭株主となり、マルタイは西部ガスグループの一員となった。6代目社長・酒見俊夫氏から現在の9代目社長・見藤史朗氏まで西部ガスの出身者だ。

 09年には日清食品ホールディングス(株)、東洋水産(株)に続く業界3位のサンヨー食品(株)と資本・業務提携を結び、同社に対して第三者割当増資を実施。現在は西部ガス33.59%、サンヨー食品20.17%の株式保有比率となっている。10年に長崎皿うどんを除く袋麺、12年にはカップ麺の製造をサンヨー食品へ委託。同社は福岡工場で皿うどん、佐賀工場で「棒ラーメン」製造に特化するなど生産の効率化を進めた。

巣ごもり需要を追い風に

 20年1月に新型コロナの国内1例目の感染が発覚し、その後の緊急事態宣言発出で外食産業は低迷。それと相反して巣ごもり需要の拡大で小売や食品の売上は増加し、同社もその恩恵を受けた。

 21年3月期決算は売上高93億3,345万円(前期比9.0%増)、営業利益9億7,679万円(同71.7%増)、経常利益10億207万円(同66.4%増)、当期純利益6億3,913万円(同55.9%増)と前年を大きく上回り、売上高、最終利益ともに過去最高を記録した。ただし、今期はコロナ禍がワクチン接種の浸透とともに収束していく見通しであり、巣ごもり需要の反動減や会計基準の変更を踏まえ、売上高74億4,000万円、営業利益6億3,000万円、経常利益6億5,000万円、当期純利益4億2,000万円と減収減益の業績予想だ。

 また、21年1月には佐賀の新工場建設を開始した。総投資額は取得予定用地代を含め約43億円、22年3月に営業運転を開始する予定である。

(株)マルタイ 業績

新たなブランド戦略を進める

 アフターコロナ下では自粛が解除され、外食産業が活性化するとともに、小売業はコロナ禍以前の業績に緩やかに戻っていくと予想される。同社は即席ラーメンを開発した1959年から、「棒ラーメン」で変わらぬ味を提供する一方で、時代や社会環境の変化にも対応しながら生き残ってきた。現在も他メーカーとのコラボ商品の開発や、東京オリパラのマスコットキャラクター「ミライトワ」「ソメイティ」の生みの親、谷口亮氏にイメージキャラクター制作を依頼するなど、新たなブランド戦略も進めている。

 若者にはあまり馴染みがない「棒ラーメン」についても、大学の校門付近でPR活動の一環として商品を配布したり、まったく新しいデザイン・コンセプトで若者を狙った商品「BO-RAMEN」を開発したりと、ロングセラー商品であり続けるための工夫にも余念がない。

 創業から今年で74周年。多くの人たちの尽力で2度の転機を乗り越えてきたマルタイは、これからも進化を続けながら、福岡のソウルフードとして存在感を示してくれるだろう。

 【立野 夏海】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:見藤 史朗
所在地:福岡市西区今宿青木1042-1
設 立:1963年12月
資本金:19億8,963万円
売上高:(21/3)93億3,345万4,000円

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