2024年04月25日( 木 )

ウッドショックが問う日本の住宅・林業界の行く末(前)

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 「ウッドショック」は木材価格の急激な高騰をもたらし、日本の木造住宅業界と関連する業界に大きな影響を与えた。世界的に木材は供給不足の状況となっているが、日本における影響は際立っている。その要因には、これまでの日本における林業と住宅業界の在り方が深く関わっている。ウッドショックの主な原因は、米国を中心としたコロナ禍による在宅需要急伸、住宅着工数やリフォーム数が急増したこと、コンテナ不足による調達ツール不足などが挙げられている。

 米・商務省の「住宅着工統計」(図1)によれば、米国の住宅着工戸数(戸建)は、コロナ禍による在宅需要の増加と住宅ローンの金利低下により、2020年6月から急激に増加した。20年5月(97.4万件)から急伸し続け、21年3月には173.9万件と約1年で倍近い数値となった。これにともない、北米の木材価格も20年夏から急激に上昇し、コロナ禍前の約2.5倍に相当する1,000ドル/mbf(※)を突破し、3月も続伸した。20年末から、米国での輸入急増とコロナ禍にともなう港湾処理能力の低下などにより、北米にコンテナが滞留して、アジアではコンテナが不足する事態となった。

(図1)米国における住宅着工戸数と製材価格の推移
(図1)米国における住宅着工戸数と製材価格の推移

※mbf:主に米国で使用されている材積単位。1mbf=2.36m3

 国土交通省(住宅着工統計・図2参照)によれば、マンションなどを含めた全体の着工数は06年129万戸から大幅に減少し、以降19年まで100万戸未満で推移している。一方で、木造率は上昇傾向で推移するなど、日本の木造住宅着工数は微増傾向にある。ここで、日本におけるウッドショックの影響を見てみよう。

(図2)木造住宅の新設着工戸数の推移
(図2)木造住宅の新設着工戸数の推移

外国産依存と林業の衰退

 戦後の日本では、復興に向けて木材需要が急騰した影響から、乱伐による森林の荒廃に加え、山地災害などが頻発していた。これを受けて政府は、「拡大造林政策」を打ち出し、スギやヒノキ、カラマツなどの針葉樹種を中心に植林していった。

 一方で、1964年には木材輸入の全面自由化が決定し、国産木材の高騰に相反して輸入木材を利用する業者が増加。その後、円高などが輸入木材需要の追い風となり、国産木材はますます値下げをせざるを得ない状況となった。結果として、日本の林業は衰退へと向かい、住宅業界では外国産の木材を多く活用するようになっていった。

 「多くの戸建木造住宅は、輸入木材を使用しています。その理由はさまざまですが、主に価格の安さと供給量が安定していたこと、そして構造材として利用するための樹種にあります」((株)三栄建築設計・経営企画本部経営企画課・課長 菊谷憲太郎氏)。

 また、木造住宅新設において、ヒノキやスギ、マツ、ヒバなどのさまざまな樹種が必要となっているが、なかでもオウシュウアカマツやホワイトウッド、ベイマツなど、現在の国産木材で供給される樹種での代替が安易にできないものもある。

(つづく)

【麓 由哉】

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