2024年04月24日( 水 )

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福岡県県土整備部長 西川 昌宏 氏

 今年4月、福岡県の新たな県土整備部長に、国土交通省出身の西川昌宏氏が就任した。本省および関東地方整備局をはじめ、道路畑での勤務経験が豊富な西川氏は、大分県庁への出向経験があり、九州のインフラにも造詣が深い。そんな西川氏にとって、福岡県内のインフラはどう映っているのか。また、県土整備部のトップとして、どのようなミッションを抱いているのか。これまでのキャリアなどを含め、話を聞いた。

下関北九州道路の現実的な整備手法

 ――福岡県内のインフラについて、どうご覧になっていますか。

 西川 東九州自動車道が開通したことにより、福岡県内の基本的な道路ネットワークの軸ができてきたと思っています。ただ、道路ネットワークの骨格ができたことによって、それを補完する新たな軸が必要になっていると感じています。たとえば、「ココは南北軸が弱い」とか、「空港へのアクセスが弱い」とか。そういうところは、少しずつでも改善していきたいと思っています。

 ビッグプロジェクトである下関北九州道路については、昨年度、国の計画段階評価においてルート帯などを決定する対応方針が示されました。引き続き、国や県・市といった行政機関だけでなく、県・市議会や経済団体等と連携しながら、早期実現に向けてしっかり取り組んでいく考えです。とりわけ今年度から、環境アセスや都市計画決定に向けて、具体的な調査設計が動き出すフェーズに入っていきます。このプロジェクトには多くの関係者がいるので、しっかりすり合わせながら、現実的な整備手法を見つけていきたい。整備スケジュールなども、しっかり見せていきたいと考えています。

 ――下関北九州道路の必要性を、どうやって国民に理解してもらうかがカギになると思われます。

 西川 「ムダな公共事業だ」と言われないようにしないといけないと思っています。そのためにも、事業効果などを国民にしっかりと示していく必要があるのかもしれません。私自身、土木の広報については苦労してきました。我々自ら情報発信しても、なかなか信用してもらえないようなところがあると感じています。土木の理解者を増やして、その方々に発信してもらうのがベストかなと思っているのですが、理解者がなかなか増えなかったという経験があります。

 30年止まっていた東京外環を動かそうとしたとき、私はPI(パブリックインボルブメント)の先駆けみたいな取り組みを現場でやっていました。いろいろな広報紙を配ったり、オープンハウスを常設し、1日中説明したりしていました。地道に説明しているうちに、理解してくれる住民の方々がチラホラ出てきて、その方々を通じて理解が少しずつ広がっていったということがありました。そのためには、住民の方が情報発信できるやさしい内容の情報を、我々が発信していかなければならないなと感じたものです。「わかりやすいメッセージ」を出すということですね。ただ、この辺は土木の技術者にとって、苦手な部分なのです。

 そもそも土木の人間には、過去の経緯もあって、事業に関する数字をあまり出したがらないという面があります。数字を出すと、「その根拠はどうなっているのか」「計算方法は適切なのか」とか、いろいろと突っ込まれるリスクがあるからです。最近は少なくなってきているようですが、そういう体質が「わかりやすいメッセージ」が出せない1つの原因になってきたのかもしれません。

下関北九州道路のイメージ
下関北九州道路のイメージ

 ――最後に、職員にメッセージがあれば。

 西川 「とりあえず、やってみよう」ということを伝えたいですね。いろいろ新しいことに積極的に触れながら、どんどんチャレンジしていってほしいと思っています。新しいことは、定着することもあれば、失敗することもあるわけですが、いろいろなことを経験しておくこと自体、面白いことなので。あとは、できるだけ効率的に仕事をしてもらいたいです。仕事の効率を良くするためにも、やはり新しいことにチャレンジしていってほしいです。

(了)

【フリーランスライター・大石 恭正】


<プロフィール>
西川 昌宏
(にしかわ・まさひろ)
1970年9月、京都府出身。94年東京大学工学部卒業、同年建設省入省(土木研究所道路部新交通研究室)。2002年国土交通省関東地方整備局東京外かく環状道路調査事務所調査課長、05年同道路部道路計画第一課長、06年同道路局企画課道路経済調査室課長補佐、09年同国土技術政策総合研究所ITS研究室主任研究官(米国連邦道路庁派遣)、11年大分県土木建築部道路課長、15年国土交通省関東地方整備局東京国道事務所長、18年同道路局国道・技術課国道事業調整官、20年同ITS推進室長を経て、21年4月に現職。好きな言葉は「まずやってみる」。趣味は野球観戦、スイミング、ゴルフ。

(中)

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