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福岡県県土整備部長 西川 昌宏 氏
今年4月、福岡県の新たな県土整備部長に、国土交通省出身の西川昌宏氏が就任した。本省および関東地方整備局をはじめ、道路畑での勤務経験が豊富な西川氏は、大分県庁への出向経験があり、九州のインフラにも造詣が深い。そんな西川氏にとって、福岡県内のインフラはどう映っているのか。また、県土整備部のトップとして、どのようなミッションを抱いているのか。これまでのキャリアなどを含め、話を聞いた。
東京外環など道路畑一筋
――これまで、どのようなお仕事をされてきましたか。
西川 ほとんど道路畑でした。最初はつくばの土木研究所でした。新交通研究室というところで、新しい交通モードを研究する仕事でした。自動運転や無人の物流システムといった、ITS(高度道路交通システム)の前身のような研究をしていました。
東京外かく環状道路(東京外環)での16kmのシールドトンネル工事の住民説明や環境アセスも担当しました。こちらは、もともと地元の反対が非常に強かった道路で、1970年に一度建設が凍結され、その30年後に事業が再開された経緯があります。
――米国ではどのようなお仕事を?
西川 米国の研究所みたいなところで、自動運転に関する仕事をしていました。自動運転は、機器も含め、日本だけでつくるのではなく、国際協調しないと、世界では売れません。米国やヨーロッパは、グローバル・スタンダードをつくるために、一緒に行動しています。
私のミッションは、日米欧の三者が集まって情報交換を行う会議をセッティングすることでした。会議を通じて、米国や欧州の動きを把握・整理し、日本に伝え、取り組みに活かすといったことをやっていました。
――大分県庁はどうでしたか。
西川 当時は、東九州自動車道の大分~宮崎間がまだつながっていませんでした。大分県庁では道路課長として、国に早期整備に関する要望活動や調整をしました。平成24年7月九州北部豪雨にともなう災害対応も経験しました。
――東京国道事務所ではどのようなお仕事を?
西川 東京国道事務所は23区内を管轄する事務所で、新宿、渋谷、品川、虎ノ門、日本橋の再開発に合わせていろいろなことをやりました。都内の拠点となるまちには、必ずと言っていいほど、直轄国道が通っているので、多くのプロジェクトに関わりましたね。民間のデベロッパーや鉄道会社などと、ずっと調整しながらやっていました。新宿ではバスタ新宿、渋谷では国道246号のデッキ整備に携わりました。
――これまでで、印象に残っている仕事は何でしょうか。
西川 やはり東京国道事務所ですかね。非常に大変でしたけれど、いろいろと貴重な経験ができました。現場に何度も足を運びましたし、調整なども自分が出ていきました。自ら出て行かないと、動かないことが多かったので。
――どういう点で大変でしたか。
西川 ちゃんとした枠組み、ルールがないところで、走りながら物事を決めていったところです。バスタ新宿では、JR東日本やバス会社と調整したのですが、道路管理者はバス会社に対して基本的に権限がなく、対等の立場での交渉になるので、いろいろと大変でした。バスタ新宿は、ターミナル整備は国土交通省が行いますが、運営はバス会社が行います。ただ、バス会社は各社バラバラなので、運営を行う会社を新たにつくってもらい、この会社と道路管理者が協定を結ぶことにしました。この協定など、いろいろなルールを決めるに当たっては、かなり議論しました。
渋谷の場合には、JR東日本だけでなく、東京メトロや東急との調整が必要なうえ、そこに東京都やデベロッパーも入ってきました。道路管理者はすべての関係者の利害関係を調整する立場なのですが、これを事務的にやっているとなかなか進まないので、あっちに行って調整し、こっちに行って調整する、という感じでやっていました。結構勉強になりました。
(つづく)
【フリーランスライター・大石 恭正】
<プロフィール>
西川 昌宏(にしかわ・まさひろ)
1970年9月、京都府出身。94年東京大学工学部卒業、同年建設省入省(土木研究所道路部新交通研究室)。2002年国土交通省関東地方整備局東京外かく環状道路調査事務所調査課長、05年同道路部道路計画第一課長、06年同道路局企画課道路経済調査室課長補佐、09年同国土技術政策総合研究所ITS研究室主任研究官(米国連邦道路庁派遣)、11年大分県土木建築部道路課長、15年国土交通省関東地方整備局東京国道事務所長、18年同道路局国道・技術課国道事業調整官、20年同ITS推進室長を経て、21年4月に現職。好きな言葉は「まずやってみる」。趣味は野球観戦、スイミング、ゴルフ。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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