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2021年07月20日 17:35

UEFA EURO 2020サッカー欧州選手権と政治的影響

日伊経済連合会会長 ディサント・ダニエレ 氏

 日伊経済連合会のディサント・ダニエレ会長(ディサント(株)代表取締役)から、「UEFA EURO 2020サッカー欧州選手権」に関する記事を寄稿していただいたので掲載する。

日伊経済連合会 ディサント・ダニエレ会長 

 オリンピック開幕を間近に控える日本では、あまり大きく報道されていなかった印象をもつが、この夏、新型コロナウイルスの影響で昨年から延期されていたUEFA欧州選手権(EURO 2020)が6月11日から始まり、大いに盛り上がりを見せていた。

 試合はさまざまなコロナ対策が講じられたうえで、有観客によって行われた。決勝戦は7月11日(日本時間12日)、英国ウェンブリーのスタジアムで実施された。イタリア代表がイングランドに勝利し、ヨーロッパチャンピオンの座を獲得した。

 今回のUEFA欧州選手権は、新型コロナウイルスの影響下で開催する有観客による国際大会の先例をつくると同時に、人気スポーツであるサッカーの国際大会として各国のイメージ戦略や商業的な観点からも非常に重要であった。今回はとくにBrexit(英国のEU離脱)後のヨーロッパにおいて、政治的な側面からもとりわけ2つの点で大きな影響をもたらす結果となった。

 1つ目は、優勝したイタリアに対して非常にポジティブで強いイメージが広がったこと。新型コロナウイルスの流行初期から爆発的な感染拡大により広がった社会的・経済的なダメージは、輸出・観光大国であるイタリアにとっては致命的なものだった。EURO 2020でのイタリアの勝利は、イタリアのイメージ回復の起点として大きな意味をもつ。

 今大会では決勝戦に向けて、普段はライバル国であるヨーロッパの他国代表チームも公然とイタリアへの支持を表明。それに加え、イタリアのマリオ・ドラギ首相(イタリア中央銀行と欧州中央銀行の総裁などを歴任)の新型コロナワクチン政策の成功(イタリア国民の6割以上が摂取完了)や、金融市場の安定回復への期待、そして国際音楽祭Eurovision 2021(ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト)でのイタリアのロック・バンドManeskin(マネスキン)の優勝と各国音楽チャートでの快挙など、さまざまなイタリアに関連する明るい国際的な話題と重なったことで、イタリアのイメージ回復に大きく貢献した。

 2つ目は、Brexit後のヨーロッパ内における結束力の強化がもたらされた点。英国の欧州離脱は非常に困難なものであったが、今なお英国と欧州の間には、ほどけていない結びつきが解決しないまま数多く存在している。

 従って、今回のEURO 2020の決勝戦は、サッカーだけでなく政治的な意味で「欧州vs英国」という側面も持ち合わせていた。欧州各国の首相やマスコミをはじめ、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長までもが、イタリア代表のTシャツを着てイタリアへの支持を表明した。

 しかし、同時にボリス・ジョンソン英国首相は“Football is coming home”をスローガンに政治的キャンペーンを繰り広げた。国内は大いに盛り上がり、イングランドが優勝した場合は決勝戦翌日の月曜日を祝日に、というオンライン署名活動が行われ、ジョンソン首相も応じる姿勢をマスコミにアピールしたが、皮肉にもそれが叶うことはなかった。

 イングランドにとってのホームグランドでの試合中は、イタリア代表へのブーイングが響き渡った。表彰式でのイングランド代表の「メダルはずし」、また、決勝戦後にホスト国を代表するはずのウィリアム王子とキャサリン妃が、イタリアのセルジョ・マッタレッラ大統領を無視して挨拶もせずに会場を去る様子などが報道され、欧州サイドをはじめ、北アイルランドやスコットランドから見てもネガティブな印象が強く残る結果となった。

 つまり、英国にとっては、優勝を手にすれば欧州離脱後の政治的弱点をカムフラージュできるうえ、景気やイメージの向上につながるはずだったが、勝利を逃しただけでなく、不信感を増大させるという逆効果となってしまったわけだ。別の視点から見ると、欧州内でのイタリアへのシンパシーを強め、ヨーロッパ各国の結束力を強めるきっかけをつくった。今後イタリアが今回の成功を政治的にも利用していけるかどうかについては、よく観察していきたい。

 これは、オリンピックの開幕を間近に控える日本にとっても非常に重要な事例であると思う。オリンピックを通じて、日本のパワーを世界中の人に見せつけてほしい。

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