2024年04月20日( 土 )

賑わい創出や安全性向上に寄与、ICT&AIを活用した人流分析(前)

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混雑か?賑わいか?AIで分析

実証実験の舞台となった川端商店街
実証実験の舞台となった川端商店街

 国の主導する「スーパーシティ」構想など、AIやビッグデータを活用した未来都市の実現が、現実のものとなろうとしている。そうしたなか福岡市では、AIやIoTなどの先端技術を活用した社会課題の解決や生活の質の向上などにつながる実証実験プロジェクト「実証実験フルサポート事業」を独自に実施。全国からプロジェクトを随時募集し、優秀なプロジェクトについては福岡市での実証実験を全面的にサポートしている。

 そのなかの1つとして、九州大学持続的共進化地域創成拠点(以下、九大COI)が行っているのが、「ICTを活用したまちの賑わいの創出」と「都市空間における見守りサービスの構築と実証」だ。

 「ICTを活用したまちの賑わいの創出」では、博多区の川端商店街(上川端商店街、川端中央商店街)を舞台に屋外2カ所と屋内2カ所の計4カ所にカメラを設置し、公共空間におけるカメラ映像を利活用した実証実験が行われている。同実証実験では、AI画像解析技術を用いてカメラ映像から「属性付き人流データ」を生成。年代や性別などの人の属性だけでなく、歩行者通行量や人の動き(向き、速さ)なども情報として取り出し、そこに気象データやイベント情報なども加えることで、これらの要素が商店街の売上に与える影響を分析している。なお、プライバシーへの配慮の観点から、画像データ取得に関する事前告知を行ったうえで実証実験を行い、画像データに関しては解析して人流データ(個人情報を含まず、データからの個人特定は不可能)を取得した後に即削除する体制を取っている。

九州大学持続的共進化地域創成拠点 客員准教授 髙野 茂 氏
九州大学持続的共進化地域創成拠点 客員准教授
髙野 茂 氏

 「カメラ映像を解析するうえで難しいのは、人々の行動パターンをどう捉えるかです。たとえば同じ人数が映っていても、はたしてそれが店舗の売上などにつながる『賑わっている』状態なのか、それとも、通り過ぎる人が多いだけの単なる『混雑』なのか――。この分析のためには、映像における人の密度だけでなく、動きのベクトルも考慮した指標を策定することで、解決につなげました」(九大COI客員准教授・高野茂氏)。

 この賑わい指標では、人が止まらずに進んでいく場合と、店舗前などでときどき立ち止まりながら進む場合との2種類に分けて判別。後者を、売上に何らかの影響を与える可能性のある「賑わい」の行動として、その後の分析に役立てている。

 なお、同実証実験は2020年11月から開始され、当初予定では21年3月末までで終了する予定だったが、コロナ禍や緊急事態宣言の影響などで「商店街から人の流れそのものが激減してしまい、賑わい創出に向けての十分なデータが集まらなかった」(高野氏)ため、22年3月末まで期限を1年間延長。現在も実証実験を継続中だ。

混雑回避支援と経済活動支援の両立
混雑回避支援と経済活動支援の両立

(つづく)

【坂田 憲治】

(後)

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