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2021年09月27日 06:00

コロナ禍から離陸しない日本とダイナミックな経済回復を遂げた米国(後)

画家・造形作家 佐藤 雅子 氏

 2021年1~3月期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率5.1%減となり、実質GDPは年率換算で534.3兆円とコロナ感染拡大前である20年1~3月期の544.3兆円に届かない。一方、米国は実質GDPが同6.4%増と経済が急回復し、ほぼコロナ前の水準まで戻っている。コロナ禍から離陸しない日本とダイナミックな経済回復を遂げた米国の違いは、どこにあるのか。ニューヨークに在住し、米国を見つめ続けてきた画家・造形作家の佐藤雅子氏に聞いた。

すべての人に平等に届くパブリックアート

ニューヨークのマンハッタンにあるグランドセントラル駅
ニューヨークのマンハッタンにある
グランドセントラル駅

 ニューヨークや日本で画家・造形作家として作品を手がける佐藤氏は、「コロナ禍で、世界中の人とオンラインで交流できて、国境がなくなったことが実感される一方、対面で人と会うことの大切さが浮き彫りになりました。これまで外に出られず抑圧された状況だったため、これからはもっと人と接して直に親しむアートが注目されるでしょう」と語る。600人以上の観客を収容できる屋外コンサート会場や屋外アート展示があるニューヨークのハドソン川の人工島、「リトルアイランド」のような場所がポストコロナの象徴となるだろう。7年余りをかけて建設し、完成したばかりだ。

 佐藤氏は、西洋の絵具と日本画の顔料を混ぜたり、異質の素材を組み合わせることで、自分の内面や感情、想像したものを抽象画や立体作品で表現している。日本らしい余韻や奥行きを感じさせながら、国境を越えて人の心に届く作品だ。

ニューヨークの地下鉄のパブリックアート
ニューヨークの地下鉄のパブリックアート

 無機質な空間に1本の花を生けると場の雰囲気が大きく変わるように、公共施設、病院、学校、交通機関、広場などの公共空間に「パブリックアート」を飾ることで、人が心地よく過ごせる場所になる。社会もアートの恩恵に預かっているのだ。たとえばニューヨークやスウェーデンの地下鉄ではパブリックアートが壁に飾られていて、香港の地下鉄では、アートコンペティション「ARTIST CALL」で通路一面に絵が展示される。英国のロイヤル・カレッジ・オブ・アートの研究結果から、街の壁に絵が描かれていると暴力や犯罪、施設の破損が減ることがわかっている。

 ニューヨークのマンハッタンでは、ビルの部屋やエレベーターなどにスタイリッシュな「コンテンポラリーアート(現代美術)」や抽象画がまるで美術館のように飾られていて、ロビーにもひしめくようにアートが置いてある。工事現場や病院などにも絵や写真を使ったアートが飾られており、パブリックアートを街で楽しむ土台があるのだ。

ニューヨークのビルのパブリックアート
ニューヨークのビルのパブリックアート
エレベーターホールにあるHans Hofmannのモザイク作品
エレベーターホールにあるHans Hofmannのモザイク作品

 ニューヨークでは活躍が見込まれる新人作家に対して、株のように先行投資する市場があり、美術館などへの寄付に税制優遇があることもアート市場が活発な理由だ。コロナ禍で閉店した空店舗をアーティストの作業場や展示スペースに活用する取り組みも進む。

 佐藤氏は「芸術のもつ力がすべての人に平等に届くことで、街に住む人の心が豊かになる『パブリックアート』に携わっていきたいと感じています」と抱負を語る。コロナ禍で人間らしさの価値が見直されるなか、「次はアートだ」とその価値に注目が集まる。アートはまだ贅沢品とされる日本では、大御所が大きなシェアを市場で占めているが、その裾野が広がり、多くの人が普段の空間でアートを楽しめる社会が実現することが期待される。

(了)


<プロフィール>
佐藤 雅子
(さとう・まさこ)
佐藤 雅子 氏 2014年の香港Asia Fine Art Galleryの「New Year Exhibition」をきっかけに画家/造形作家として活動を開始。ニューヨークへ移住後、さまざまな展示会の審査に合格し、賞を受賞しながら活躍の拠点を広げる。なかでも、ニューヨーク・マンハッタン区長オフィスアートショー、The Art Students League of New York の栄誉あるブルードット賞、Bronxville Women’s Club での最優秀賞は新聞、ビデオでも放映された。日本では16年に東京都美術館でのグループ展示会にて入賞。17年には新国立美術館、19年には東京都美術館、20年には代官山や銀座、今年9月には国立新美術館(東京・六本木)で出展した。マニラ、ロンドン、ワシントンDC、カイロ、香港、そしてニューヨークでの生活を通して育まれた感性と知覚を活かし、ユニークな色彩感覚と想像力を使い作品をつくり出している。上智大学新聞学科卒業後、Citibank に入行、その後、画家・造形作家に転身。数々のポスターや商品のデザイン、雑誌の挿絵、港区立白金小学校の図書館の壁画なども手がける。ニューヨークの名門The Art Students League of New Yorkのメンバー、MoMAのアーティストメンバー、上智大学ソフィア会文化芸術グループ、現代造形表現作家フォーラムメンバー。12月に昭和記念公園(東京・立川市)で立体作品の展示を予定している。

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