「考察」ポストコロナの商業デザイン~後編~
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ウィズコロナでの店舗のひらき方
このような状況では、どのような店舗提案ができるだろうか。
たとえば、コロナ禍での実際の成功例で、ある花屋さんの事例がある。この花屋では、花瓶付きのコンパクト切り花を真空パックにして、駅の構内に設置した自動販売機で売り出した。自動販売機で展開するという非接触および非対面な気軽さが受け、これまで手薄だった男性客が、妻や母親にプレゼントする目的での購入が増えたという。
また、自動販売機も多様化しており、冷凍技術を生かした食材の販売や、ペット用や昆虫用をターゲットにした食品など、横展開が目まぐるしい。クレーンゲームが乱立するゲームセンターのような空間で、店舗開発する流れもあるようだ。AIカメラを使って人通りや客の滞留時間を計算し、購入を悩んでいる客らしき人物と判断すると、その場で値段を下げたりして売り切る、などというやり方もできるようだ。常時接続が可能な現代の通信環境ならではといえる。
物販店舗ではどうか。たとえば、予約制の劇場型購入ショップ。大型アミューズメントパークのアトラクションで採用されているような「一方通行のエンターテイメント」のように、決められたルートを進みながら、場面やシーンが切り替わり、商材を取り込んだ演出を次々に体験していく。気に入った商品はスマホの買い物カゴへまとめ、出口で決済。こうなると、もはや業種別や会社別、ブランド別のような縦割りではなく、ユーザーのライフスタイルに合った世界観を装備したセレクトショップという組み合わせでお店を構築していくのが良いだろう。
個店の場合の飲食店舗は、「固定空間形態」と「移動商材形態」に分けてはどうだろうか。
飲食店の中枢は、商品をつくり出す厨房だ。厨房はキッチンカーのようなイメージで独立させる(移動商材形態)。客席はシェアリングする(固定空間形態)。厨房と客席をマッチングさせ、場所と時間によって、ユーザーはまったく新しいUXを得ることができる仕組みだ。予約システムや物流ネットワークを整備することで、店舗をシェアリングエコノミーの一部とし、飲食オーナーは場所に縛られない自由な動きができるようになる。今月はニューエッジシティで、来週は都心部へ、来年はゆっくり郊外へ移動しようか――そんな期間限定の展開も見えてくる。
<プロフィール>
松岡 秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、その後独立。現在は「教育」「デザイン」「ビジネス」をメインテーマに、福岡市で活動中。▼関連記事
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