2024年04月25日( 木 )

「考察」ポストコロナの商業デザイン~後編~

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ショッピングモールは、かつての百科事典?

 高密度化され、生産性を高め、効率化させたショッピングモールは、かつての情報が少ない時代は、セレンディピティを求めて客が殺到した。だが、今となってはこの狭い空間の散策は、忌避される対象だろう。何となくこの大きなモール形態が、これからもまた同じようにというわけにはいかないような気がしてならない。

キャナルシティ
キャナルシティ

 キャナルシティ博多も、共用通路こそ外気の抜けるオープンモールになっているとはいえ、テナント群には密閉された空間が存在している。どうもコロナ禍で培われてしまった空間認知力により、こうした場所からは足が遠のきやすくなった。空間的に、より良い外部との接続方法が求められているのだろう。

 各所、建物につながる扉は解放され、入口横には除菌スプレーや検温センサー、張り紙でソーシャルディスタンスや3密回避の啓蒙を行ってはいるものの、それ以上の努力がこの建物においてできるだろうか。老体に鞭打ってニューノーマルに適応させようとしていても、そもそもの根本的病理予防には構造が順応していないし、意識の上でもバリアを拭い去れないのが現状だ。

 せめて外部が抜けて見えるガラス張り、緑が見えることで外気を感じられる視認効果や、空気の流動性を見せられる開放的な仕掛けなどができれば、初動のハードルは下げられそうだが、断層化させる建築はどうしても厚い壁が構造体として必要になってくる。

 空気の対流を感じられるように、たとえばプロペラファンを身に着ける空調服や首掛け扇風機を施設入口で貸し出すとか、自分専用の換気扇スイッチを持ち歩き、風の流れを自分のタイミングで起こせる「(仮称)あなたの風力スイッチ」を開発するとか…。

 今は固定化された集積店舗よりも、流動化された個店に人気が集まる時代だ。時流もあって、商品ブランドや誰もが知っているブランド名だけでなく、無名でも作者の思想やその背景に流れる創作ストーリーに共感が多く集まる。そのような店舗創設の在り方からも変わってきている状況を、環境の再構築とともに転機に結び付けていきたいところだ。


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、その後独立。現在は「教育」「デザイン」「ビジネス」をメインテーマに、福岡市で活動中。

 

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