2024年03月29日( 金 )

横浜市が「空き家条例」 所有者不在で危険な空き家の一部を初撤去

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危険な部分のみの撤去可能に

空き家
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 横浜市は、8月1日施行の「横浜市空家等に係る適切な管理、措置等に関する条例」(以下、空き家条例)に基づき、近隣住民への危険を防ぐため、所有者がいない空き家の剥がれた屋根や外壁の剥離など命や身体に危険がある部材撤去を初めて実施した。

 空き家条例ができるまでは、所有者がいない、もしくは所有者の名前や住所がわからない空き家は私有財産であるため、倒壊や部材の剥がれなどで通行人に危険をおよぼす恐れがあっても、市が措置することはできず、定期的に観察して見守ることしかできなかった。だが、条例施行により、応急的に危険を防ぐ最低限の措置を市が実施できるようになった。今回、危険回避措置として部材の撤去が行われたのは、今にも道路に落下しそうな屋根などにより、通行人に怪我をさせる恐れがありながらも所有者がいない空き家2件だ。

 1件目は、横浜市磯子区にある1966年築の2階建ての店舗・共同住宅。2019年、通行人に危険がある空き家が放置されていると近隣から相談があったといい、その後、管理不全で周囲に著しい悪影響をおよぼす恐れのある「特定空家等」に認定された。所有者調査を続けたところ、所有者と法定相続人は亡くなっており、市は法定相続人の一部が調査不能であると判断。今年8月に、2階の屋根材の剝がれている部分と2階の戸袋の板下地材と仕上げ材の脱落しかけている部分を撤去した。

2階屋根材の一部撤去(剥がれている部分)
2階屋根材の一部撤去(剥がれている部分)
2階戸袋の板下地材および仕上げ材の一部を撤去(脱落しかけている部分)
2階戸袋の板下地材および仕上げ材の一部を撤去(脱落しかけている部分)

 2件目は、同じく磯子区の1975年築の2階建て住宅。14年、近隣から相談があり、所有者の居住地と思われる住所に改善通知文を市が送付したが、所有者からの連絡がなく、19年に特定空家等に認定された。所有者が書類上の住所に住んでいないことから、所有者の所在不明と市は判断。今年9月に、2階の屋根瓦の脱落しかけている部分を撤去した。
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2階屋根瓦の一部撤去-(脱落しかけている部分)
2階屋根瓦の一部撤去(脱落しかけている部分)

   横浜市建築局の村上まり子氏は、「不特定多数の人が通る道路付近だったこと、所有者がいない空き家だったこと、今にも落下しそうな部材があり生命や身体に危険がおよぶ可能性が高かったことから、危険回避措置とした」と話す。

 所有者がおらず、今にも崩れそうな空き家は最終手段として、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、空き家法)により、略式代執行で市が除却できるが、空き家条例では、危険な部分のみを撤去できるため、近隣住民に危険がおよぶ前に早い段階で手を打ちやすい。一般的に、危険な部材の撤去費用は約30~60万円とされ、除却費用に比べてコストを抑えることが可能となる。

【石井 ゆかり】

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