2022年07月06日( 水 )
by データ・マックス

不動産鑑定士に聞く「なぜ福岡の地価が上昇するのか」

よりそい不動産鑑定(株) 代表取締役 扇 幸一郎 氏

よりそい不動産鑑定(株) 代表取締役 扇 幸一郎 氏
よりそい不動産鑑定(株)
代表取締役 扇 幸一郎 氏

 ――綱場町や冷泉町が上昇率1位・2位となった要因は、どこにあると見ますか。

 扇 JR博多シティの開業からは、博多駅周辺の事務所ニーズが高まり、オフィスの賃料水準も天神と比肩するほどになっていました。需要の高まりとともに、博多・天神それぞれがまちを広げ、その中間地点であるオフィス立地が良好な綱場町や冷泉町の地価が上昇していったのではないでしょうか。4位、6位の舞鶴についても、綱場町や冷泉町が博多の拡大であれば、舞鶴は天神の拡大による影響だと見ています。

 ――3位の高砂については、いかがでしょう。

 扇 天神に近く、地価が比較的安定していたのと、投資用として賃貸マンションの開発がしやすい状況が続いていることが、地価上昇を後押ししているのだと思います。地下鉄空港線沿線の舞鶴とは少し異なりますが、天神拡大の一端でしょう。7位の草香江は閑静で住環境が良好な住宅地として見直しの気運の高まったこと、さらに六本松の再開発、地下鉄延伸などが要因だと見ています。

 地価上昇については、さまざまな要因が関わってきますが、「金融機関の融資姿勢」「REITなどのプレイヤーが増えたこと」などによる影響が大きい。他の先進国の大都市、東京・大阪への投資が過熱した影響で、情勢が安定していて投資利回りが高い福岡への投資が増えています。彼らが投資しやすいのは、福岡市では「博多」「天神」です。金額の大きさから、福岡の不動産市場でも存在感が高まっており、お問い合わせや鑑定の依頼も増えています。

 ――三鬼商事のデータによれば、コロナ禍以降、東京のオフィス空室率は上昇傾向で推移し、今年9月時点の空室率は6.43%となりました。一方、福岡は4.55%にとどまっています。

 扇 空室率上昇が緩やかな要因の1つには、福岡に通販企業が多いことが挙げられます。コールセンターは都心部であるほうが採用に有利に働きますので、コロナ禍の今は床を埋めるキープレイヤーとして台頭しています。それでも、19年には2%を切っていたのが今では4%台中盤ですから、空室が増えていることは間違いありませんし、借り手優位な状況が近づいているといえます。

 ――天神ビッグバンや博多コネクティッドによって、ビルの建替えが進められていますが、それによる影響はどのようなかたちで出てくるのでしょう。

 扇 新築ビルへの移転ニーズは、必ず出てくると思います。そして、良くも悪くも古いビルの二次空室が出てきます。築年数は古くても賃料が安ければ、立地次第で入居ニーズはあるはずです。ただ、二次空室は立地が良くない場合、解消が困難であるケースも少なくありません。このように、既存のビル間でも二極化が進んでいくのではないでしょうか。

 福岡のオフィスマーケットは、当たり前ですが大企業の支店や地場企業の本店が支えています。福岡は九州の拠点であり、アジアの玄関口として簡単に閉鎖を判断できるところではありませんので、地方都市のなかでも有利な立場にあります。ただ、東京でこれほど空室率が上昇している以上、今後それがどのように影響してくるかは注視しておかなければなりません。

【永上 隼人】


<プロフィール>
扇 幸一郎
(おおぎ・こういちろう)
1967年3月、大阪市出身。89年、大手鑑定事務所・大和不動産鑑定(株)に入社。95年、不動産鑑定士登録。奈良、大阪、東京を経て、九州支社に勤務。2019年4月、よりそい不動産鑑定(株)を設立し、代表取締役に就任した。

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