2024年04月29日( 月 )

歴史・文化・自然を継承する「未来都市むなかた」に向けて

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宗像市長 伊豆 美沙子 氏

地域の財産を守り伝える

 ――世界遺産CITYとしては、どのようなまちづくりを進められていますか。

宗像市長 伊豆 美沙子 氏
宗像市長 伊豆 美沙子 氏

 伊豆 世界遺産登録をきっかけとして全国的な知名度が上がり、多くの方に本市を訪れていただきましたが、世界遺産があるからといって、観光客数の爆発的な増加を見込めるものではありません。そもそも世界遺産の目的とは、人類共通の歴史・文化遺産を守り、次世代に継承していくことであり、本市でもそれが最優先だと考えています。

 そのため、宗像大社近くのガイダンス施設「海の道むなかた館」では大型スクリーンや3Dシアターの映像で、一般の渡航・上陸が禁止されている「不言様(おいわずさま)」ともいわれる沖ノ島を疑似的に体験してもらったり、スマートフォンアプリ「みちびき沖ノ島」をリリースしたり、市内の学校ではふるさと学習を行ったりと、さまざまなかたちで世界遺産を知ってもらうための取り組みを行っています。さらに今年4月には、この貴重な遺産を守り後世に伝えていくとともに、郷土への誇りや愛着の醸成につなげていくために、「世界遺産のあるまちづくり計画」を策定・公表しており、「守る」「整える」「伝える」「活かす」「受け入れる」の5つの基本目標の下、「持続可能な世界遺産CITY宗像」の実現に向けた取り組みを進めています。

 ――市内にはほかにも、鎮国寺や八所宮、山田地蔵尊、いせきんぐ宗像(田熊石畑遺跡)、そして唐津街道の赤間宿や原町など、貴重な歴史遺産や古い街並みなどが多く残されています。

 伊豆 世界遺産でもそうですが、歴史・文化遺産というものは一定のテーマやストーリーに沿ってまとまりをもたせることで、個々の魅力や価値をさらに引き出すことができると考えています。たとえば寺社仏閣であれば、それぞれの信仰の場としての魅力だけでなく、それを支える人々の活動や、鎮守の森などの周辺の自然環境や景観なども重要となってくるでしょう。赤間宿や原町でも、町屋や街道筋の家々だけでなく、そこでの人々の生活や生業など、そこにテーマやストーリー性をもたせることで、さらなる地域の魅力が付加されると思います。

 歴史・文化遺産は、いわば地域の財産です。価値を損なわず次世代に継承することを大前提として、行政はコーディネーターとして参画しながら、所有者や市民などの地域を主体に一体となってさまざまなアイデアを出し合い、時代のニーズに合わせたまちづくりを行っていきたいと考えています。

 ――最後に、宗像市が目指す将来像についてお聞かせください。

 伊豆 海・山・離島があり、漁業・農業・商業があり、住宅地もある。宗像市は、まさに日本の縮図だと思っています。ですから、先ほどの無添加石けんの実証実験のほかにも、日の里地区ではオンデマンドバス「のるーと」実証運行も行っていますし、この宗像市を舞台に、さまざまな実証実験などのトライアル的な試みも行っていきたいですね。

 そして、私が尊敬する本市の礎を築いた偉大な先人である出光興産・創業者の出光佐三翁の想いを受け継ぎ、かけがえのない歴史・文化遺産や海の環境を守り、次世代に継承していくことは、本市の使命です。これからも宗像市のさまざまな取り組みに共感していただける人々―「共感人口」の拡大に努め、「Save the Sea」を合言葉にした環境保全の活動の輪を広げながら、将来にわたって多くの人に「宗像に住みたい、住み続けたい」と思ってもらえるような宗像市を目指していきたいと思います。そして、いずれ「第二・第三の出光佐三」を、ここ宗像市から輩出していければいいですね。

【坂田 憲治】


<プロフィール>
伊豆 美沙子
(いず・みさこ)
宗像市出身。宗像高校および京都女子大学国文学科を卒業後、会社員を経て家業の酒造業に従事。そのほか、ラジオパーソナリティーや福岡大学非常勤講師など、幅広い活動を行う。2011年4月から福岡県議会議員を2期務めた後、18年5月に宗像市長に就任。福岡県内初の女性市長として注目された。

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