2022年05月18日( 水 )
by データ・マックス

建設業界のダンピング排除へ、人材不足はCCUSで解消できるか

 3月30日、赤羽一嘉国土交通大臣(当時)と建設業団体の間で、公共工事の円滑な施工確保、技能労働者の賃金水準の引き上げ、建設キャリアアップシステム(Construction Career Up System/以下、CCUS)についての意見交換会が行われた。業界で深刻な問題となっている人材不足の解消に向け、2%以上の賃金上昇の実現とともに、低賃金の要因ともなっているダンピングの防止、CCUSへの完全移行について議論された。

建設業界を取りまく賃金状況

 国土交通省(以下、国交省)は、民間工事を含めたダンピング排除への対応策を検討している。建設業界では人材不足が課題となっているが、ダンピングはその要因の1つと見られており、対応についてこれまで議論されてきた。

 ダンピングとは不当廉売ともいい、工事請負金額によっては適正な施工が通常見込まれない契約の締結のこと。元請だけでなく、下請企業などにも適正以下の金額で工事契約がされる事態となることで、粗雑工事や、労働環境・条件の悪化、安全対策の不徹底などにつながる恐れがある。ダンピングが横行し続けた場合、建設業の若年入職者の減少につながり、人材不足がさらに悪化するとされている。また、問題の解決には公共工事だけでなく、民間工事においても対策が必要だとして、各団体に協力を求めている。

 技能労働者に対する賃金は、その他の産業に比べ低水準となっている。厚生労働省が発表している賃金構造基本統計調査(図1)によれば、建設業技能労働者の賃金は13年以降堅実に上昇してきたが、それでも他業種と比較すると賃金は低迷。19年時点の建設業労働者の年間賃金総支給額は約462万円だが、製造業は約479万円、全産業では約560万円と、建設業が低水準であることがわかる。年平均の賃金上昇率では、建設業が約2.7%、製造業が約1.2%、全産業約1.1%と建設業も順調に推移しているが、25年に建設業が製造業に追いつくためには、年平均約2.2%の賃金上昇率を維持する必要がある。

図1

 3月の意見交換会で国交省と業界団体は、21年に2%以上の賃金上昇を目指すと申し合わせた。官民双方の関係者で賃金上昇に向けた取り組みを推進し、同省は地方自治体に適正な予定価格設定やダンピング対策の徹底などを要請するほか、各団体にも適正な下請取引などを働き掛けている。

 また、ダンピングが横行することで、労働条件・環境の悪化のみならず、工事の質にも大きな影響が出ることが危惧されている。とくに道路や陸橋などは、一般市民の生活や安全性に大きな影響を与えることが懸念されるからだ。

 国交省は7月26日、「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」(以下、「監督処分の基準」)の改正内容を発表した。改正には、技術検定の不正受検や粗雑工事への対策の強化、不正に資格などを取得した技術者を工事現場に配置した建設業者や、粗雑工事などにより工事目的物に重大な瑕疵を生じさせた建設業者に対する監督処分の強化が組み込まれている。その背景には祖雑工事増加への指摘があり、ダンピングもその要因の1つとされている。そんななか、民間工事を含めたマーケット全体に波及する仕組みとして推進されているのが、CCUSである。

【麓 由哉】

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